片貝孝夫の IT最前線 (Biz/Browserの普及をめざして)

Biz/Browserの黎明期からかかわって来ました。Bizを通じて日常を語ります。

Suicaプロジェクトを成功させた男

2010年04月12日 | 感動したこと
越純一郎さんから電話が来た。
「Suicaのシステムを作った人を紹介してあげる」
ついては「Suicaが世界を変える」を読んでおいて欲しいとのことだった。

私はSuicaはソニーがJR東日本に売り込んだのだとばかり思っていた。
そうではないかった。
JRの社員、椎橋章夫氏が、磁気カードに代わる非接触のICカードシステムを研究し、様々な困難を乗り越えて実現したものだった。
失敗は許されない鉄道事業の中で、未知のICカードを採用するまでの話は、手に汗を握る思いで読んだ。
最初は非接触で考えていたが、どうにもうまく行かない。
あるときタッチさせたらどうかという案が出た。
タッチアンドゴーだ。
これで実用化の目処が立ったという。

自律分散システムも自然に考えたという。
銀行のオンラインのようにセンターコンピュータが止まったらすべての銀行業務が停止するように鉄道が麻痺しては困る。どこにトラブルがあっても、そこだけでとどめなければならない。そのために、Suicaのカードに記録し、改札機に記録し、駅のサーバにも記録し、センターコンピュータにも記録するという方式をとった。
センターコンピュータがダウンしても駅単位で3日間は稼働できるシステムだという。

プロジェクトの稟議を通すときの話もすごい。
夢はいくらでも描けるが、実際に、これまでの磁気カードシステムよりも費用がかからないということを証明してみせるくだりがある。
結局自動改札機のメンテナンスコストと使い捨てカードの材料費、印刷代などを合計して、10年後には磁気カードより安くなることを証明して稟議を通した。
業務の省力効果やJRの利用者が増えることや、駅ナカなどでの利用も考えられるが採算計算には入れなかった。
こういうところが凄いと思った。

椎橋氏の語り口は、非常に淡々としていて、Suicaに反対する人たちの発言を、常に当然の発言であると捉えて、問題を一つ一つつぶしていったことだ。
敵を一人もつくらないでプロジェクトを成功させた男ではないかとの感想を持った。

一気に読んでしまいました。
大感動です。