日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

沖縄に手玉取られる民主党? 追記あり

2010-12-15 14:23:37 | 社会・政治
沖縄振興開発計画なるものが第一次から第四次まで進んでおり、現在の第四次開発計画が平成23年度で終わろうとしている。第一次が始まったのが昭和47年度であるから40年にわたる長期の計画である。内閣府沖縄関係予算のあらましでおおよその規模が分かる。

 内閣府沖縄関係予算及びその中核を占める沖縄振興開発事業予算 (各種公共事業と教育振興、保健衛生、農業振興のための予算) の総額の推移を見ると次ページの図のとおりです (昭和47年度予算には約366億円に上る復帰対策諸費が含まれています)。
 このうち、振興開発事業費は、昭和47年度373億円から平成12年度第1号補正後では3,336億円となり、8.9倍を超える大幅な伸びを示しています。
 復帰以降現在までの振興開発事業費の累計は、平成12年度第1号補正後時点でおよそ6兆4,169億円 (補正後ベース) に上っています。

その後の振興開発事業費を沖縄担当部局予算額から求めると、第三次計画最後の平成13年度3490億円、そして第四次では年間2800億円ベースになっているので、この40年間に約9兆5000億円注ぎ込まれたことになる。

一方、第3次沖縄振興開発計画の「人口及び経済社会のフレーム」の項目に次のような見通しがある。

県内総生産は、亜熱帯農業、製造業、観光・リゾート産業、情報サービス産業等、本県の特性を生かした産業の振興開発が期待されることから、平成2年度の2兆8千億円から平成13年度にはおおよそ4兆9千億円(平成2年度価格)となる。(中略)

一人当り県民所得は、平成2年度の200万円から平成13年度には310万円(平成2年度価格)を超え、全国の所得水準との格差は縮小していくことが期待される。

実際に到達したのは平成13年度の県内総生産が3兆5千億円(平成19年度においてすら3兆7千億円)一人当り県民所得は211万円(平成19年度では205万円)に留まっており、その間投じられたほぼ3兆円に及ぶ振興開発事業費の振興効果は、なに一つ現れていないことになる。この3兆円は総額9兆5千億円の一部に過ぎないが、たとえば昭和50年度、平成11年度、平成19年度で沖縄県総生産の全国総生産に占める割合は0.61%、0.68%、0.70%と32年間に0.1%の微増に終わっており、沖縄県に振興開発事業費を集中投下した全期間にわたって、それなりの成果があったとは言えない。何故このような結果に終わったのか、ぜひ専門家の分析が欲しいところであるが、ここでは先を急ぐこととする。

沖縄振興特別措置法の第一章総則には「目的」などが次のように記されている。

(目的)
第一条  この法律は、沖縄の置かれた特殊な諸事情にかんがみ、沖縄の振興の基本となる沖縄振興計画を策定し、及びこれに基づく事業を推進する等特別の措置を講ずることにより、沖縄の総合的かつ計画的な振興を図り、もって沖縄の自立的発展に資するとともに、沖縄の豊かな住民生活の実現に寄与することを目的とする。

(施策における配慮)
第二条  国及び地方公共団体は、沖縄の振興に関する施策の策定及び実施に当たっては、沖縄の地理的及び自然的特性を考慮し、並びに産業活動及び住民の生活における基礎条件の改善、沖縄固有の優れた文化的所産の保存及び活用、環境の保全並びに良好な景観の形成に配慮するとともに、潤いのある豊かな生活環境の創造に努めなければならない。

なんと全文が59145文字もある膨大な条文で第120条まであり、それに附則、別表までが附属している。こんな立派な?条文に支えられた計画であるのに、沖縄県内総生産と一人当たり県民所得の動向で見る限り、沖縄振興開発事業費はまったくの空振りであったと言わざるをえない。県民一人ひとりの生活の質を高めるのではない方向にカネが流れてしまったのであろう。それなのに平成23年度で終わる現在の第四次開発計画の後を沖縄が狙っている。昨日の琉球新報の記事である。

