対局日誌

ネット囲碁対局サイトでの、私の棋譜を記録していきます。
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「囲碁孫子の兵法」の罪

2006-06-25 08:05:31 | 棋書
本当は本をレビューする時に話そうと思っていたのだが、レビューできる棋力に達するのにまだまだ時間がかかりそうだ。
しかし「なんとなく囲碁夜話」の記事に対する以文会友さん、aizomechouさんのコメントを読むと、勘違いしている人がやっぱりいるとわかったので書いてしまいます。

囲碁孫子の兵法 ~三十六計にみる囲碁戦略~」(誠文堂新光社:馬暁春著)のこと。
この本のタイトルには、ある重要な間違いがある。
敢えて日本に置き換えると、この本のタイトルは「囲碁楠木流 ~甲陽軍艦にみる囲碁戦略~」となってしまうのだ。
かえってわかりにくいかしら(汗)?

つまり「孫子」と「三十六計」はどちらも軍略を説いた本ではあるのだが、全然別のもの
「三十六計」の方が時代を下っているし、内容上、確かに「孫子」の影響を受けてはいるけれど。
そこを指摘したくて、この記事を書いた。

「孫子」は日本では、戦国時代の名将、武田信玄が好んで読んだこと有名。
「敵を知り己を知れば百戦危うからず…」
「はやきこと風の如く、侵略すること火のごとく…」=「風林火山」
らの一文が広く知れ渡っている。
作者は春秋時代(紀元前5世紀頃)の軍略家孫武である。

余談だが武田信玄の兵法、個人史を描いたのが先の「甲陽軍艦」。
で、楠木流とは楠木正成の兵法のことです。
楠木正成が南朝の後醍醐天皇を助けた、近畿の豪族だというのはご存じですよね?

対して「三十六計」は宗の時代(12世紀頃)以降の本で、「孫子」とはかなり時間的にも隔たりがある。
作者は不詳で、古来伝わる軍略のセオリーを四文字熟語でまとめたものだ。
こちらに書いてある熟語は中国史が基盤なので、日本人には馴染みが薄いと思われる。
「三十六計逃げるにしかず」という諺は有名だけど。
ちなみに私も以前、この中の「声西撃東」を使って記事を一つ書いた

で、この四文字熟語を使って囲碁の戦略を考えてみようというのが、「囲碁孫子の兵法」のコンセプト。
ややこしい。
だから「囲碁孫子の兵法」は中身を読むとその実、全く「孫子」とは関係がないのである。

もともと「囲碁孫子の兵法」は、中国で出版された(?)時は憶測するに、「囲碁三十六計」というタイトルだったのだと思う。
それを訳した誠文堂の編集者が「三十六計」じゃ据わりが悪いとでも思ったのか、不勉強だったのか、勝手に「孫子」を付け加えたのが真相ではないだろうか?
馬プロが書いたのだから、「馬子の兵法」だったらまだおかしくはなかったのにね。
馬子にも衣装、蘇我馬子ってか?
もっとも孔子老子と並べられては、馬プロもさすがに恥ずかしいでしょうが。

だからそんな機会はないとは思うが、
「孫子の兵法に『声西撃東』という言葉がありましたね」
などと中国の人に話すと恥をかきます。
多分。
ご注意下さい。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ありがとうございます (以文会友)
2006-06-25 11:54:43
ご指摘ありがとうございます。



誠文堂新光社は、webで堂々と「孫子三十六計」と表明しているので、無知か確信犯(職務に忠実)かのどちらかでしょう。



確信犯なら、私はとても良い消費者ですが(笑)。



正確にはタイトルの罪ですね。

36計で取り上げている棋譜は、よくぞ選んだと思うものばかりで、とてもいい本だと思います。



問題の局面までの手順が載っていない分、取っつきにくさはありますが、初、二段ぐらいからためになる本だと思いますよ。

馬先生の棋譜並べたくなりますから。





>敢えて日本に置き換えると、この本のタイトルは「囲碁楠木流 ~甲陽軍艦にみる囲碁戦略~」となってしまうのだ。



これは、困惑しますよね。



ただ、ドロドロの中国史を巧みに渡り歩く間接的戦略というものが、武士道倫理に則り直接的戦闘の勇敢さを尊重する謙信流兵学よりも視野が広いと思うのですが...。



GO!さんの指摘は日中関係にプラスだと思います。
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中国兵法は深い (GO!)
2006-06-26 01:04:33
今週また書きますが、「孫子」や「三十六計」はとぉっても面白いです。



> ドロドロの中国史を巧みに渡り歩く間接的戦略というものが、武士道倫理に則り直接的戦闘の勇敢さを尊重する謙信流兵学よりも視野が広いと思うのですが...。



まぁ、私の例えが酷すぎますから(苦笑)。

初めは「男はつらいよ ~釣りバカ日誌にみる美学」とでもしようかと思ったのですが、さすがに意味不明で差し替えました(笑)。



「囲碁孫子の兵法」は本文にもある通り、評価できるレベルにありません。

しかし悪い本だとは微塵も思っておらず、勿論、今回の話はタイトルについてのみの指摘でした。
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