日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

愛原 豊著「篠山本 鼠草紙」が面白そう

2010-12-06 18:17:49 | 読書
三宮センター街ジュンク堂の本棚にこの表紙の本を見てあれっと思った。篠山をぶらぶら 毬栗 古式特技法穴太流穴太衆石垣石積で述べたようについ最近篠山を訪れた際に、篠山市立青山歴史村で展示されているこの「鼠草紙」を目にしたばかりであったからである。

「はじめに―篠山本鼠草紙調査の概要―」から引用すると、

 この絵巻に収められているのは、室町時代の後期から江戸時代の中期にかけて作られた室町物語(お伽草子)の異類婚姻譚に属する短編物語で、その内容を簡単に紹介すると次のようになる。

ということで概要が出ているが、それは想像にお任せするとして、この「鼠草紙」は全体で一軸の大型絵巻で、紙高は36.0センチ、横の長さは約26メートルに達するのである。

著者の愛原さんは小・中・高の教師を務め、退職後に絵巻の研究に入られたようである。この「鼠草紙」については教育委員会の内部資料である全体写真(デジタル画像五十八枚)を資料として調査研究に当たられたとか。画像処理などにも独自の工夫をこらして絵巻原本の再現に取り組まれたのである。

この本は「絵巻の楽しい絵を眺める」(物語の全影印とあらまし・解説)、「絵巻の美しい文字を読む」(詞書き・画中詞の全影印と翻刻)、「篠山本と他の同系伝本とを比較する」の全三部からなっており、第一部の絵巻復刻がなかなか美しく詩情をそそるのが嬉しい。しかし私にとっての圧巻は第二部の詞書きであった。《絵巻の原本のすべての文字が正確に読めるようにと考えて、文字だけの影印を掲載している》のに加えて、原文の横に下に掲げた裏表紙に示されているように翻刻が記されているのである。これが目に入ったものだから私は即、飛びついてしまった。


私は日本人としてせめて漢字仮名まじり文の仮名草子ぐらい、すらすらといかないまでも何とか読み解きたいと昔から思っていた。「日本文学の歴史」全十八巻を上梓したドナルド・キーン氏が、アメリカ人でありながら日本の古典を原文で読みこなしているのに、日本人の自分が出来ないなんて癪ではないかと言う、子どもっぽい動機であるにせよ、である。しかし実際に読み解くにはやはり初歩から指導して貰わなければと思い、なかなか実行に踏み切れなかった。ところが原文の横にその読み方が添えられているこの詞書きを何遍か丁寧に読み返していると、自然に漢字仮名まじり文を読み解けるようになるのではと思った。著者の労を多としつつ、これからのチャレンジが楽しみになりそうである。