交錯「普天間」と「振興」 両官房副長官来県

 11月末の知事選から2週間余り。福山哲郎、滝野欣弥の両官房副長官が来県した背景には県と意見交換を重ねることで、できるだけ早く普天間飛行場移設問題の解決の糸口を見いだしたい政府の意図が見え隠れする。一方、県は、仲井真弘多知事が選挙戦で県外移設を公約に掲げた普天間問題での突っ込んだ議論よりも当面は、沖縄振興に関して実を取りたい考えだ。知事の再任後、初となる菅直人首相来県を前に、双方の思惑が交錯している。
(2010.12.14)

これより前の沖縄タイムスには次のような記事があった。

普天間リンク論「大変な違和感」 翁長那覇市長が批判

 知事選後、米軍普天間飛行場移設問題の進展に向け、閣僚の一部から沖縄振興と関連付けた発言が出ていることに、翁長雄志那覇市長は7日、「大変な違和感と強い憤りを感じる。県民の心を引き裂こうとする姑息(こそく)な『リンク論』は強く非難されなければならない」と強くけん制した。開会中の12月市議会代表質問で述べた。

 翁長市長は「知事選では基地か経済か、という議論を乗り越え、初めて県民の心を一つにできた」との見解を示した。来年度で期限の切れる沖縄振興特別措置法に代わる新たな法整備には、戦後65年続く基地負担を挙げ「何にも結び付けられることなく、国の責任で、確実に手当てされなければならない」と強調した。
(2010年12月9日 09時36分)

「普天間」と関係なくカネを寄越せというのだから、こちらの主張の方がわれわれには分かりやすい。しかしそれは「沖縄側」の理屈で、日本国民の多くは沖縄に基地を置く代償と受け取っているのではなかろうか。沖縄振興特別措置法にある「沖縄の置かれた特殊な諸事情にかんがみ」がそうである。第四次計画最後の平成23年度の沖縄振興予算の要求額は前年度と同レベルの2304億円であるが、日米両政府の合意事項に縛られる民主党政権の弱みに付け込み、来る第五次計画では要求額を大きく上積みしてくることが予想される。となれば守屋武昌著 「普天間」交渉秘録 は面白い ついでに沖縄科技大のこともでも書いたように、タフ・ネゴシエイターである沖縄の人々に民主党政権が手玉に取られ、気がつけばカネは取られる、普天間は動かせない、と言うことになりはしまいかと、これはげす勘ぐりである。

いつのことになるのか分からないが、将来北朝鮮との間で戦後処理が終了し、かりに北朝鮮に賠償金が支払われるとして、100億ドル(8400億円)という金額が取り沙汰されている。とするとその10倍にも及ぶ「賠償金」を日本国民はすでに沖縄に払ってきたとも言える。それにもかかわらず県民所得が全国47都道府県中最低をいつまでも売り物にしている沖縄に、日本国民はいつまで付き合っていかなければならないのだろう。しかし米軍基地を沖縄に押し付けたままでは、この当たり前のことを沖縄の人に言うことは出来ない。少なくとも沖縄の米軍基地の県外移転がその前提になる。その一案を神戸空港を米国海兵隊航空基地にするのも一案で論じたが、大切なのは国民意識の覚醒でもある。「普天間」と「沖縄振興」の論議を絡み合わせていく過程で、ぜひ新たな展望に辿り着きたいものである。国民が積極的にコミットすることによってのみ、民主党政権が沖縄の手玉に取られる愚は避けられることであろう。


追記(12月16日)
この項を追うような形で《普天間日米合意「見直しを」6割 朝日新聞世論調査》が報じられた。

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先を同県名護市辺野古にするとした今年5月の日米合意について、朝日新聞社が全国世論調査(面接)で聞いたところ、「見直して米国と再交渉する」が59%に上り、「そのまま進める」は30%にとどまった。地元沖縄だけでなく、国民の多くが合意の見直しを求めている現状が浮かび上がった。

 支持政党別にみると、民主支持層の61%、無党派層の62%が「見直し」を求めた。自民支持層では「見直し」が47%だったが、「そのまま進める」の41%を上回った。

 「日米合意を見直す」と答えた人にどうしたらよいと思うか、三つの選択肢から選んでもらうと、「国外に移設する」が51%と最も多く、「沖縄県以外の国内」が32%、「沖縄県内の別の場所」が12%だった。
(asahi.com 2010年12月15日23時0分)

国民意識覚醒の兆しであろうか。