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「されど われらが日々━」 柴田翔

2017-07-24 | 読書

統合移転してわが青春の地は、今、フリマ会場などに。

少しずつ建物が立ち、有効利用されている。

高層マンション、スポーツクラブ、丸亀製麺などなど。嗚呼( ;∀;)


読むのは三度目。一度目10代終わり、正門近くの古書店で購入。周りでも読んだ人ちらほら。

一節を引用した手紙を男子からもらったこともある。ご本人は忘れているでしょうが。私も今日思い出した。

二度目は新装の文庫本が出た10年前。そして今回。

10代で読んだ時には、サークルでの男女の組み合わせ、やがて結婚するもの、自殺するもの、出会って別れて、青春群像として読んだ。

私達の世代は団塊世代、全共闘世代と言われますが、そして、アマゾンのレビューで混同しているのもありますが、小説の中の時代設定はもっと古く、血のメーデー事件と、日本共産党の路線変更、六全協以後の青年党員の挫折が大きなモチーフとなっています。

若いときは自分の主義、思いに殉じて、死まで選ぶ、その純粋さを素直に読めたのですが、あれから五十年、齢を重ねたばあちゃんは、何はともあれ死ぬのはよくない。と声を大にして言いたい。行き詰った、もう生きていけない思っても、とりあえず、死ぬのは一日延ばしてみる。その一日を重ねてみましょう。そう言いたい。

一人の若者が形而上の悩みで死んで、その周りでどれだけの人間が嘆き悲しむのか知ってもらいたい。

主人公はおとなしく流されるまま、ストーリーを語る立場なので積極的には何も行動しない。婚約者節子はそれが歯がゆくて別れたのかな。しかし、節子もまた、結婚式を控えて、親にも内緒で、唐突に東北のミッションスクールの英語教師になることを決めてしまい、あまりに抒情に流されすぎてると思った。結婚式場のキャンセル料、親に出させるの?

お嬢さんが家も出ずにそのまま結婚する。その前に冒険したいのかな。まあ、それならわかる。

いえいえ、今の時代の感覚から突っ込むのは簡単。しかし、この本が200万部近く売れ、一時は青春のバイブルになったことの意味は深い。

昔の若者はうんと「うぶ」だったともいえる。

末尾近く、時代の困難となれ合って老いてきた。将来をそう予想する主人公の述懐。いえいえ、困難とは闘うしかない。そうやって生きてきた。私はそう言える

時代の困難から抜け出して新しい生活に踏み出そうとする人がいた。いえいえ、おかれたその場所で少しでも良くなるように努力するしかない。

場所を変えたら自分が変わるのは幻想。自分が戦って行かないと。

この中では東大と東京女子大など、学校名が実名。どちらも行けなかった私はすねる。

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いま生きる「資本論」 佐藤優

2017-07-23 | 読書

なかなか面白かった。

資本論という著作があるのは知っている。大学の門前古書店のどこかで、手に取ってページをめくったこともある。研究室の蔵書の中に、学生のリクエストで入れたけれど、教授は不承不承だった…というようなことを院生が話していた。

とまあ、私と資本論の関わり合いはその程度。少しは読んだかもしれないが、一人で読むにはなかなかに骨の折れる本である。

こういう手の本は、用語の概念、それを厳密にしつつでないと、すぐに筋道が分からなくなるし、その時も、いつも、ほかに面白くて読みたい本はたくさんあるので、経済学徒でもない場合、読む動機もそう強くないはず。

でも、昔は(そして今も少しは)読書界に燦然と輝く、難解にしてメッセージ性の高い大著作ということになっていた。一人で読み通したら、大尊敬されるか、超変わり者として扱われるか、たぶんその両方だったと思うけれど、誰しも、少しは人生も変わったかもしれない。

その150年前の古典を、新潮社が催す講座で読み通そうと言う試みである。講師はスーパー読書家であの博覧強記で知られる佐藤優氏である。全編、知的刺激に満ちた面白い本だった。

資本主義が行き詰まり、歴史の必然として社会主義、共産主義が生まれることを理論として打ち立てたのが資本論。その時は理論だけだったが、ロシア革命がおき、ソ連が瓦解し、ほかの社会主義国も自由主義経済を取り入れたりと、150年後の私たちの世代は、資本論の通りに歴史が進んでこなかったことも知っている。

それなのに、今、読む意味はなにか?

