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歴声庵

ツイッター纏め投稿では歴史関連(幕末維新史)、ブログの通常投稿では声優さんのラジオ感想がメインのブログです。

野口武彦著「長州戦争」

2006年04月15日 22時54分14秒 | 読書
 まりも様の所で好評だったので購入して来ました、著者の野口氏については以前読んだ「幕府歩兵隊」が非常に素晴らしい内容だったので、この「長州戦争」にも期待していたのですが、期待を裏切らない興味深い内容だったので満足しています。幕長戦争(四境戦争・第二次長州征伐)に関しては、今まで多数の著書が出ていますが、どうしても勝者である長州藩の立場から書いた著書が大半だったのですが、この「長州戦争」は幕府側からの視点で描かれているので読んでいて新鮮で興味深かったです。
 ただ「長州戦争」と言うタイトルの割には、内容の大半が幕長戦争に至るまでの幕府内の動向で、実際の幕長戦争についての記述が少なかったのは残念だったかな。まあ野口氏としては幕長戦争の戦況については「幕府歩兵隊」でも書いているので、同じ事を書きたくなかったのかもしれませんね。
 何はともあれ安価な割には良書なので、興味のある方にはお勧めです。

宇都宮泰長著「維新の礎~小倉藩と戊辰戦争~」

2006年04月11日 23時03分12秒 | 読書
 ネットで見つけて、小倉藩の戊辰戦争の本とは珍しいと思い購入してみました。タイトルから判る通り郷土史なのですが、郷土史は大局観に欠ける所はありますが、主題とするべき題材には本当に詳細に描かれているので重宝するのですが、この「維新の礎」は良くも悪くも典型的な郷土史でした。
 「小倉藩と戊辰戦争」と言う副題はあっても、実際には戊辰戦争の記述は僅かで、大半は幕末の小倉藩の動向と幕長戦争小倉口の戦いで占められていました。その内容は郷土史らしく小倉藩の記述に関しては詳細に描かれているのですが、郷土史の欠点である作者の郷土(この場合は小倉)に対する思い入れが強すぎて、贔屓の引き倒しの嫌いが強かったですね。
 特に幕長戦争小倉口の戦いについてその傾向が顕著でした、緒戦から小倉城炎上までの長州軍の前に惨敗する小倉藩兵については枚数を裂かずに、その後の小倉藩兵のゲリラ戦については詳細に描くのは公平では無いなと感じました。しかもこの小倉藩兵のゲリラ戦については、危うく長州軍が小倉藩兵の前に壊滅させられたと言わんばかりの記述でした。確かに長州軍は苦戦しましたが、幾ら何でもこの本の記述は誇張し過ぎです。
 他にも戊辰戦争での対庄内藩戦争は小倉藩兵のおかげで勝てたと読めるような書き方をして、本来対庄内藩戦争勝利の殊勲者である佐賀軍を小倉藩兵の付属部隊のように書くなど、目に余る記述が目立ちましたね。 
 それでも米沢藩降伏後に米沢城下に進駐した小倉藩兵の総括隊長が判るなど、得た部分もありましたが、感想としては良くも悪くも典型的な郷土史でした。

佐々木克著「志士と官僚~明治を「創業」した人々」

2006年01月29日 20時30分09秒 | 読書
 以前も書きましたが、私は維新後の明治時代については無知ですので、基礎知識くらいは持とうと最近は明治時代の本を読んでるのですが、今回の本もその一環として、また作者が信頼出来る佐々木克先生と言う事で購入しました。
 内容は明治維新後、維新を成し遂げた維新の志士は「維新官僚」と「明治の志士」に別れ、明治の時代は維新官僚が導いて、明治の志士は失脚ないし反乱を起こして歴史の表舞台から居なくなってしまった・・・。と言った感じの内容だったのですが、正直内容はイマイチだったかな?
 う~ん最初に書いた通り作者が佐々木先生と言う事で期待していたのですが、今回の本はちょっと強引だった気がしました。維新後に維新の志士が維新官僚と明治の志士に別れ、戊辰戦争の最中から志士は維新官僚によって粛清されたと言う所までは納得出来ましたが、明治6年の政変までもが「維新官僚VS明治の志士」の図式で説明するのは無茶があるような・・・。この説を作る為に先生は明治6年の政変で大久保利通ら外遊組と争った内治組の1人の江藤新平を明治の志士と断言したのには承服出来ませんでした。
 佐々木先生は大久保利通研究に関しては第一人者だとは思いますが、その反面その大久保の政的の江藤を低く評価する嫌いがあり、江藤を「実はさほどの行政手腕は無く、明治の志士だった」と断言するのには江藤の行政手腕を高く評価してる私には納得出来ませんでした。
 また明治6年の政変を「維新官僚VS明治の志士」と主張するわりには、「本来志士の木戸は一時は維新官僚と同調したが、すぐに彼等とは合わないと判り政府を去った」との説明は無理があると感じました。
 個人的には明治6年の政変を「維新官僚VS明治の志士」と主張する佐々木先生の説よりも、毛利敏彦氏の「明治6年の政変は江藤新平対長州藩汚職派の争いに大久保利通や西郷隆盛が巻き込まれた」との主張の方が説得力があると感じました。

