手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

触れた手の離し方 その4

2014-04-05 18:21:48 | 学生さん・研修中の方のために
関節の可動性検査でも、手の離し方から情報を得ることができます。

関節なら手の離し方というより、動かし切ったところから戻す時の感触といったほうがわかりやすかもしれません。

でも感覚は同じです。




関節の可動性検査は関節終端感覚(エンドフィール)が重視されますが、判断が微妙な場合は戻す時の感触も役に立ちます。

可動性の制限なら戻す時の抵抗感は強く、可動性亢進なら抵抗感が弱く、すぐ抜けるような感じ。

ふつうはエンドフィールさえ感じたらパッと戻してしまいがちですが、ゆっくりゆっくり戻すことでこのような情報も手に入れることができます。

でもそのためには身体の力を使って操作する必要があります。

手先の力を使って操作しているなら、組織の抵抗感を感じながらゆっくり戻すことは難しいでしょう。



脊椎のスプリングテストの場合にも、手を離す時の情報を活かすことができます。




スプリングテストとは、伏臥位になった患者さんの脊柱を、手掌部や手根部で押圧を加えては離してそのしなり具合をみます。

それによって、動きが減少している分節に目星をつけていくという検査法です。

片手のこともあれば、両手を重ねて行う場合もありますが、個人的には片手で手根部を棘突起に沿わせて検査する方法を好んで用いています。



その際、手を離す時の感触をより意識することで、ただ弾ませて動きがある・ないだけではなく、さらに細かい情報を得ることもできます。

写真は腰部のスプリングテストですが、押圧を加えた時は腰椎には伸展方向に力がかかり、手を離したときは屈曲方向に戻ることになります。

脊椎のある分節に屈曲制限がある場合は、屈曲方向への動きが鈍くなります。

そのため、手を離したときの戻り方、復元のスピードが遅い場合には屈曲制限の存在が疑われるので、その分節を細かく検査していくという流れで評価を進めていくことができます。

もっとも、屈曲制限のある方は腰椎の前彎が強いことが多いので、視診でも見当はつきますが、触診によってより詳細に検討していくわけですね。



以上のように手を離した時の感触を意識することで、同じ操作でもより多くの情報を入手でき、触診による評価の質を高めることができます。



ただ、はじめのうちはムリせずに、押さえた時の感触に集中するとよいでしょう。

慣れないうちにあれこれやっても、情報を上手く処理できないことがあります。

これまでもお話ししてきたのですが、「身の丈に応じた臨床」をすることが大切だと思っています。



身の丈に応じるとは、わかる範囲のことをきちんと処理するということ。

それができるからこそ、わからないところもハッキリして次の課題が浮き彫りになり、ステップアップしていけるのだと思います。



『わかる』ところから、『できる』ところから、『浅い』ところから対処していく、というのを私は勧めています。

ですから押さえることが十分にできてから、離すときの感触に注意するようにしてみましょう。

≪押さえる操作については以下のシリーズをご参照ください。
「かたい」ときほど「やさしく」触診する 【 触診五話 その一】 ≫



さて、触れた状態からさらに力を加えると圧迫することになるのですが、圧した状態から引くときに、身体を使って動かしていないとセラピストの身体にも負担がかかります。

次回はそのお話をしましょう。


次回は4月19日(土)夕方に更新予定です。


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