それは労働者の暮らしが19世紀よりはよくなったとしても、疎外されている状況は基本的には変わらないから。人は目の前にある現象だけが絶対で、変えられないと思いがちだけど、ちょっと視点をずらし、古典を自分の暮らしの実感に引き付けて読み直すと、これからを生きるヒントがいっぱい詰まっている。そういう結論だと思う。

著者のほかの著作の中でも繰り返し言われることだけど、どんな時代にも生き延びる広い知識を身に着ける、その大切さを言っていると思った。

先週の旅行に持って行って、夜、宿で読むつもりだったけど、疲れてすぐ寝てしまい、帰りの新幹線が激混で立っている間にだいぶ読んだ。

列車に乗って立ってるのは本当に退屈だけど、本があって助かった。

どこへでも軽く持ち運べるよう、最近は文庫本が多い。私の場合、隙間読書ですね。

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宇治で源氏物語の心に触れる

2017-07-20 | 旅行

7/16

近江八幡から宇治へ移動します。

奈良街道沿いの茶問屋

宇治橋袂

平等院参道で

続いて川土手の緑陰を歩きます。涼しい。

駅前観光案内所では歩くと大変と言われる。でもせっかくの観光地、歩きます。

着きました。JR駅からは20分くらい。雨も上がっていい散歩ができました。


食事は一階の部屋で。

小さなテラスの先の庭。その向こうはもう宇治川です。川へ降りる石段も見えます。

きれいな前菜。なんでも一口ずつ。器の中は冷えた湯葉。

あといろいろ来たけれど、どれも繊細な京料理。おいしくいただきました。

私達の年齢にかんがみてかどうか、和室に椅子席でしたが、またまだ座卓でも大丈夫です。

とはいえ、そろそろ労われる年齢になったようで。

それはそれで心地いいのですが、それに甘えず、なるだけ体を動かしたいものです。

水流無限。毛脛深謝。

日も暮れてきました。

急に決めてネット予約した宿。お客さんは他に若い女性二人連れだけ、ほぼ貸し切りの宿。

連休なのにこれでいいのかしらと心配になりましたが、私が心配することでもなく。

今のお客さんは要求水準が高くなって、それにこたえていくのも大変。

支配人他スタッフはとてもいい感じの方でした。

「京都では祇園祭に雨が降って梅雨が明けます」とのことでした。


7/17朝、部屋のベランダから宇治川を見る。水音が絶え間なく聞こえて、涼しい。

宇治平等院。

元々は藤原氏の別荘内の私的な阿弥陀堂。寺院ではないので、五重塔などの設備はなく敷地はこじんまりしています。

300円でお堂内も見学。定朝作の阿弥陀如来、日本の仏像の完成された形と思いました。

穏やかで破たんがない。極楽へ行けば、きっとこんな仏様が迎えてくれるに違いない。

ハスと平等院。

川の中州から宇治神社へ

一段上の宇治上神社へ。世界文化遺産らしい。

緑の中の赤い鳥居。

独特なつくりの本殿。

与謝野晶子の句碑。この付近は源氏物語にちなんでさわらびの道と呼ばれているようです。

源氏物語ミュージアム

展示

みやびであでやか。

牛車は国産5千万円、中国に発注して1千万と、15年くらい前、京都文化博物館の学芸員の方に教えてもらいました。

今はもっと高くなってるかも。そんなに作るものではないので、技術の伝承という面では厳しいかも。

装束に調度。

薫大将が宇治の大君と中君をのぞき見する場面らしい。

少ししか見えないので物語が生まれる。


続いて三室戸寺に行きます。歩いて20分くらいです。

西国十番札所。境内、サツキ、アジサイなど、花の寺。

今はハスが満開。人も多い。


さらに歩いて茶商、伊藤久右衛門のショップへ。いつも混んでいて、この前は時間がなくて断念。

きょうこそは。

待つこと30分。念願の抹茶パフェをいただきます。抹茶をかけていただきます。

看板と一緒に記念撮影。

この日は祇園祭のハイライト、山鉾巡行の日。京都駅の掲示。

京都町衆の底力。これは辻まわしの場面でしょうか。

秋田の竿灯?

