日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

万波誠医師の米移植学会での症例報告中止のなぞ

2007-03-26 17:17:49 | Weblog
Sankeiweb(2007/03/25 02:56)は《病腎移植問題で、日本移植学会(田中紘一理事長)が米国移植学会に対し、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠・泌尿器科部長(66)らが5月に米学会で行う予定だった論文発表について再考を求める内容の書簡を送っていたことが分かった。これを受けて米移植学会は論文発表を見送ることを決め、関係者に通知した。》と報じた。なんとも不可解な話である。

万波医師らが5月にサンフランシスコで開催されるAmerican Transplant Congressで症例報告をすることになったとのニュースが今月初めに流れたときには、『情報公開』という意味で結構なことだと思った。中国新聞(2007年3月1日)は次のように報じている。

《ATC最終日の五月九日午前(現地時間)に行われる発表演題は「腎移植患者にとっての最終手段、生体ドナー(提供者)/患者からの病気腎」。万波医師、呉共済病院(呉市)の光畑直喜医師(58)をはじめ「瀬戸内グループ」の医師と、病理記録を解析した難波紘二・広島大名誉教授(病理学)ら六人の連名になっている。

 病気腎移植四十二例のうち三十六例の解析結果を基に、全体の五年生存率76・4%、がんの腎臓を移植した患者の五年生存率72・7%―などのデータを報告する予定。「倫理的問題を引き起こすことは健康な生体ドナーの利用より少ない」と有効性を訴える。》

東京新聞(3月1日)は《フロリダ大学移植外科の藤田士朗助教授は「年間一万七千件の移植が行われている米国でもドナー不足は深刻。正規の応募期間に間に合わず追加応募したにもかかわらず採用されたのは、米国の移植関係者の関心がかなり高いことを示す」と評価する。同助教授の元には、米国移植外科学会の元会長のリチャード・ハワード氏から「ドナーとレシピエントがリスクと利益を完全に理解しているならば容認できる。特に日本のように移植できる腎臓に限りがある国では認められると思う」というコメントが寄せられたという。」》とも報じた。

それにも拘わらず、今回の症例報告中止である。何がどうなったのだろう。

American Transplant Congressで発表予定だったということなので、念のためこのホームページで演者としてMannamiを検索したが、検索結果は0であった。早くも削除されたのだろうか。ちなみに私の見る限り、最終日の9日午前はポスター発表はなく、口頭発表のみとなっている。

愛媛新聞ONLINE(2007年03月25日)は以下のように報じた。

《万波医師によると、24日朝、論文の共同執筆者の1人で米フロリダ大移植外科の藤田士朗医師が「今回は論文発表を見合わせたいとの連絡が(米国移植外科学会から)あった」と電話で伝えてきたという。万波医師は「理由は分からないが残念。移植先進国の米国で(病気腎移植が)どういった評価を受けるか聞きたかった。いつかは米国で発表してみたい」と話している。》

この一連の経緯で藤田士朗医師がキーパーソンのようである。『追加公募』を行ったのも、また『発表見合わせ』の連絡を受けたのも藤田士朗医師だからである。藤田医師によるこの辺の事情説明を待たざるを得ないが、それにしても日本移植学会の動きも不可解である。

愛媛新聞社ONLINEによると《日本移植学会によると、米国側には(1)病気腎移植は日本国内で社会問題になっている(2)文書によるインフォームドコンセント(説明と同意)を取っていないことを万波医師自身が認めている(3)院内倫理委員会の承認を得ていない―の3点を田中紘一理事長名で伝えた。》とのことである。

日本移植学会はこのようなことを何故わざわざ公表したのだろうか。例えが悪いが、私は一瞬国際テロ組織の『犯行声明』を連想した。黙っておれば分からずじまいのことを、「万波医師等の症例報告を抑えることが出来たのは、当学会がアメリカ側に『申し入れ』をしたからだよ」とわざわざ云っているように聞こえたからである。学会の意に逆らうとこうなるぞ、との『脅し』なんだろうか。

日本移植学会はなぜ万波医師にAmerican Transplant Congressで症例発表をさせまい、と動いたのだろう。『学会発表』という実績を作らせたくなかったからだろうか。万波医師が口頭発表するとしてもその時間はたったの10分である。質疑応答時間も含まれているだろうから、実際の発表時間はそれよりも短くなる。余程練習を重ねて臨まないと、実質のある発表はし難い。その意味では確かに演壇に登ったという実績だけが全てになる可能性が高い。しかしこれはあくまでも万波医師とAmerican Transplant Congressとのことであって、日本移植学会が目くじらを立てることではあるまいと思うのだが、どうであろう。

主催者はAmerican Transplant Congressなのである。先方が発表を認めたのだからそれでいいではないか、と思う。と思うのだが、American Transplant Congressの態度もまた不可解である。いったん発表を決定したのに、日本移植学会からの『横やり』が入ったくらいで、その決定を覆すとは、見識のなさを露呈するだけである。もっとも『横やり』があったから、と認めることはなかろうが・・・。

いずれにせよマスメディアの報道するところでは、日本移植学会がAmerican Transplant Congressに『横やり』を入れて、万波医師側の『発表』のチャンスを潰した、と私には伝わってくる。信じがたいことであるだけに、マスメディアは藤田士朗医師への取材などを通じて、ぜひ『真相』を伝えて貰いたいものである。