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歴声庵

ツイッター纏め投稿では歴史関連(幕末維新史)、ブログの通常投稿では声優さんのラジオ感想がメインのブログです。

「図説幕末戊辰西南戦争」の感想その2

2006年07月27日 23時12分57秒 | 読書
 昨日に引き続き「図説幕末戊辰西南戦争」の感想を書かせて頂きます、昨日詳細に描かれた戊辰戦争で使用された小銃・大砲の説明を興奮しながら読み終えた後、いよいよ本編の通史編を読み始めました。
 執筆の大山先生が苦労したというだけあって、よくあの少ないページ数で幕末維新史を纏めれたと感嘆しています。ただ幕長戦争について詳細に書いているのが小倉口の戦いだけだったのは仕方ないと思いますが、『第二次長州戦争要図』で大島口の戦いの参加兵力が商農兵としか書かれていなかったのは悲しかったです。
 まあ幕長戦争の華は革命児高杉晋作最後の戦いとなった小倉口の戦い、次が軍略の天才大村益次郎がその鬼謀を発揮した石州口の戦い、そしてその次が本来ならこの幕長戦争の「主戦線」の筈の芸州口で、大島口の戦いは幕長戦争の中で一番地味と言うか大局に影響しなかったと言うのは私もそう思いますが、せめて「後に第二奇兵隊・浩武隊が参戦した」と書いてほしかったです。
 う~ん一般的には「大島口は高杉晋作の軍監殴り込みで勝利した」という俗説が信じられているので、この本には是非とも世良修蔵の活躍により大島は奪回されたと書いてほしかったです。他は本当に素晴らしい内容だっただけに、この大島口の記述の少なさは残念かな。

「図説幕末戊辰西南戦争」の感想その1

2006年07月26日 22時00分06秒 | 読書
 大山格先生や中西豪先生が執筆しているとの事で、知人間でも絶賛だったので購入してきました。まだ読み始めなので全体の感想はまだ書けませんが、いきなり冒頭に戊辰戦争に使用された小銃・大砲の説明がされているのですが、その中でミニエー・スナイドル・シャスポー・スペンサー等の戊辰戦争での主要小銃や、大砲の構造がイラストで説明されているのを興奮しながら読ませて頂きました。ミニエー・スナイドル・シャスポー・スペンサーについては私も仕様と性能については知っていましたが、あくまでイメージとして把握しているだけで、機械的にどのような構造かは知らなかったので、今回この本でミニエー等の機械的構造を知る事が出来、兵士達がどのような操作動作をしていたかをイメージする事が出来るようになったので本当に興奮しています。
 また大砲については、私は大砲については基本構造も操作方も知らなかったので、今回基本構造と基本操作方を学ぶ事が出来たので喜んでいます。

 このようにまだ読み始めながら興奮しているこの本ですが、この本を読んで自分のサイトをどのようにしていけば良いのかのヒントを得た気がします。そんなまだ読み始めですが、記事の内容に興奮したりサイトの制作意欲を刺激されたりと本当に素晴らしい本なのでお勧めです(^^)

井上勲著「王政復古~慶応3年12月9日の政変~」

2006年07月23日 20時13分14秒 | 読書
 タイトルからして12月9日の小御所会議がメインかと思っていたのですが、いざ読んでみたらペリー来航から12月9日の王政復古の大号令が発せられるまでの政治の動きが描かれ、私がメインと思っていた小御所会議や、それ以降の政治の動向などには触れられずに終わってしまうので、ある意味読者を選ぶ本だと思いました。
 このように通史として読むと少々不親切な気がしますが、大まかな幕末史の流れを知っている人が読めば、薩長の倒幕派と越土芸の公武合体派の駆け引き、また薩摩内の倒幕派と和平派の駆け引き、そして徳川慶喜の同行など幕末史で重要な働きをする勢力の動向を細かく描いてくれています。
 特に個人的には芸州藩の同行を描いてくれているので勉強になりました、どうも芸州藩の幕末の動きはイマイチ判らなかったのですが、土佐と組んで公武合体派として薩長と対抗したとは知りませんでした。
 しかし幕末の芸州藩の動きは判りましたが、薩長芸出兵同盟を結びながら鳥羽伏見の戦いに中々参戦せず土佐や鳥取に先を越され、その後の戊辰戦争でも土佐や鳥取の働きに比べると芸州の動きはパッとしないのでは、維新後芸州勢が明治新政府であまり優遇されなかったのも仕方ないのかなと思ってしまいました。