祇園祭は近寄るのも大変そうで、当然パス。


21歳のころ、祇園祭の夜、四条通を歩いていた記憶がある。

山鉾巡行は終わっていたのに、満員電車のような人混み。自分の行きたい方向へ全然いけない。

東京の人と待ち合わせて歩いてたのだけど、携帯のない時代、どうやって連絡とってたのか、今となっては不思議。

昔は会えなかったときは一時間くらい待って、帰るとか。逆にフェイドアウトしたいときはわざといかない。それを繰り返して終わりにするとか。

はい、ばあちゃんが昔話をしています。

伏見稲荷へ行く夫とは途中で解散。一人で帰宅。新幹線の自由席は激混み、岡山まで立っていた。

混む列車に乗るのも久しぶり。

と、夏の旅行も無事終わりました。二日間よく歩きました。心地よい疲れです。

次はいつ、どこへ行けるかな~

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近江八幡・水郷巡りと街歩き

2017-07-19 | 旅行

琵琶湖東岸の風光明媚な地、見どころがコンパクトにまとまり、中心部は歩いて観光。

京都の人が別壮を構えた土地だったそうで、風情ある落ち着いた街のようでした。

7:00広島発。京都で新幹線から新快速に乗り換え。9:35に近江八幡着。

駅前観光案内所で手漕ぎ船「丸山」の割引券貰って、9:40 長命寺行きのバスに乗ります。

「丸山」へ今向かっていると電話したら「キャンセルじゃなかったですか~?」って。

バスは360円、手前の和船乗り場より100円高いのでその分割引してくれました。

あちら別の事業者。近江八幡は全国でも珍しい手漕ぎ船が残っています。

橋の下を通ります。


バスで再び引き返し、大杉町で下ります。

六月の杜若はもう終わっていました。

水辺のアジサイ。

鳥居の中の「たねや」さんで食事します。これも先月と同じです。

きょうは屋内。山野草の盆栽。ウツギ、ヒメジヨン、チガヤなど。涼味満点。

こちらギボウシにチダケサシ?

