ON THE ROAD

適当に音楽や映画などの趣味についてだらだら

『高層の死角』 森村誠一

2015-12-12 00:04:12 | 
推理小説の主人公が警察官っていうのはあんまり好みではない。自分は事件やトリックだけでなく主人公のキャラクター性も楽しみたい。そうなると警察官が主人公だと変人が少なくどれも似たり寄ったりのキャラになってしまう傾向にある。今作も刑事の人間味を感じさせる展開はあるけどちょっと弱いかなと思う。ただ、森村誠一の小説は面白いなあ。とは言ってもこれが二冊目だけど。

処女作でもあり第15回江戸川乱歩賞受賞作品である今作。物語が舞台となるのはホテルだけど森村自身が元ホテルマンだったらしい。wikiにその辺のエピソードが書いてあるけどちょっと面白い。

今作のカギは容疑者のアリバイをいかにして崩すかというもの。正直アリバイもの、特に時刻表なんかが出てくるとややこしくて完全には理解できないんだよね。登場人物が納得していてもこっちは中途半端にしか理解していなくてちょっと置いてきぼりになりがち。それでも面白いと思えるのは森村の力量だ。交通機関の方のアリバイは正直新鮮味は感じられないけどホテルの方のアリバイ崩しはホテルマンという肩書が存分に作品に活かされているのが素晴らしい。これは働いていた人ならではの着眼、発想と思わず唸ってしまう。