ブラウン管全盛の時代、他のテレビに比べてひときわ大きいテレビが買えると言うことで、一時期話題になったテレビがあります。
画面の下側、もしくは裏側に投影機を用意し、通常のテレビの画面に当たるスクリーンに映し出すと言うもので、大きくなればなるほど重くなっていたブラウン管テレビに比べて、画面も大きく、それでいて軽くできるのが特徴でした。そのテレビの名は”リアプロジェクションテレビ”。そのまま、「後ろから投影する」と言う名前を持ったテレビです。
時は流れて現代。言わずと知れた液晶全盛の時代です。
今では液晶テレビもずいぶんと大画面になりましたし、消費電力だってブラウン管とは比べものにならないほど小さく、それでいてとっても薄くて取り回しも楽。案の定ブラウン管はあっという間に世代交代となりました。
そんな世の中でも、リアプロジェクションテレビの灯は消えてはいませんでした。住宅事情が寛容なアメリカにおいて、「大画面TVが液晶より安価」という理由で好まれたからです。
しかしながら、日本においては「リアプロ?何それ?」と言うくらいの知名度であり、売り場でも見かけることは難しく、そもそもそんなでかい画面のテレビをどこに置くのよ?という住宅事情もあり、さっぱりヒットには至りませんでした。
そういう経緯もあり、かつて採算度外視で進められたハイクオリティ家電シリーズ「クオリア」のラインナップにも加えていた、日本きってのリアプロびいきであったソニーも、リアプロと縁を切ることにしたようです。
ソニー、リアプロTVから撤退・08年2月生産終了 Nikkei.Net
ソニーはリアプロジェクション(背面投射型)テレビ事業から撤退する。来年2月末をめどに国内外の3つの工場で生産を終了し、在庫が無くなり次第販売もやめる。ソニーはリアプロの世界最大手だが、液晶テレビなどに押され市場の縮小が続くと判断した。松下電器産業、キヤノン、日立製作所が提携するなど電機各社が薄型テレビ事業に力を入れるなか、ソニーは液晶と有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)に経営資源を集中して対抗する。
すでにエプソン、日立が撤退を決めた中、ソニーが続くことで、残るはビクターのみ。日本におけるリアプロの灯はほぼ消えたことになります。そもそも、メンテナンスフリーの家電が好まれる日本において、定期的にランプを交換しなくてはならないリアプロはどうしたって不利です。数年ごとに1万5千円から2万円程度のランニングコストがかかるというのはちょっと買うのを躊躇してしまいます。
さて、これでテレビ市場は液晶とプラズマ、有機ELが残りました。今後はプラズマの進退と有機ELの躍進に注目が集まりますが・・・国内メーカーにはテレビだけではなく、PC用のディスプレイにも力を入れて欲しいと重ね重ねお願いを申し上げます。