久しぶりの報告です。
遺伝学(特にダウン症)の権威で、元静岡県立こども病院遺伝染色体科医長の長谷川知子先の著書が発刊されました。原稿を書いておられるのは存じていましたので、待ちに待ったという気持ちです。さっそく拝読させていただきました。
実はこの本のカバー(裏面)に、本の内容をきわめてわかりやすく要約してありますので、ここに引用させていただきます。
「ダウン症の子を育てるのは大変」「ダウン症の子は体が弱い」「ダウン症の人は不器用」「ダウン症の人は老化が非常に早い」「ダウン症の人は退行することが多い」......そんなふうに言われることがあります。
でも,ほんとうはそんなことはありません。それは科学的な根拠のない思いこみ(=ダウン症神話)にすぎないのです。
この本は、ダウン症神話を信じて子育ての自信をなくしたり、悩んだりしている親ごさんや、彼らを支えたい人たちに向けて書かれています。ダウン症についての正しい知識を知り、「障がい」や「違い」よりも私たちと「同じ」ところに目を向ければ、もっと自信をもって子育てを楽しむことができるでしょう。
そして、こうした思いこみや偏見をなくすことは、私たちの誰もが差別も排除もされずありのままに暮らせるインクルージョン社会を実現する第一歩ともなるのです。
約50年にわたり1万人近いダウン症のある人たちと向きあってきた臨床遺伝専門医が伝えたい、ほんとうのダウン症のすがた。
このカバーの解説を読みハッとしました。私が、今まで漠然と持っていた指圧治療中の疑問や悩みや想いなどが短い文章の中で凝縮されていていると思えたからです。私自身、患者さんとのやり取りで時々頭に浮かぶ疑問が払拭され、再度新しい気持ちで患者さんに向かえると、目の前が急に明るくなった気がします
私は約15年前に、縁あって二分脊椎症の障害を持つ少年(T君12歳)とそのお母さんと知り合いました。それまで二分脊椎症の存在自体を知らなかったので、彼のフィジカルな面の改善を指圧で出来ないか、と必死になっていた日々でした。忙しい仕事の合間を縫って時間を作り、週5日のボランティア活動でした。
指圧治療を通して日々変わっていく彼の状況は、たいへん勉強になり貴重な経験でした。その縁が現在、私の二分脊椎症の指圧治療に生き、13〜14人が自力で排泄ができるようになっただけでなく2名の女性か結婚出産までできました。今は「経験」という大きな宝物を得たと感謝しています。
話が前後しますが、これがきっかけで、障害児を持つ母子を圧す機会が多くなりました。お母さんが子供を圧す勉強をするボランティアの「チャレンジ指圧教室」を作り、一緒に学ぶ機会も増えました。隔週土曜日の夜2時間、とても楽しい時間でした。勉強するの中で、実際に親子の日常の大変さも間近に見ることができたのは大きな収穫でした。
今では私も、「障害」とは、心身が持っている病気であり特別な事でなく、同じ人間の状態で社会生活が不便か否かの問題だけだと思えるようになりました。今では、いちばん大事なことは、「自立」だと確信しています。
この本が、障害者を持つお母さんらにとって、暗闇を照らす灯になってもらえるのではないかと期待しています。私の身近にいる方々は、障害・健常に関わらず読んでよかったとの感想を寄せてくださっていました。ぜひお読みいただきたいと思います。