 そんな訳で佐々木先生の著書のわりにはイマイチのある感のある本でしたが、大久保贔屓の佐々木先生は江藤を低く評価していますが、では江藤贔屓の毛利氏は大久保をどう評価しているのかが気になるので、今度は毛利氏の著書「大久保利通」を購入して来ようかと思っています。

毛利敏彦著「明治六年政変」

2005年12月23日 19時54分18秒 | 読書
 いわゆる明治6年の「征韓論」政争を扱った内容なのですが、征韓論と言えば大久保利通・岩倉具視・木戸孝允等の外遊派と、西郷隆盛・江藤新平・板垣退助等の内治派との権力闘争と言うのが通説ですが、この本は明治6年の政変を江藤新平と木戸を筆頭とした長州派との権力闘争で、従来明治六年政変の主役とされている西郷と大久保は、この江藤と長州派との権力闘争に巻き込まれたに過ぎないと言う斬新な内容でした。
 元々江藤新平が司法卿時代に山県・井上・槙村等の長州派の汚職を激しく攻撃したのは有名ですが、これを江藤の正義感から行われたと主張する人と、彼の権力欲から出たライバル追い落としの行為と主張する人に分かれますが、筆者の毛利氏は前者の代表者で、江藤が正義感を持ちかつ卓越した行政手腕を持った人間として描いてします。実際私の江藤観も毛利氏の影響を大きく受け、明治政府の中では大久保利通に続く逸材として認識しています。
 その大久保と江藤が政敵だったと言うのは有名ですが、この本では子分を攻撃された木戸が江藤を敵視し、これが明治6年の政変に繋がったと言う、従来とは違った視点で描かれているのが斬新です。まあ文献の解釈に多少強引な所がありますが、通説の外遊派対内治派と言う単純な図式よりかは、江藤対長州汚職派とこれに巻き込まれた大久保と岩倉と言う説の方が説得力があると感じました。
 私は戊辰戦争後の歴史には疎いので専門的な事は判りませんが、そんな初心者的にはかなり楽しめた内容だったので個人的にはお勧めです。

加藤貞仁著 戊辰戦争とうほく紀行

2005年12月19日 23時25分04秒 | 読書
 数年前から気になっていたのですが、いかんせん1800円と言う高額の為躊躇していましたが、ボーナスも出た事ですし購入しました。

 タイトルからして読み物としてではなく、戊辰戦争関連の史跡巡りのガイドブックとしての内容を期待していたのですが、いざ読んでみたら写真こそ多いものの、地図が無いので(文章での説明はありますが)ガイドブックとしては殆ど役に立ちません。
 むしろ文章の殆どは「会津こそ被害者であり正義!、薩長は悪!」と言った”会津観光史学”の恨み節ばかりなので、読んでいて少々頭が痛くなってきました(汗) もっとも作者自身は新政府軍の事を「征討軍」と読んでるので、新政府軍を憎んでる訳ではなく、早乙女貢や星亮一氏等の本を鵜呑みしてるだけと思われるので(まあ作者さんが東北の人らしいので仕方ないかもしれませんが)、ある意味この人も会津観光史学の犠牲者かもしれませんね。

 何はともあれ、戊辰戦争関連史跡のガイドブックとしては中途半端ですし、内容は会津観光史学のプロパガンダなので、お金に余裕が無い限りはお勧め出来ません。

 余談ながら同じようなスタンスとして「下野の戊辰戦争がありますが、こちらは写真だけで無く地図も掲載し、文献や人物の紹介も豊富ですし、何より尊王・左幕のどちらにも偏らず、公平な視点で書かれているので、こちらの方はお勧めです。