仲村研著「山国隊」

2006年07月15日 22時48分59秒 | 読書
 鳥取藩の付属部隊として戊辰戦争で活躍した、丹波山国村の有志によって構成された農民による志願部隊である山国隊について書かれた力作です。
 単に山国隊の結成についての説明と、山国隊の各戦いの記述に留まらず、山国隊を指揮下に入れた鳥取藩内参謀の河田左久馬についての記述と、幕末の鳥取藩についても書かれているので、幕末の鳥取藩につての入門書としても最適だと思います。実際幕末に河田が失脚して、戊辰戦争前に復権する情勢などは鳥取県史や鳥取市史よりもこの本の方が判り易いです(^^;)
 また実際の戊辰戦争での山国隊の活躍についても、筆者が隊員の日記等を丹念に読んだ事による記述は読み応えがあります。特に甲州勝沼から野州安塚、そして上野戦争と勇戦した山国隊が何故その後はぱっとしなっかたのかという私の疑問に対する答えが詳しく書かれていたので、本当に満足出来る内容でした。
 一次史料ではありませんが、山国隊そして戊辰戦争での鳥取藩について調べている方にはお勧めの本です。絶版ですが古本街を探せば見つかるかと思います、私も普段お世話になっている方に古本屋で見つけて頂けました(^^;)

M・V・クレファント著「補給戦~何が勝敗を決するのか~」

2006年07月10日 23時15分07秒 | 読書
 雑誌「歴史群像」で紹介されているのを読んで、読みたいと思っていたのですが絶版という事で読めなかったのですが、この度再販されたので購入しました。
 内容は多小毒舌が過ぎる気もしますが、「ナポレオン軍は現地徴発を行ったので機動力が高かった」「普仏戦争でプロイセン軍が勝利したのは鉄道を活用した為」という戦史上の常識を多数の史料を挙げ否定して、一般で思われてるほど近代軍隊での補給体制が整ったのは遅かったというのを史上有名な戦いを例に説明してくれるので本当に面白かったです。
 まあこの著者の書く事を全て信じて、今までの通説を全て否定するのも危うい気がしますが、単に通説を否定するのではなくナポレオン軍も補給部隊を率いていた。鉄道の補給上の有効性は認めつつも、主な補給ラインとして鉄道と用い、そこから前線部隊への補給部隊を整え、かつ道路の整備及び交通整理して初めて鉄道を用いた補給が出来るという論調には非常に説得力を感じました。
 他に第二次世界大戦での北アフリカのロンメル軍団に対し、ロンメルの戦術手腕は認めつつも、通説によるロンメルが十分な補給を得れなかったのではなく、十分な補給を受けてたのに補給手段を無視して突進したロンメルに、北アフリカ戦線の敗戦の責任があるというのには、ドイツ贔屓気味の私としては驚きをもって読みました。
 そんな訳で最初に書いた通り多小毒舌気味な書き方ですが、ここまで補給(兵站)を重視した本は初めて読んだので、補給(兵站)に興味がある方には是非読んで頂きたいです。