と、山野草に癒されまくっていたらお料理が来ました。

六月と同じものを注文。おいしくいただきました。このほかに食前、食後に和菓子が付きます。

元々は種苗業、現在は和菓子の製造販売と和食どころ。

自在鉤に向こうは竈。


日牟禮八幡宮の前を通ってロープウェー乗り場へ向かいます。

八幡山頂上は標高300メートル余り。ロープウェーでぐんぐん上ります。

頂上には豊臣秀次の築いた城があったそうです。

下りて少し上ると瑞龍寺。豊臣秀次の菩提寺。京都にあったのを移築したそうです。

山頂は豊臣秀次の築いた城があり、西の丸あとから琵琶湖がよく見えます。近江八幡の発展の基礎は秀次にあり。悲劇の人ですが、地元では大切に思われているようでした。

ブラタモリ、取り上げると面白そうです。

一時半予約のヴォーリズ記念館。30分も早く着いてしまいました。門はしっかり閉まっています。

暑くて、どこにも飲み物の自販機ないし、頭は痛いし、気分が悪いです。

やっと入れます。素敵な建物、素敵なアプローチ。

暖炉のある広いリビングでビデオ見て、室内の資料を見ます。

ビデオの途中で寝てしまい、目が醒めたらだいぶ気分良くなっていました。

室内撮影禁止。窓辺のみOKです。

続いて近くのハイド館へ。ヴォ―リズ学院の付属施設です。

初めてなのにとても懐かしい眺め。

階段途中の踊り場。ニス塗りの腰板。観音開きの窓フランス窓。日曜日の学校。遠くで楽器の練習をする音。

時間は過ぎ、人は集まり去っていくけれど、変わらないものがある。ここにもあるし、それを見る自分の中にもある。忘れていたものが呼び覚まされる。

信頼とか愛とか、真理を求める心とか。

ものごころがついて社会に出ていくまでの、凪のように至福の時間。その短い時間をどう過ごすかで、きっと自分が形作られてきたのだと。その静かな確信。

私はクリスチャンでもないし、信仰心も持ち合わせないガサツな人間。

でもここにいると心が落ち着く。その不思議なご縁。ヴォーリズ師、ありがとうございました。

幼児教育をしていた部屋。ハイカラ。

24歳、初来日のときのトランク。木製。1905年なら船で来たのでしょうか。

この人と一緒に旅行しました。もう50年の知り合いでごさいます。


さらに歩く。もうとっても暑い。自販機のポカリだけ売り切れ。もうーーー気分悪いーーー

蔵元の中の喫茶店で休む。

即席の保冷襟巻。

氷を二個入れて、落ちないようにクルクルねじり、両側の頸動脈に当てて首の前で結ぶ。

血液を冷やすと体も冷える。内側から冷える。

というようなことを説明するも、笑って相手にされず。悔しい。

ヴォーリズ建築。旧八幡郵便局。今は骨董店など、ショップがいろいろ入っています。

新町通りの古い町並み。この付近まで来るといきなりの豪雨。

急に人影が見えなくなりました。私は晴雨兼用傘さしてますが、夫は傘がなくてずぶ濡れです。

まさか雨が降ると思わなかったそうで。

銀行の軒先に待たせて、傘を売る店を探しますが、小さな町で日曜日は何処も閉まっています。

でも、しばらく行くと靴屋さんがあり、折り畳み傘も売っていたので助かりました。やれやれです。

最後は池田町の洋館街へ行きます。食事前からずっと歩いて、もう15,000歩は歩いている感じ。でもまだまだ歩きます。

池田町の一角は立派な洋館が並んでいます。

建築は専門に勉強した人ではなかったそうですが、各地にいい建物が残っています。確か福岡市内の牧師館もそうだったような。

京都市内にもたくさんあるようです。

こちらは家は新しいようです。イメージは踏襲しているのでしょうか。

八幡小学校。瀟洒な西洋建築。

最後は小幡上筋からバスに乗って駅へ行き、16時過ぎの新快速に乗り、京都乗り換え宇治まで。約一時間で着きます。それはまた次の機会に。

落ち着いた町、西洋建築たくさん、景色もよくて、歩いて回れる観光施設いろいろ。最近、特に人が増えたそうです。

いい町でした。  

 

 

 

 

 

 

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近江八幡と宇治へ

2017-07-18 | 旅行

先月行ったばかりですが、近江八幡は小さくて魅力的な市、もう一度行くことにしました。

今回はヴォーリズの建築をいくつか見ました。彼はもともと、英語教師として赴任、キリスト教の伝道をするので二年で職を解かれるも、帰国せずに一生を日本で過ごします。

学校教育、キリスト教伝道、そして西洋建築と、彼の足跡はそのまま、日本近代が西洋文化を受け入れこなしていく過程でもありました。

今、目にするのは近江八幡を中心にして残る建築群ですが、その時代の新しいものもなぜか今となっては懐かしく感じてしまうのは、質実なアメリカ開拓時代の面影があるからでしょうか。

日本人を妻とし、日本を愛し、日本に帰化し、晩年には両親も日本へ呼び寄せたヴォーリズ。

昨今の日本大好き外国人ブームの走りのような人。近江八幡を中心として、関西にたくさん残されたヴォーリズ建築。まだまだ全部は見きれてないので、また行くかも。遊ぶことなら頑張る私。。。。


