日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

朝日新聞社説「野球特待生―行きすぎをどう防ぐか」の揚げ足取り

2007-05-12 11:36:05 | Weblog
去る5月3日に高野連は加盟私立校の50%近くが野球特待生を採用しており、その総数が8000人近くになると発表した。過去に遡ると、日本学生野球憲章が禁じた野球特待生の総数は数万人、場合によれば数十万人になるだろうと私は推測する。

高野連は5月10日の緊急全国理事会で、《日本学生野球憲章に違反する「野球部員であることを理由とした特待生制度」を設けていた高校の野球部長と当該部員に対する処分を緩和することを決めた。》(asahi.com、2007年05月10日21時23分)とのことである。

どのように緩和されたのか、特待生問題に限ると、《特待生扱いを打ち切られた部員が、経済的な理由から退学や転校に追い込まれそうな場合、学校側の裁量で(以下、強調は筆者)新たな奨学金制度を設け、それを利用することを認める。ただし、在校生が卒業するまでの暫定的な措置で、来年度以降に入部する部員は対象にならない。来年度以降の基準については改めて議論する。》(asahi.com、2007年05月10日21時23分)のである。

要するに現在の野球特待生については『目をつぶる』ことにしたのである。こうなることは世間常識のある素人には最初から分かっていたのであって、あらためて高野連の『世間知らずぶり』を露呈したと云えよう。

私が既に5月4日のブログ記事日本学生野球憲章第十三条を廃止すべしで述べたように、野球特待生制度を設ける設けないは私立校の経営・運営方針で定めるべきことである。それに野球憲章が余計な口出しをするのは場違いと云うもの。今回も結局は学校側の裁量で、と落ち着いたではないか。それが筋というものだ。

今日(5月12日)の朝日新聞は社説「野球特待生―行きすぎをどう防ぐか」の中で、次のようなことを述べている。

①《高野連も特待生制度そのものを否定しているわけではない。》

②《とはいえ、高校野球がほかのスポーツと違うとすれば、全国的に人気が高く、選手が大きな注目を浴びることだ。抜きんでた力のある選手は、プロ野球入りや大学進学で有利になる。
そのため、学校が特待生制度を途方もなく広げたり、介在する人たちが悪用したりする現実がある
たとえば、優秀な選手を集めるために生活費まで丸抱えするような高校もある選手をあっせんするブローカーも現れ、そこには金銭の授受もからむそんな話を聞く。 》

③《いま考えるべきことは、行きすぎた特待生制度をどうやって是正していくかである。それには、野球留学にどこかで歯止めをかける必要もある。》

④《朝日新聞社は高野連とつながりが深く、夏の甲子園大会を高野連と主催している。私たちも、特待生の実態と野放図な広がりをきちんとつかみ、早く警鐘を鳴らすべきだったと反省したい。》

以下は私の大好き、揚げ足取りである。

①高野連が口にすることの出来る『特待生制度』はせいぜい『野球特待生制度』に限られる。高野連が特待制度一般に口出しできる立場にないことはいくら『オコチャマ』でも分かるであろう。すなわち高野連も『野球特待生』そのものを否定しているわけではない、と朝日新聞が『舎弟』高野連の代弁をしているのである。かくして野球憲章第十三条はすでに有名無実と化しているのである。

そんな話を聞く、とは明らかに伝聞事項扱いである。これが正確な記事をモットーとする朝日新聞の社説であることに注目しよう。しかしほんとうの問題は、朝日新聞が『金の動き』を知っていた事実を隠蔽することが、読者からこのような批判を受けることよりも重要度が高いと判断したところにある。そんな話を聞くは騙しのテクニックなのだ。

その野球特待生制度が現実に機能していることを認めた上で、学校が特待生制度を途方もなく広げたり、介在する人たちが悪用したりする現実があると述べているのである。そんなこと「ほっとけ」である。何故か。③と関連する。

行きすぎた特待生制度とは何を指すのだろう。
優秀な選手を集めるために生活費まで丸抱えするような高校もあると云うことだろうか。それのどこがどういけないのだ。生活費丸抱えの防衛大学校の現状をまさか朝日新聞が知らないわけではあるまい。『優秀な人材』を遇するあたりまえの道である。

選手をあっせんするブローカーも現れ、そこには金銭の授受もからむ、のどこがいけないのか。何事であれ、お世話になったらお礼をする。いい選手を紹介して貰ったら、礼金を支払うこともある。それのどこがいけないのだ。『裏金』とは無関係に、だから税金を誤魔化さずに、正々堂々と『お金』のやり取りをすればよいのである。

ましてや野球留学にどこかで歯止めをかける必要、とは何事ぞ、である。日本国憲法第22条第1項に「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」とあることを、朝日新聞が知らないわけではあるまい。野球をすることが公共の福祉に反するとはいくら朝日新聞でも主張できまい。それより「○○県○○市出身」と甲子園で選手をコールするようにしたほうが、なにかと楽しめるではないか。

私たちも、特待生の実態と野放図な広がりをきちんとつかみ、早く警鐘を鳴らすべきだったと反省したい。  

よくぞまあ、恥ずかしげもなく!
これを書かされた論説委員?も辛かっただろうな、と同情する。

現実に『お金』が無くては野球部の活動なんて成り立たないのに、あたかも『お金』とは無縁のアマチュア・スポーツマンシップの世界の存在を『信じる振りをする人々』が今回の騒動を作り出したのだ。

それにつけても高野連への『お金』の出入りとその内容はどうなのであろう。会計報告などを調べてみたら『お金』の占めるウエイトの大きさが浮かび上がってくるのではなかろうか。

いずれにせよ日本国憲法の改憲に先立って、日本学生野球憲章第十三条廃止が先ずありきだ。