日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

JR舞子駅での人身事故報道のその後

2011-02-13 20:45:27 | Weblog
JR山陽本線舞子駅には数えるほどしか乗降したことがないので印象が薄いが、昨年の暮れに快速電車から降りた主婦がホームから転落し、動き出した電車に挟まれて死亡したとのニュースに接した時には、あり得るはずがないという思いから、いったいどのような状況で事故が発生したのか知りたいと思った。ところが私が調べた限りでは、事故発生の経緯すら納得出来るような報道がないのである。そういうことをJR舞子駅での人身事故 新聞もつぶやくだけ?で述べたのが、昨年の12月23日である。

今日の朝日朝刊の社会面に、広告を除いた紙面のほぼ半分をつかって、次のような見出しで始まる記事が載っていた。


JR西は1月末、舞子駅で先頭車両同士の連結部が止まる場所3カ所のうち、車掌から最も遠い1カ所にのみ固定柵(幅約2.5メートル、高さ約1.2メートいる)を新設した。

との対策がなされたことをうけての記事であろう。そして今まで曖昧模糊であった事故の状況が少し分かってきた。朝日新聞記者が亡くなった主婦の夫に取材したからである。

 兵庫県警によると、同市西区の主婦が電車からホームに降りた後、4、5両目の連結部付近でふらついて、頭から線路に転落した。先頭車両同士が連結された部分で、通常の連結部にある転落防止用のガードがなかった。
 主婦はすぐに立ち上がり、ホーム上に頭を出した。しかし、約160メートル離れた最後部の車掌は転落に気付かず、直後に動き出した電車とホームに挟まれて死亡した。(中略)

 (主婦は)飲食店のアルバイトなど四つの仕事を掛け持ちし、当日も日本料理店で勤務した帰りだった。会社員の夫は事故同夜、勤務先から帰宅しない妻を心配し、携帯に電話をかけ続けた。10回ほどかけた時、電話に出た警察官は「奥様は亡くなられました」と告げた。
 「直線のホームなのに、車掌はなぜ見えへんかったんやろ」。夫はインターネットで情報を探そうとしたが、「酔っぱらい」「間抜けな死に方」と書き込まれた掲示板を見て、パソコンを閉じた。

これで一つ分かったことがある。この主婦はホームから転落したがすぐに自力で立ち上がり、ホーム上に頭を出したというのである。私の疑問はブログで次のように書いたが、自力で立ち上がることまでは想像もしなかった。だからこそ気がついた人が彼女をホーム上に引き揚げようとしたのだろうか。つくづく車掌の気づかなかったことが悔やまれる。さらには悔いても詮無いことであるが、この主婦はなぜ頭をホームの上に出すのではなく、ホームの下にある待避空間に入らなかったのだろうか。咄嗟の判断を間違えたのが残念である。

被害者について、asahi.comは《ホームにいた女性が停車中の快速電車の連結部分から線路に転落。その後、電車が発車し、異常に気付いて車掌が約10メートル先で停車させたが、女性は死亡したという》のように《線路に転落》と報じたが、NHK、産経ニュース、読売新聞、時事通信なども《線路に転落》とこれに与している。ところが共同通信は垂水署への取材として《女性がホームと車両の間に頭を挟まれた状態で電車が進んでいた》と報じており、線路への転落とは明らかに状況が異なる。共同通信から配信を受けたのだろうか日刊スポーツも同じ内容である。微妙なのが毎日新聞で《ホームから車両間の連結部分に転落》というから、線路上に転落とは受け取りにくく、どちらかと言えば共同通信の線に沿っている。いずれにせよ線路上に落下していたのか途中で止まっていたのか、私には判断のしようがない。

しかし依然として主婦が酔っていたのかどうかへの疑問は残されたままである。何がどうなのかを次のようにブログに書いた。

毎日新聞はこの被害女性が《友人の女性(28)と同県加古川市で飲食し、事故当時は酔っていたらしい》と報じており、日経も《女性2人は同県加古川市で飲酒し、帰宅する途中》と伝えている。私が最初に見たasahi.comでは女性が飲酒したとか酩酊状態であったとかの報道は皆無であった。未だに真偽の確かめようはないが、女性が酩酊状態にあったとすれば、この人身事故に対する世間の見方が大きく変わってくるかもしれない。

今日の朝日の記事は最初の報道のように酩酊状態の有無には触れないという線を貫いているようである。被害者の血中アルコール濃度を取材すれば済むことであろうに、それを黙殺していることには不審を感じる。

「対策あれば救えた」というこの見出しは正論である。しかし、である。ホームから転落すると危ないというのは誰しも心得ていることであろう。転落すれば頭を打つこともあれば足をくじくこともあろう。そういう危険性を乗客が心得ていることを前提に交通機関が危険対策を立てるべきで、思いつくまま、言われるままの安全策を実施に移すにはお金が幾らあっても足りないだろうし、それはすべて乗客の負担に跳ね返ってくる。そこでどうも気になるのがJR舞子駅での柵の設置法である。記事を繰り返すとJR西は1月末、舞子駅で先頭車両同士の連結部が止まる場所3カ所のうち、車掌から最も遠い1カ所にのみ固定柵(幅約2.5メートル、高さ約1.2メートいる)を新設したの部分である。転落防止柵を文字どおり受け取れば連結部が止まる場所3カ所すべてに柵を設置すべきであろう。車掌の目の届く範囲ならすぐに気がつくだろうから、ここは設置しなくても済む、では筋が通らない。

JRとしてはホームから落ちないように元来は乗客が気をつけるべきであるのに、乗客何万人か何十万人か、または何百万人に1人の割合で、原因は何であれ結果としてホームから転落する希有な人のために、無駄な費用はかけたくないという発想で今回の処置になったのではないか、とげすの勘ぐりが働いた。しかしかりにこの勘ぐりが事実であったとしても、柵の設置に関しては私はJRの判断を支持したい。しかし異常が発生したことを車掌、もしくは運転士に即刻知らせる有効な手段を整備することは、これまた安全対策の基本として徹底すべきであろう。