E・H・カー著「歴史とは何か」

2006年07月08日 22時22分08秒 | 読書
 先日お世話になっている方から、私は「歴史哲学を持たず歴史を学んでいるので危うい」とご指摘を受け、勧めて頂いたのがこの本です。実際私自身歴史の中でも軍事史という狭い面でしか歴史に興味がなく、哲学についても自分とは違う人間が学ぶ学問で、「哲学の本を読む暇があったら、その時間で軍事史の本を読むか、古戦場を訪れた方が自分の為になる」と思っていたので、その考えを改めなくてはいけないとご指摘されて読みました。
 そんな訳で少しでも歴史哲学を持てるように読んでみたこの本ですが、正直「一割でも内容を理解出来たかな」というのが正直な感想です。前半の「歴史を研究する前にその歴史を語る歴史家を研究せよ」「歴史家は裁判官ではない」などは何とか理解出来たような気がしますし、「心理学というのは相手の反応をもって診断が下せるのだから、相手の反応が得れない歴史上の人物を心理学で語ってはいけない」というのは印象に残りました。よく心理学をもって歴史上の人物を書く本を見ますが、今までそれを読んで「心理学を学んでいるとこんなアプローチの仕方があるのか」と思っていましたが、そのようなアプローチが危ういというのがこの本を読んで理解しました。
 そんな訳で前半までは何とか理解出来た気もするのですが、後半は完全に哲学的な内容になるのですっかりチンプンカンプンでした。
 まあこれまで哲学に否定的な考えを持った人間が一冊本を読んだくらいで、理解出来るようなものだと哲学を簡単な物だとは思っていませんので、ご指摘頂いた方達の期待に答えれるように、これからも歴史哲学を持てるように本を読んでいきたいと思います。

上垣外憲一著「文禄・慶長の役」

2006年07月03日 22時09分49秒 | 読書
 文禄・慶長の役に関しては大分昔の学研の赤本を読んだ事があっただけで、そう考えると十数年ぶりに文禄・慶長の役の本を読んだ気がします。
 どうも近年のこの戦役に対しての認識が「道義的」に走りがちで、「政治」「軍事」の概念から当戦役を考えてるのは少ないと思っていたので、そう言う意味ではこの本の政治・外交・軍事の点から当戦役について書いてくれていたので読み応えがありました。
 特に「日本の無知と朝鮮の無関心が当戦役を生んだ」の言葉は印象的でしたね、当戦役に先立って日本側の動きはそれなりに知っていたつもりでしたが、これに対し朝鮮が余りにも無策だったと言うのは知らなかったので、読んでいて唖然としました。
 また当戦役の緒戦の快進撃については、私も通説通りの日本軍の小銃(火縄銃)による火力に朝鮮軍が歯が立たなかったと認識していたのですが、この本を読むと小銃と同じくらい日本刀の切れ味が朝鮮軍にとって脅威だったと、朝鮮側の史料に書かれていると言うのに驚きました。私は武器としての日本刀をそれほど評価していなかったので、敵側から兵器としての日本刀を高く評価する記述があったのには驚きでした。

 他にもそれぞれの戦いの日本軍の動きもきちんと描かれ、軍事的な記述が疎かになりがちな他の歴史系の本と比べると、久々に読み応えのある本でした。
 しかしこの本を読めば読むほど、国内統一戦では抜群の補給手腕を発揮した秀吉が、国内線と対外戦(特に海上輸送)は違うと言っても、最後の当戦役で補給に対してあそこまで無策だったのかには理解出来ませんね。やはり病んでたんですかね、晩年の秀吉は・・・。

神田千里著「島原の乱~キリシタン信仰と武装蜂起~」

2006年06月10日 21時43分52秒 | 読書
 島原の乱については初歩的な知識しかないので購入してみました。島原の乱については近年、徳川幕府によって取り潰された大名の旧臣による反乱と言う説が挙がってきて、私自身もこの説を支持していたのですが、この本はそれらの説に真っ向から反対し、あくまで島原の乱は信仰心による武装蜂起だったと言うのを宗教社会史(そんな学問があるとは知りませんでした)の専門家らしく細かく説明してくれています。
 正直私のような信仰心など微塵も無い者からすると、信仰心から勝ち目の無い武装蜂起を起こすなど理解出来ないのですが、この作者は一揆勢が仏教の信徒にキリスト教への改心を強要したり、神社仏閣を破壊した等の事例を丁寧に一つづつ挙げて、この一揆が信仰心による武装蜂起だったと言うのを読むと、信仰心など持たない私でも納得出来る内容でした。まあ島原の乱が浪人衆による武装蜂起か、キリシタンによる武装蜂起だったのかは私にはまだ判断がつきませんが、この本を読んで信仰説もなかなか説得力があるなと勉強になりました。