ヴォーリズ記念館。後半生を過ごした家。

資料を展示しています。見学無料ですが、予約制。ビデオを見て展示を見ます。

予約時間より早く着きすぎて近所の公園の木陰で待った。とても暑い日で、気分悪くなったけど、建物の中で休むうち治った。よかった。

ヴォーリズ学園、ハイド記念館。ハイドはメンソレータムの発明者。その日本での販売権をヴォーリズは得て、利益を学校教育やキリスト教伝道、慈善事業に活用したとのことです。

中は教室などがあり、何かの行事には使われているようでした。また小さな体育館とつながっていて、内装材の古い木が音響効果抜群。高校生が管楽器の練習をしていました。お邪魔してごめんなさい。


その日のうちに宇治へ移動。朝、部屋のベランダに出て宇治川を見下ろす。

左、宇治平等院へ。右は宇治神社など。源氏物語の浮舟が川に飛び込んだのはあのあたりでしょうか。結構急流です。

宇治へははじめての夫。三度目くらいの私。でも泊まるのは初めて。

京都市内に比べて、ひなびた感じで涼しく、宿泊料も安い。

窓を開けて寝ると寒いくらいだったのですが、夫はそれでも暑くて川の音がうるさかったとのこと。

気温と音の感じ方は人それぞれ。やれやれです。

10円硬貨でおなじみの宇治平等院。一度も焼けたことのないオリジナルだそうです。

ハスを入れて極楽っぽく。

宇治川近辺を歩いて、最後は三室戸寺へ。西国三十三か所十番目の寺。私は四度目くらい。

夫初めて。ハスが盛りでした。

午後からは伏見稲荷へ行く夫と別れ、各自で帰宅。暑くて雨も降った七月の旅でした。

詳細は次回以降に。

 

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「女たちの避難所」 垣谷美雨

2017-07-11 | 読書

3.11の大震災とそのあとの避難生活、仮設住宅での暮らし。そして三人の女性が力を合わせ、新天地で自分たちの運命を切り開いていくところで小説は終わる。

読みながらものすごくドキドキし、たまに涙を流した。

ドキドキしたのは怒りから。ここに出てくる男たちはみな、能力がないのに立てられて当然と威張り、内実は女性に依存している甲斐性なし。

東北の男性全員がこんなどうしようもなく救い難い男ばかりとは思わないけど、そして、小説だから誇張はあるけれど、男と女の関係をよく描いていると思った。

避難所ですよね。避難所へ行くようにならないことを祈るばかりだけど、ただでさえ不自由なのに、訳の分からない男に威張られたのではかなわない。

実際の話として、最後まで仕切りの段ボールを使わせない避難所があったそうで、それがこの小説を書く動機になったとか。

この小説にあるように、ここで生活するなら家族も同然、仕切りなんて水臭いということだったんだろうか。

はあ?

元々他人同士がなんで家族の振りしないといけないのよ。言い出す男は全体を把握し、仕切りたい、家父長的体質の男。困りますねぇ。自治組織のはずが、特定の人に権力が集中すると理不尽なこともまかり通る。

何よりも理不尽なのは、非常時に女性が、男性の性的好奇心の対象となってしまうこと。一人で暗い所へ行かない、トイレは二人以上で。などなど。ひそかに言われていたことだけど、実際にもあったのではないかと私は思う。表に出ないだけで。秩序が崩壊した時に、むき出しの暴力、人間の欲望があらわになる…

最後は風通しのいい自由の天地で、働いて人生を切り開いていく三人の女性。明るい気持ちになり、応援したくなった。


この中で、夫を亡くした若い未亡人が舅の戸籍から抜ける話があったけど、戸籍は結婚と同時に別々のはず。住民票を分けて、自分が世帯主になるということかな。そして親子関係の消滅を申請すれば、義父の扶養義務もない。身軽になれるという意味と思った。

この小説の中では、都会では女の人が一人で喫茶店入ったり、映画見たりを東北から出て行った女性が驚く場面がある。女性が仕事していたら、外回りの仕事もあるし、一人でご飯食べるのは当然。と私は思う。何も奇異な光景ではない。

