日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

魔法の薬またはがまの膏

2004-10-06 13:08:42 | 海外旅行・海外生活
旅先で病にかかったり怪我をすると大変、楽しい旅の筈が一転、日常の生活に戻される。ましてや外国ではもろもろの事情に疎いだけに、どうすればいいのか、途方に暮れることになる。幸いわたしどもの場合は怪我はけがでも一番軽いケースであったので、旅を続けられる目途がついた時点で気分も落ち着いた。

ところで気になるのは支払いのこと、病院では50ユーロをすでに払ったが、救急車代としてドイツ赤十字社から届いた請求は229.39ユーロ。銀行振込になっているので帰国後に済ませることにして、その旨をファックスで通知した。

以前は海外旅行に際して、念のために旅行者傷害保険などを購入していたが、これまでお世話になったのは一度きりであったので、最近では止めてしまった。加入しているクレジット・カードが海外旅行に際して自動的に保険をかけてくれるシステムのあることに気がついたことも与っている。どれほどのものか、と半信半疑であったが結果的にはなかなかのサービスであったといえる。

帰国後直ちに電話で状況を説明した。送られてきた手続きの書類に必要事項を記入して、領収書と請求書を添えて送り返すと、50ユーロは直ちに私の口座に入金されてきた。救急車費用はカード会社からドイツ赤十字に直接支払われるとのことであった。どの程度の範囲までカバーしてくれるのか、試してみようとは思わないが、これからは大船に乗った気分で海外に出かけられそうである。

事情を知らなかったといえばそれまでだが、無駄なこともしてしまった。

事故のあと、これは即刻カード会社に連絡すべきだと思い、ベルリンのホテルからパリの事務所に電話をした。日本語で通じるのは有難かったけれど、事故の状況はもちろんなにやかやと細かいことを聞かれる。例えば目撃者は誰か、などと。不特定多数が参加するツアーだからツアーガイドかなと思いその旨を告げるとその名前を問われる。そうか、人はいつもそういうこともちゃんと把握しておくべきなのか、と我が身のいたらぬところを謝する始末で、それならご主人のあなたで結構です、とようやくお許しを頂いた。こんな調子だから、なんだか尋問を受けているような心地がした。

かれこれ小一時間もかかったこのやりとりが全くの無駄だったのである。この結果は当然本社に連絡されていると思っていた。ほぼ10日後に帰国してから本社に電話をしてその旨を述べると、会社が違うので最初から事情をご説明下さい、と云われたのである。今から思うにパリの連絡所はもともと、アクシデントに遭遇して途方に暮れた時に、どうすればいいのか指示を仰ぐためのものだったようである。

閑話休題、亭主が電話でやりとりしている間に、妻はディナー?に備えておめかしに専念、やめておけ、との忠言も耳に入らずシャワーを使っている。濡れたばんそこうは取り替えたものの、案の定、亭主に逆らった報いが現れ、それをまた私が償うことになる。

医者の言に従えば、一晩でばんそこうが取れたはず、なのである。
ところが翌朝、ばんそこうの表まで汚れがかなり広がっている。傷口が乾くどころか膿で覆われている。ばんそこうは予備に何枚か貰っていたが、清拭するにもポケットティッシュぐらいしかない。ホテルで場所を聞き最寄りの薬局にかけつけ、清拭用のティッシュにばんそこうも多い目に購入した。

ベルリンからドレスデンに移動したが、その間、ばんそこうを頻繁に取り替えてもなかなか傷口が治らない。相変わらず化膿している。次のことを考えないといけないな、と思ったが、お世話になった病院のあるベルリンはもう遠くの彼方、簡単に訪れるわけにはいかない。となるとやはり便りになるのは薬局、ドレスデンから日帰りで訪れた由緒ある大学の街、ライプチッヒで最初に目についた薬局に飛び込んだ。日本では街の薬局で化膿止めの抗生物質などの入っている薬は購入できない。ドイツでも同じ状況なら病院に行かないといけないと案じたが、なんと有難いことに抗生物質入りの塗り薬を気軽に取り出してくれた。

効き目は抜群、日常、薬と無縁な原始人的生活を送っているせいか、一回の塗布で一晩寝ている間に傷はきれいに治ってしまった。「がまの膏」さながらである。しかし傷は癒えたものの転倒時にかなり強打したのであろうか、内出血による鬱血が眼窩にそって大袈裟に拡大した。お岩様のご誕生である。それ以来帰国後もしばらくは妻が人前に出る時にサングラスが必需品になってしまった。

私と云えば、ニキビを潰したり(この年で)、虫さされをひっかきすぎて出来たかき傷にこの魔法の薬を塗り込んでは、もともと膿むかどうかも分からないのだけれど、その抜群の効果に心から満足している。