 最後にここの所毎度書いている事ですが、この本もまた肝心の島原の乱の軍事的な説明に関しては相変わらず記述は薄いです。まあ宗教社会史研究家の著者に軍事的な記述を求めるのがそもそも間違いでしょうけどね。同じ歴史でも軍事史と宗教社会史では水と油ですものね。

松浦玲著「新選組」

2006年06月04日 22時52分51秒 | 読書
 先日知り合いになった方に推薦して頂いたので購読してみました。
 正直新選組については、それなりに「知ってるつもり」だったのですが、この本を読んで自分の浅はかな知識を思い知りました。正直今まで私も新選組については「武士になりたがった集団」であり、「会津藩雇いの治安維持部隊」だったと言う俗説と同じ認識しか持っていませんでしたので、この本の近藤の文献を多用しての新選組が思想集団だったと言う説明には目から鱗が取れた感じです。
 また伊東に関しても、私は伊東が一般的に言われている通り、「新選組の乗っ取りを狙っていた」と考えていたと思っていたので、この本の説は斬新でした。

 そんな新選組の思想及び政治活動に関しては、史料を多用して説得力のある説を展開してくれたこの本ですが、こと話が軍事行動になると話が浅くなるんですよね。例えば鳥羽伏見の戦いの記述では、井上源三郎がどう死んだと言うのには枚数を割いているのに、鳥羽伏見の戦場で、新選組はどのような編成でどのような装備で、そしてどのような軍事行動を取ったのかと言うのには一切触れられていないんですよね。それこそあれだけ史料を読み込んでいる著者が、何故軍事行動となるとあんな薄い内容しか書いてくれないのか不思議に思います。
 この軍事行動の描写の薄さはその後の甲州・宇都宮・会津・箱館でも続くんですよね、正直著者が調べているのはあくまで歴史で、軍事史には興味が無いのかなと思ってしまいました。

ヴォー・グエン・ザップ著「人民の戦争・人民の軍隊」

2006年05月21日 20時54分53秒 | 読書
 日本人を除けば、有色人種で初めて白人の軍隊を近代戦で破った北ベトナム軍の司令官ザップ将軍の自伝です。通販で購入したので、内容を知らずに購入したのですが、てっきりザップ将軍のベトナム戦争の回想録かと思っていたら、全体の3/4はいかに共産主義が素晴らしいかをひたすらイデオロギーを書き綴り、残り1/4がデイェンビェンフーの戦いについての記述と言う期待していたのとは違う内容だったのでがっかりしました。
 読む前は拠点攻撃と拠点防御のドクトリンの米軍を、ザップ将軍率いる南ベトナム開放軍がいかに翻弄したかと言う、ザップ将軍のドクトリンが読めると思っていたんですけどね。実際には大半が上記の通り共産主義のプロパガンダでしかなかったので、読んでいて滅入ってしまいました。
 それでも、せめてデイェンビェンフーの戦いについての記述が読みごたえのあるものだったら良かったのですが、正直雑誌「歴史群像」での記述の方がイラストや写真を多用して説明してくれる分、この本の記述よりも判り易いと思いました。
 そんな訳で期待外れだったこの本ですが、元々著者としてはイデオロギーを書きたくてこの本を書いたように思われますので、悪いのは内容を確認せずにタイトルだけを見て注文した私なんですけどね。

