Cafe de Kerm ~毒味ブログ~

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Adobe、Flash戦略をオープン化へ

2008-05-01 23:59:59 | Thinkings

 市場でディファクトスタンダードを勝ち取った場合、得られるものは非常に大きい。

 市場の大きさにもよりますけれど、その製品及びサービスの需要=売り上げに近くなりますから、消耗品なら安定した売り上げが見込めるようになりますし、消耗品でないならば、計画的な製品開発及び販売が行えるようになることでしょう。

 ただ、一度勝ち取ったディファクトスタンダードの座を守り続けるのはなかなか難しいことです。

 例えば、家庭用ゲーム機。任天堂は、今でこそゲーム機のトップメーカーに返り咲きましたが、以前はソニーに対して完全に後手に回っていました。ファミコン、スーパーファミコンと盤石な布陣をひいていたにもかかわらず、です。Nintendo64の失敗をずっと引きずってしまったのが要因です。同じことはソニーのPS3にも言えるわけですけれど、ゲーム業界に限らず、一時期ディファクトスタンダードとして君臨していても、ある時期を境にシェアを落としてしまうなんてことはよくあることです。

 今現在、ウェブ上でのインタラクティブコンテンツ再生のディファクトスタンダードと言えば、間違いなくFlashです。ただ、モバイル用とでは必ずしも層ではありませんし、MicrosoftのSilverlightやGoogleの攻勢もあり、将来的に安心かと言えば必ずしもそうとは言えません。

 そのような情勢の中で、AdobeがFlashのディファクトスタンダードを維持するために取った行動はオープン化。つまり、ライセンス料およびflashプレイヤー提供独占からの決別でした。

アドビ、Flash業界団体「Open Screen Project」発表--携帯端末などでの拡大目指す CNET Japan

 Adobe SystemsのFlashは間違いなく広く使われている。同社によると、PCの99%にインストールされているという。

 しかし、携帯端末などの非PCプラットフォームとなると、Flashが一般的とは限らない。このような状況の理由について、Adobeは、良い開発ツールがないこと、そして、同社の制限付きライセンスがあることを挙げる。

 Adobeは米国時間5月1日、このような問題の解決を目的に新プログラム「Open Screen Project」を発表した。

 今回Adobeが発表した今後の指針とは、

1. .swfファイルフォーマットに対するライセンスの制限の撤廃
2. 携帯電話等への組み込みFlash Playerのライセンス使用料の廃止
3. Flash関連の各種APIやプロトコルの公開

 これらにより、Flashの仕様書を手に入れ、独自のプレイヤーを作ることも可能になるし、携帯電話やDVDプレイヤーなどにFlashPlayerを搭載する場合でもお金が必要なくなります。また、勝手に新しい機械に移植することも可能です。
 これらの措置により、Adobeはライセンス料やFlash Playerの提供に関する権限の大半を失うことになると考えられます。果たして、そこまでしてディファクトスタンダードを維持する必要性があるのでしょうか?

 確かに、Adobeは多くのものを失いますが、Flashの新しいバージョンのリリースにおいては変わらず主導権を持ち続けることになります。つまり、Flashに関してのイニシアチブは常にAdobeのものであるところは変わらないのです。そして、それは市場が大きくなればなるほど大きな意味を持ちます。
 Adobeは、自らのリリーススケジュールに従い、自社のFlash開発用ソフトウェアの調整を行えますし、自社の他のソフトウェアとの連携についても、他社よりも先んじて行うことができます。これは、スピードが要求される開発現場においては大きなメリットです。

 最終的にどこが覇権をとるか、なんて話をしても鬼が笑いますが、Flashはそれに一番近い位置にいると言っても過言ではないでしょう。出た頃はアニメのような「メディア」としての使われかたしかされていなかったけれど、今ではまるっきり開発「環境」ですものね。ある意味Javaと同じステージに立っているわけですよ。

 オープン化が吉と出るか凶と出るか、MicrosoftやGoogleの反応など、今後の動向が楽しみですね。