東アジア歴史文化研究会

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浅川公紀『現代アメリカ大統領』(武蔵野大学出版会) 大統領選挙の争点からアメリカの社会の変化を分析 神を信じ、世界平和に貢献するというキリスト教の使命感は死滅した

2024-05-24 | アメリカ情勢

アメリカウォッチャーとして知られる浅川教授の新作はオバマ、トランプ、バイデンを論じる意欲作だ。

選挙の仕組み、過去の大統領選挙を振り返りつつ、その選挙分析、内政と外交、そのリーダーシップをアカデミックに解剖している。

アメリカの分裂状況はパレスチナ支援という世論の大激変が象徴する。これまでの常識はイスラエル絶対支持のアメリカだった。ウクライナ支援疲れ、ポリコレに加えて不法移民、中絶、LGBT、銃規制など鮮明な争点が沸騰した。くわえた政党の内部分裂も深刻な問題である。

民主党はサンダース旋風で分裂症状が顕著となり、トゥルシー・ギャバードらが飛び出し、党執行部の独裁を批判した。RKJは党運営に不満を爆発させ、独自候補で出馬する。選挙でバイデン一本化となると、これまで熱心に民主党を支持してきたヒスパニック、黒人、若者、労組が露骨に離れた。かれらがごっそりとトランプに票を入れるとは考えられないが、民主党の支持基盤の脆弱化が目に見える。

巻き返しをはかるため、バイデンは明らかな嘘と知りながら大學ローンの減免を言いだし、反対してきたメキシコ国境の壁をアリバイ工作的につくりだした。

同性婚に関して民主党の綱領は「愛する人と結婚することを許容する」とした最高裁判決を支持し、LGBTに対する差別と戦う新法制定を唱えてきた。とくに民主党綱領は『LGBTの児童が学校でいじめを受け、レストランは性転換者を拒絶出来、同性婚カップルが住宅立ち退きを要求されることなどは許されないと主張した。

一方、共和党綱領は最高裁の同性婚容認判決を批判し、「事業者が同性婚の結婚式のためのサービスなど宗教的信条に反するサービルを拒否する権利を認める宗教自由法を支持している」。

自らを女性と信じる男性のトイレ使用容認も「非合法、危険、プライバシー問題を無視すること」と共和党は非難した。 次の変化に注目すべきだろう。

クリントン時代から民主党支持者は党が「伝統からして大幅に左傾化し、普通なら受けいれられなかっただろう社会主義に近い政策内容を度外視ている。(中略)同性婚擁護、LGBTの人権保護など伝統的家庭を弱める内容を含んでいることに警戒心を抱かなくなっている」(256p)

中絶に関しては2022年中間選挙の争点となって、上院で圧勝予測のあった共和党が伸び悩んだのは女性票の多くが、中絶問題で民主党に流れたことが大きい。

『トランプは以前、中絶を支持していたが、その後、レイプ近親相姦、母胎の生命が危険になる場合を除いて、中絶禁止の立場を取っている。共和党綱領は中絶禁止に例外を設けていない』(250ページ)

▼価値観の『多様化』は伝統の衰退、アメリカ人の精神を蝕み、心を荒廃させた

現在、アメリカには中絶禁止の州がいくつもあり、最近のトランプは「州にまかせる」と微妙に立場を変えた。

そして神の前に平等という建国の出発点、議会の審議は祈りではじまった伝統は稀釈され、党大会でも、「神」、「信仰」、「家庭」とうい語彙が頻繁に登場した過去の風景を見かけなくなった。

浅川教授は次の重要なことを指摘している。

「その伝統はいつのまにか薄れ、神を排除した世俗的人本主義が蔓延し、無原則な人間の欲望、権利が主張されている。世界の平和のために米国が奉仕するというキリスト教精神に基づく精神があった。トランプにはこのような考え方は全くなく、米国第一である」

価値観の大変化、中西部から南部はファミリーバリューに重きを置く。価値観の『多様化』というより伝統の衰退、キャンセルカルチャーの蔓延が、世界一の軍事大国の構成員の精神を蝕み、心を荒廃させてしまった。

 


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