 余談ですが、ザップ将軍著と書かれていますが、文章の洗練さから見て絶対ゴーストライターが書いたとしか思えません(汗) 更に余談ですが、実際に米軍と仏軍相手の戦争に勝利したザップ将軍ですが、士官としての正規教育は受けていないので、正規軍同士を率いての戦いだったら、あれほどの手腕を発揮できたか疑問と言われています。

鈴木眞哉著「戦国鉄砲・傭兵隊~天下人に逆らった紀州雑賀衆~」

2006年05月13日 23時24分32秒 | 読書
 先日に引き続いて今日も戦国時代の本の感想を書かせて頂きます、「紀州雑賀衆」や「雑賀孫一」と言った名称は私も知っていますが、それ以上の詳しい詳細は知らないので購入してみました。
 内容は紀州雑賀衆の発祥と躍進、根来衆や三好党との関係、雑賀衆と信長・秀吉との戦い等を丹念に描いてくれてるので、私のような雑賀衆についての基礎知識しか無いような者には為になる本だと思います。
 ただ雑賀衆の歴史的活躍については丹念に描いてくれているこの本ですが、何故雑賀衆があれだけ戦上手だったのかと言う描写については、殆ど説明がされていないので、軍事的な面からの雑賀衆の評価を期待していた私には肩透かしでした。
 ところで雑賀孫一って信長の家臣になっていたのですね、漠然と秀吉の紀州征伐の際に戦死していたと思っていたので驚きました。

斎藤慎一著「戦国時代の終焉~北条の夢と秀吉の天下統一~」

2006年05月11日 22時59分23秒 | 読書
 久しぶりに戦国時代の本を2冊購入しましたので、まずは奇しくも「歴史群像」の今月号で紹介された、後北条氏末期の政略と戦略を描いた、この本の感想から書かせて頂きます。
 内容は北条家が信長の死後から秀吉の討伐を受けるまでの政略と戦略を丹念に描き、北条家が関東制覇の「北条家の夢」にあと一歩まで迫っていたのを丹念に説明してくれています。
 見所は秀吉と家康が激突した小牧・長久手の戦いと、北条家と佐竹・宇都宮連合軍が戦った沼尻の合戦をリンクさせて、あくまで関東制覇しか念願に無く小牧・長久手の戦いにもさほど注意を払ってなかった北条家と、家康と戦いつつもその背後の北条家を見ていた秀吉と言う対比が印象的でした。
 多くの本で描かれている実際の秀吉の北条征伐は一切描かれず、そこに至るまでの北条家の政略・戦略を丹念に描いた重厚な内容だったのでお勧めです。

 ちなみに個人的には、秀吉の関東への惣無事令の取次ぎ役に対して、従来の上杉景勝公から徳川家康に交代になったと言う説に対して、北関東の諸将に対しての取次ぎ役は景勝公が行い、北条家に対する取次ぎ役を家康が行なったと言う斎藤氏の説は斬新で、景勝公贔屓の私としては心から共感出来ました(^^;)

松岡英夫著「安政の大獄」

2006年04月25日 22時56分03秒 | 読書
 今まで何度も書いてますが、私は戊辰戦争以外の幕末の知識が殆ど無いので、史上有名な安政の大獄に関しても一般的な知識しかないため、今回この本を購読してみました。
 正直私は今まで安政の大獄は、井伊直弼率いる幕府が橋本佐内や吉田松蔭などの尊王の志士を弾圧して、これに反発した志士の生き残り達が逆に幕府を滅ぼしたと言う認識しか持っていませんでした。ところがこの本は安政の大獄を一般的な「幕府VS志士」と言う図式だけではなく、「井伊直弼VS開明派幕臣」と言う説を書いてくれたので、興味深く読ませて頂きました。
 特に岩瀬忠震・川路聖謨等が直弼により失脚させられたと言うのは驚きでした、彼等が第一線で活躍していたら歴史は変わっていたのではと思っていたので、この本を読んで安政の大獄に対する認識が代わりました。
 そんな訳で、ある程度安政の大獄に対する知識がある人には必要ないかもしれませんが、私のような初心者にはお勧め出来る内容でした。少なくとも星亮一氏の「幕臣たちの誤算」を読むくらいなら、この「安政の大獄」を読んだ方が、何故幕府主導の維新が出来なかったのかが余程判ると思います(^^)
 

