なかなかに面白い本でした。歴史を人々の性生活から見るという新しい切り口。
もちろん、今も昔も自分の性生活を克明に記録するなど稀。史料は乏しいけれど、唯一と言っていい例外が小林一茶。52歳での遅い結婚の後、家の存続のために跡継ぎを切望する。夫婦生活を詳しく記録し、合間には山へ行って精のつく山野草の採集。
でも子供は立て続けに4人が乳幼児期に死亡、妻も30代の若さで亡くなってしまう。家を存続させるための涙ぐましい努力。俳人一茶のもう一つの顔が面白かった。
一晩で5回って、日記だから話し盛る必要もないとすれば、そこまでするのは家の為?何の為?
江戸時代と言っても期間が長く、地域もいろいろ。この本では通史ではなく、たまたま残っていた史料をもとにいくつかのテーマについて書かれている。
一茶のほかには、離婚後に生まれた子供を巡るもめごと、難産に活躍する医師と産婆、江戸時代の性産業の実態、性を巡る幕府などの政策。
私の今までの認識は、東北の間引き習慣、吉原の遊女を出るものではなかったけれど、江戸時代でも結婚、出産に支援した藩では間引きが行われなかった事例もあったそうで。
結婚の支度金、家、農地、年貢免除、そしてオシメ代と至れり尽くせりは米沢藩。寛政年間の改革後、人口は増え続け、幕末の男女の性比は現代と変わらないそうで、女子の間引きがなかった一つの証拠だとか。
末尾で、著者は「江戸時代の性はおおらか」との通説を問い直している。
仲人を立てた結婚のみが認められ、家を存続させるため、結婚と性と生殖の一致する性規範、それから外れた性売買は差別されつつ、大衆化していく。
性とは生き方の根幹にかかわること。自分が自分らしく生きるための性ではなくて、家や社会、国の為にが優先された時代もあったわけで、これは私たち世代の若いころはまだ残っていた意識だった。
恋愛はまかりならん、商売を継ぐための養子をもらう、と父親から厳しく言われたのは私の友達でした。
また家を継ぐ男の子を産んでやっと安心したと、何人からも聞きました。私自身、口には出さないけど、私もまたその規範の残滓に縛られていたのでしょう。男の子が三人で、前の世代に喜んでもらえてよかったという。。。。
広島で「性を大切に」という啓蒙活動をしている女性産科医師がいます。今は性の規範が緩くなった結果、却って女性が粗末に扱われる場面もあり、自分を大切にする必要性を訴えています。
小林一茶・・・三人目の妻の妊娠中に亡くなりますが、その子が養子をとって家は続いたそうです。望みどおりになったということですね。
小林一茶の子供を持ちたい執念に圧倒されました。そこだけでも読む価値はあるかと。
それと俳句が広まっていて、弟子もたくさん、教えるのは結構な収入になったようです。
性生活という一番パソナルナ部分にも社会の影響は避けがたい。そのことも知りました。
よかったらどうぞ、お読みくださいね。
frozen roseさんのブログを読んだだけでも、とてもよくわかりました
江戸時代、お家騒動、お家断絶、子なき三年云々、などなどと女性も男性も家に縛られていたのですよね
今はそういう面ではいい時代になりました
それにしても、読書量と読まれる分野の広さにいつも敬服しています
これからも色々ご紹介ください
おっしゃる通り、家を続けさせていくためには男の子が必要、そのための結婚、不自由な時代でしたね。
好きな人と結婚できないのは辛いことだったでしょうね。
そのための心中物の浄瑠璃などが人々の紅涙を絞りました。
難しい本や重い本はなかなか読めませんが、そう言っていただくと、細々と読書の記録、残して行こうかなと思います。ありがとうございました。