日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

志賀原発1号機臨界事故隠し報道あれこれ

2007-03-16 13:47:42 | 社会・政治
《原発制御棒はずれ一時臨界に 北陸電力、国に報告せず》
asahi.com(2007年03月15日12時31分)の見出しである。主な内容はこうである。

《北陸電力の志賀原発1号機(石川県志賀町、沸騰水型、出力54万キロワット)で、99年の定期検査中に、挿入されていた制御棒3本が想定外に外れ、停止していた原子炉が一時、核分裂が続く臨界状態になっていたことが15日わかった。》

『臨界状態』なんて云われると『ご臨終』を連想して、今にも取り返しのつかない大惨事が起こりそうでドキッとする。メルトダウンの発生寸前までに行ったのかと私は瞬間的に思ったぐらいである。ところが事実はこうであった。

《北陸電力によると、トラブルは99年6月18日午前2時すぎに起きた。定期検査中で原子炉は上ぶたが開いた状態で停止していた。89本ある制御棒はすべて炉の下から挿入された状態になっていたが、そのうちの3本が制御弁の操作ミスで下に落ちてしまい、核反応が始まって臨界状態になった。この時の出力は1%未満だったとしている。》

「ナンジャラホイ」である。89本ある制御棒のうち、3本が操作ミスで下に落ち、そのために営業運転時の定格出力の1%分に相当する『正常な核分裂』が始まった、というだけのことではないか。残りの86本の制御棒は正常に機能していたのだから、メルトダウンを心配することは無かったのだ。私が勝手に早とちりしたように、今にも原子炉が爆発しそうな状態になっていた、と思った人が他にも多かったのではなかろうか。

その後の報道(Asahi.com,2007年03月16日01時28分)で《作業員が制御棒を上下させる駆動装置(水圧式)の弁を次々と閉める作業をしていた。駆動装置の別の場所で漏水があり、その水圧で制御棒3本が自動的に引き抜かれた。核反応が始まり、部分的に臨界状態となった。》であることが分かった。

いろいろのトラブルの連鎖があったようだが、結局は《想定外の臨界で警報が鳴ったが、制御棒を緊急挿入する別の安全装置も働かず、中央制御室で警報を知った当直長が、放送で手動操作を指示。約15分後、制御棒は元の状態に戻った。》のである。「メデタシ、メデタシ」である。

このようなことをわれわれ国民が一々知らないといけないのだろうか。

マスメディアが《事故隠し「悪質」》とか《志賀原発臨界事故隠し「許せない」と安倍首相》とか《甘利経産相は「憤りすら感じる。今までのデータ改ざんとは質が違う。厳正に対処しなければならない」と述べた》(引用はすべてasahi.comから)と報じているが、反応がなんだか大袈裟である。要は「駆動装置の別の場所で漏水があり、その水圧で制御棒3本が自動的に引き抜かれた」という『事故』なのである。核分裂が連鎖的に進行しはじめたのはその結果にすぎない、というのが私の反応である。

いったいどの程度の『事故』から国に報告しないといけないのだろう。それこそマスメディアに解説して欲しいものであるが、今回のようなことを経済産業省原子力安全・保安院に報告していたとしても、報告書は棚晒しになるだけのことだろう。

この『臨界事故』で問われるのは、北陸電力が制御棒の誤動作が二度と起こらないようにどのような対策をとったか、ということである。それなりに対応したからこそ、『臨界事故』が起こってから8年間もこの志賀原発1号機が働き続けているのであろうと思いたい。ただ《発電所長ら幹部が協議して事実を運転日誌にも残さず、国などへも報告しないことを決めた。》と報じられているように、運転日誌に残していないのが事実であるなら、国などへの報告をさておいても、これは問題である。北陸電力は襟を正すべきであろう。運転日誌にも記していないのに《トラブルは99年6月18日午前2時すぎに起きた》ことがなぜ分かったのか、私は知りたい。

マスメディアが大騒ぎをするものだから、安倍首相も甘利経産相もそれに煽られてきついことを云わされる羽目になり、とどのつまりが『臨界事故』発生8年後に志賀原発1号機の運転停止を政府が指示することとなった。「バッカミタイ」である。

マスメディアに煽られてのヒステリックな連鎖反応を止める制御棒こそ、今の日本社会に一番必要なものであろう。