星亮一著「幕臣たちの誤算」

2006年04月24日 22時51分50秒 | 読書

 最近迷走気味の星氏ですが、会津が絡まない内容なら感情的にならないだろうと思ったのと、副題の「彼らはなぜ維新を実現できなかったか」に惹かれたので購入したのですが、いざ読んでみたらやはり星氏は星氏でした(涙)
 「幕臣たちの誤算」と言うタイトルなのですから、私は岩瀬忠震や川路聖謨と言った一般の知名度は低いですが、有能な幕臣の姿を描いてくれると思っていたんですよ。しかしいざ読んでみると出てくるのは小栗忠順・勝海舟・榎本武揚・土方歳三と言った誰でも知ってるような有名人ばかり、しかもその内容も私でさえ知ってるような事ばかりな薄い内容でした。正直これなら先日読んだ野口武彦氏の「長州戦争」の方が幕臣達の姿を余程詳しく描いてくれましたね、「幕臣たちの誤算」と大層なタイトルをつけてるわりには、中身は誰でも知ってるような話ばかりと言うのが正直な感想です。
 まあ、つまらないだけなら別に良かったのですが、うんざりしたのがこのタイトルなら感情的にならないだろうと思っていましたが、結局随所随所に、いつもながらの会津の恨み節が出てくるんですよ(汗)
 特にしつこいと思ったのが勝と徳川慶喜に対して度重なる批判です、「奥羽越列藩同盟を支持する立場に立つ身としては、極めて物足りない人間だった」と言う件を読んだ際は、もはやこの人は会津藩を通しての恨みの視点でしか歴史を見れないのだなと哀れに思ってしまいました。また新政府軍を「官軍」とは何が何でも認めたくないらしく、「薩長臨時革命政府」と訳の判らない造語を生み出していました(汗)
 う~んかつての「奥羽越列藩同盟」を書いていた頃の星氏は本当に素晴らしい作家だと思っていたのですが、今の星氏は自分が認めたくない事からひたすら目を逸らして自分の殻に篭ってしまったように見えてしまいます。


岡義武著「山県有朋」

2006年04月23日 22時41分13秒 | 読書
 山県については幕末から西南戦争までの動向は多少は知っているのですが、その後の山県については殆ど知らないので購読してみました。
 この手の個人を扱った本は対象者を絶賛するか、若しくは極端に誹謗する場合が多いですが、この本は山県を擁護する訳でも無ければ必要以上に批判する内容でもなかったので読んでいて不快は感じませんでしたね。
 それで肝心の内容についてですが、個人的には日清・日露両戦争での「軍人」としての山県の手腕を読みたかったのですが、内容の大半が「政治家」としての山県の姿だったので、その辺はちょっと残念だったかな。日清であまりの戦下手ぶりから司令官を解任され国内に更迭された山県の姿を読んでみたかったです(^^;)
 まあ政治家としての山県の手腕を知れたのは良かったですけどね、ただ山県の政治家としての実績を知れば知るほど何故ここまで山県が嫌われるのか余計判らなくなりました。小悪党の政治家は確かに国家にとって害悪ですが、大悪党の政治家は時には国家にとって必要だと私は思っていますもので・・・。
 余談ですが、この本にも同時代の政治家として大隈重信は国民に好かれたと書かれていますが、山県が嫌われて大隈が好かれる理由が私には判りません。だって大隈と言えば明治2年の信州大一揆の際「3千人くらいなら農民を殺してしまえ」と言った人間ですよ、選挙に関する法律を作って国民を弾圧した山県は嫌われて、「3千人くらい殺してしまえ」と言った大隈は好かれる、う~ん私にはどうも理解が出来ません(汗)