ノー天気画家の本音生活 

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日本人は印象派の絵画がなぜ好きなのでしょう?

2012-07-11 12:07:39 | 犬たち

日本人はなぜ印象派の絵画が好きなのでしょう? 

印象派の画家の展覧会となると、押すな押すなの連日満員となり、絵画などに関心のうすい人でもゴッホやルノアールなどの絵は知っているように、印象派の絵は深く日本に浸透しています。
私も美術学校時代からずっと印象派の絵が好きで、印象派を代表する絵画を一堂に収蔵した美術館といえば何といってもパリのオルセー美術館ですが、60歳になりやっと念願かなってオルセー美術館を訪れることができました。
そこでの体験は強烈で、一枚一枚の絵の中に吸い込まれるような感動を覚え、作品のすばらしさもさることながら、それを生み出したヨーロッバ文化の大きさに圧倒されました。 

印象派は19世紀後半から20世紀初頭に起こった芸術の一大運動で、それは人間復興の社会運動のよび水となった活動でした。
印象派以前の絵画といえば実物を正確に描く写実絵画で、その多くは貴族や富豪などの肖像画で、依頼者の求めにより写実的につまりそっくりにそして重厚に描かれた絵がほとんどで、暗くて威厳的・ちょっと近寄りがたい絵がほとんどでした。
その写実主義の絵画の世界を大きく脅かしたのが、カメラの発明と普及でした。
カメラは正確にそして簡単・安価に対象を撮ることができますから、たちまち肖像画家たちの職業を脅かすこととなったのです。 

それを契機として肖像画とは異質の、まったく新しい価値観を持った絵の流派が生まれてきました。
アトリエで人物を描くことから、大自然の光り輝く風景を描くことが主体となりました。
形を正確に描く写実よりも、色や光感を表現することに力点を置く絵となり、むしろ形を意図してデフォルメしていきました。
絵は貴族や富豪などの一部のものから、社会や大衆に受け入れられる明るくポジティブなものに変りました。
これらの芸術運動を先導したのは、マネ・モネ・ドガ・シスレーであり、その後半の中心となったのは、セザンヌ・コーギャン・ゴッホなどでした。
その後印象派の流れは抽象化の道を歩み、難解になった分大衆の心から離れていきました。
つまり形を重視した写実画から、光感に重きを置いた印象派が誕生したのですが、それは抽象画の長い道のりの巻頭を位置付ける役割となったのです。 

つまり印象派の絵の最大の特色は光を表現することにありますが、それではどのようにして光り輝く表現ができたのでしょう。

そのひとつは南フランスなどの強い太陽の下の風景をテーマとして選びました。
それともうひとつは表現テクニックにありました。
ゴッホやモネの絵に近づいてみると、細かい色鮮やかな線や点の集合体であることがわかります。
それはたとえば緑と赤を混ぜれば沈んだグレーとなりますが、緑と赤の原色をそのまま細かく並べてキャンバスの上に置いて、離れて観るとそれはやはりグレーですが、そのグレーは魔法のように光り輝いて見えるのです。
そのように無数の色合いの調和により、光が溢れる絵となっているのです。 

それでは日本人がなぜ印象派の絵が好きなのでしょう?

ヨーロッパが最も華やかなとき、新しい絵画活動という意識改革が起こりました。そのインパクトは日本だけでなく、世界に広がったのです。
印象派が去ってからすでに100年も経つのですが、印象派に見せられて多くの画家たち、もっと言えば学校教育までもがその影響を受けました。
私もその一人として、たとえば上の絵は特に光感を意識して描いたものです。

日本人が印象派の絵が好きなのは、明るく・わかりやすく、そして楽しく・・・芸術を身近な存在にしたことにあります。
たとえば、スケッチブックを持って自然の中で写生する、それは印象派の真髄そのものなのです。

 トレース水彩画では印象派の一歩先を行っています(・・・と、大見得をきるのですが)。
「スケッチブックを持って自然の中で写生する」のは時代遅れで、これからは「カメラを持って自然の中で写真を撮り、そしてそれをアトリエで描く」・・・それがこれからの絵画のトレンドで、トレース水彩画の真髄だと私は確信しています。

 


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