この日本のどこかに、それがまだ不思議と思う感性があるんだろうか。

都会と地方という切り口からも、面白く読める小説でした。津波に流され、九死に一生の場面の描写も秀逸。

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「高原好日」 加藤周一

2017-07-09 | 読書

「油屋」 信濃追分の老舗宿。2006年。

現在は廃業され、PKOが運営するイベント会場と素泊まりの宿になっているようです。

実はこの本、7年前の今頃読んでいるんですよね。

http://blog.goo.ne.jp/samubuto/e/b05d19bf199bebba1750180919d879d7#comment-list

二階廊下の本棚で見つけて再び手に取ったのは、夏になると涼しい風の吹く高原に行きたくなるから。

この時の感想は我ながらうぶだなと思った。

避暑地の交友。時間とお金と知性と健康と。どれが欠けても成り立たない。文章が上品で過不足なく、地縁血縁から自由な避暑地の交友。いいなあと思った。仲間に入りたいけど、私にあるのは好奇心くらいかな。

7年前に感動したところは二度目なのでそうでもなく、別なところでハッとさせらることもあった。

例えば155P 佐久間象山の項、「…理想がどれほど現実から離れているとしても、どういう理想を持つかは現実の一部である」との著者の言葉。

昨今の、憲法改正への無茶な流れを思って暗澹。九条の会の、確か発起人でもあったはず。九条の会など、今のマスコミは完全無視。優れた知性が次々あちらへ行ってしまわれて、この国はどうなるのだろうと、心配なのであります。

軽井沢テニスクラブ。2006年。クラブハウスはヴォーリズ設計だそうです。

 

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「夏が僕を抱く」 豊島ミホ

2017-07-04 | 読書

30代前半の作家の、8年前の短編集。

どれも、思春期や大人を迎えた幼馴染との恋愛のあれこれ。幼馴染は故郷や家族や、自分の幼いころの記憶とシンクロするけれど、一方では今という時間を生きている生身の人間。その落差が、恋愛という景色の中では刺激にもなる。

孤独で切なくて、誰かを求めずにはおれない寂しい一人の人間。でも深い中になってもそれが何の確証にもならない今の時代。こんなものなのかと、青春を遥かに遠ざかった私は思う。

この中では表題の「夏が僕を抱く」が面白かった。青森の祖父宅で遊んだ三歳上の従姉ミーちゃん。東京で偶然再会し、恋愛関係になる。ミーちゃんはバイト生活で、妻子ある人と不倫中。僕は高卒後、アマチアバンドにいて先の見通しが全くない。

お互いを知り自分の今ある姿を知り、それぞれが一歩前に進めそうなところで話は終わる。きっとミーちゃんは不倫相手と別れ、僕はバンドは趣味として、真剣に仕事探すのではなかろうか。それが大人になることで、社会に組み込まれることにしても、そこから本当の物語が始まるのではないだろうか。


何者かになる前の、自分探しのいろいろが幼馴染と自分の成長の物語としたならば、老人の恋愛模様は何処にあるや?

それはたぶんデイケアや介護施設の中での恋模様。小学生の恋が実らないように、老人の恋もまた実りがたい。わずかに黒井千次のいくつかの小説がそれを活写しているけれど、ほかにはちょっと思い当たらない。

好きな人ができても結婚するわけではなく、お互い子供には反対されるし、茶飲み友達、旅行友達は欲しいけど、介護なんてしたくないし、そこらあたりの葛藤の中には人間臭さがいっぱい詰まっていそう。

老人が恋愛する小説。どなたか書いていただけないでしょうか。

いえいえ、自分のことより相手が大切と思うくらいでないと人を好きにはなれない。歳とると純な心もなくなりがちで、話としてつくるのはとても難しい。難しいから読みたい。介護施設でのじいちゃん同士の恋のさや当て。ばあちゃん同士の嫉妬とやっかみなどなど。読みたい!!

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