「わが天才棋士 井山裕太」
(集英社:石井邦生著)
現在、十段戦防衛真っ只中の井山プロの小伝。
井山プロが囲碁を覚えたキッカケから始まり
師匠との出会いや小学生名人戦優勝、
史上最年少タイトル獲得、
そして名人挑戦までの道のりを、
師匠の石井プロの視点から書いている。
巻末には「ヒカルの碁」の作者、
ほったゆみさんとの対談も収録。
編集協力は秋山賢司だが、
対談以外はほとんどは石井プロ自身が書いたのか、
年配の方らしく同じ話が繰り返し出てきたり、
ややくどい文章や構成はあまり上手くない。
ただその分というか師匠の弟子に対する溢れ出る愛情が
率直に書かれていて微笑ましく感じた。
また小学生名人戦決勝の対戦相手はあの万波奈穂プロで、
眼鏡少女時代の奈穂ちゃんの棋譜と、
対局写真が載っているというのも貴重…って、私だけ!?
(内容そのものは奈穂ちゃんの「一手バッタリ」。
拙局なんだけれどね)
△小学生名人戦の棋譜以外にも、
△院生対局(vs種村小百合)
△新初段シリーズ(vs山田規三生プロ)
※△阿含桐山杯決勝(vs小林覚プロ)
△師匠との公式戦
※第33期名人戦第1局(vs張栩プロ)
第33期名人戦第2局
※第33期名人戦第5局
※第34期名人戦リーグ(vs坂井秀至プロ)
第34期名人戦リーグ(vs小林覚プロ)
などの棋譜も収録。
ただし△の棋譜は1譜のみで途中まで。
また△以外の棋譜は6譜程度で参考図もついているが、
※のついている棋譜は刊行の数ヵ月後、
名人獲得に合わせて刊行された
「井山裕太20歳の自戦記」にも収録されており、
そちらで井山プロ自身の言葉で詳解されているのが残念なところ。
解説のポイントの違いを楽しむという手はあるが、
本書収録の価値が落ちるのは否めない。
さらに棋譜もフォントに難があり、やや見づらい。
加えて巻末のほったさんとの対談からも分かるように、
想定対象者は「ヒカルの碁」の読者である
比較的ライトな囲碁ファンと思われるが、
棋譜解説はあまり必要がないと思う。
以上のような欠点からか、よくブックオフで見かけるが、
「井山裕太20歳の自戦記」の存在を気にしなければ、
割とよくまとまった内容で、そんなに悪い本ではない。
企画に泣かされた本だと思う。
【参考】新刊棋書情報「わが天才棋士 井山裕太」