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「夜明けあと」 星新一

2013-09-10 | 読書

某サイトから拝借した某大学の正門前。10年以上前のちょうど今の時期、朝この前を通ったら、日帰り旅行に行く学生さんたちが集まっていてとても賑やかだった。

その頃は京都の近代建築が私の中でブーム、この大学の中にもいろいろと珍しい建物があります。建物は無くなっても門はよく残るらしく、農学部のように門が文化財になったのもあります。


明治時代の新聞記事から、作家の心に引っかかったものが、ごく短く引用される。解説はなくて、寸評だけ。それだけのものだけど、選び方にはおのずと作家の関心のありどころが分かるし、急速な近代化の中で人々が右往左往する様子や、今も昔も変わらない人のありようなど、まるでその時代にいて新聞読んでるような臨場感。

人は今より善良で、喜怒哀楽も素直に表し、だけど、自殺したり、人を殺したり平気でする。外国から入ってくる珍しいものには耳目をそばだて、ありもしない流言飛語に惑わされて右往左往。

明治の45年間くらい、日本の国がdrasticに変わった時代もなかったことだろう。

著者が子供の頃は、明治はまだ身近だったそうだけど、私にしてもそう。祖父母は明治生まれ。祖父は傘に蓑もってたし(レインコートより涼しそう)、「お菓子」と言うべきところを「おっくわし」(わは拗音なので正確にはkwaと発音。パソコンではもう表記できない)と言ってたし、あとなんだろ、村にできた小学校のごく早い時期の卒業生。当然卒業写真は和服。

いえいえ、私のことなどどうでもよろしい。

この中では面白いことがいろいろあるけど、

銭湯で犬を洗うのが禁止になったとか、

伊豆の老女が海岸で札束を拾い、新政府発行の紙幣と分からず、御札と思って一枚だけ神棚に供えてあとはまた海へ戻したとか、

料理屋の代金、不足の場合も客の衣服を剥ぐのはやめるとか、

新潟の村でそれまで誰もしなかった神前結婚式が奇妙なことと話題になるとか、

岩崎弥太郎の葬式には料理と酒、6万人分を用意したとか(ほんとかしら?)

今の時代の常識を揺さぶり、硬直した頭の中身を柔らかくしてくれる話題がてんこ盛り。

人間は自分の知っていることが、普通と思い、昔からの伝統と錯覚しがち。でもそうでないんだと、心が自由になった。

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