Cafe de Kerm ~毒味ブログ~

物言いにも、珈琲にも、もれなく毒が混入している可能性が無いこともないです。

マイクロソフト、Yahoo!から手を引く

2008-05-06 17:33:17 | Thinkings

 色々とすったもんだの末、出た結論は実に単純。マイクロソフトはYahoo!に「価値無し」の烙印を押した、と言っちゃっていいんでしょうねえ。

 報じた記事は数あれど、一番ウイットに富んだ分析をしていたengadgetを載せておきます。

マイクロソフト、Yahoo!買収案を撤回 engadget

やはり真相は「マイクロフー」はありえない、しかし「マイクロソフト!」で「!」だけになるのはYahoo的に受け入れがたいという判断ではないかと思われます。

 確かに名前は何ともなりませんよねー。普通に考えれば、マイクロソフトはそのまま残して、Yahoo!は傘下ブランドの一つというのが正しいんでしょうけれど。

 冗談はさておき、買収からの撤退を表明したことで、マイクロソフトの株価は上がり、Yahoo!の株価は下がりました。「どちらが勝った」というのは、痛み分けに近い今回の話からすれば意味のない話ですけれど、結果だけ見ればマイクロソフトの判断が正しかったんでしょうねえ。いや、正確に言うとGoogleが一番笑っているんでしょうけれど。

 さて、一番の問題は「何故マイクロソフトはYahoo!から手を引いたのか」と言うことなんですけれど、買収額が高額になったという話がありますけれど、本当に必要だったら、敵対的買収に走ることもできたでしょう。冒頭に書いたとおり「買収すべき価値が無くなった」と言うのが一番正確な表現なんだと思います。

 Yahoo!を始め、Googleなどのネットワークメインの企業にとって、一番重要な収入源はやはり広告収入。GoogleもSaaS方面に手を伸ばし、新たな収益構造を探ってはいるものの、広告収入があまりにも大きな柱となっているという事は当分揺らぎそうにありません。これはYahoo!も同じ事。故に、ウェブ広告関連の技術開発は大きなファクターになります。
 マイクロソフトは確かにSaaS関連技術も欲しかったのかも知れません。しかし、一番必要としていたのは、老舗としてのYahoo!のブランド及び広告関連技術及び開発チームだったに違いありません。

 ですが、Yahoo!や正に「焦土作戦」に等しいことをやってのけます。検索内容から必要とされる広告を抽出するGoogle AdsenseをYahoo!でも使うとして提携してしまったというのです。これは、収益の柱となる検索連動広告をGoogleにゆだねてしまったに等しく、この時点でのYahoo!の価値は「ブランド」「ポータルサイト」という”枯れた”ものしか残らなくなってしまいました。そんなものにつり上げられた買収額を払う必要はない、と言うのが真相であろうと思います。

 ちなみに、日本のYahoo!は母体がSoftBankということで、米Yahoo!とは「提携」という間柄。今回の騒動で、イメージ以外には影響ないと思います、けど。

 Yahoo!の株主及びYang CEO以外にしてみたら、現状の打開も含めて実に魅力的な提案だったと思われる今回の買収話が流れたことで、米ネットワーク企業におけるYahoo!の立場は今後、危うい方向へ転がると個人的には考えます。もう一方のマイクロソフトは、今回の提携が流れたことで、Amazon及びGoogleに追いつけないだろうと言う話もありますけれど・・・
 SaaSが今後主流の一翼になるというのは否定しませんが、それがベストな選択肢であるとは一概には言えない、というのは今までも述べてきたとおり。マイクロソフトにはSaaSではない何かを提示し、別のアプローチから戦っていってもらえないかな、と思うのです。

 正直な話、SaaSがスタンダードになってしまうと、巨大なデータセンターを持てる企業しか生き残れないなんてことになりますので、ビジネス環境を提供できるところがAmazonとGoogleとMicrosoftとほか数社みたいな状況になってしまうような気がするんです。流れと言えばそうなんでしょうけれど、それではやはりつまらないと思うのは、私だけなんでしょうかねえ。