花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

ローマ「ジョヴァンニ・ベッリーニ展」(1)

2008-11-16 07:44:11 | 展覧会
さて、ローマのスクデリエ・デル・クイリナーレ(Le Scuderie del Quirinale)で

9月30日~1月11日まで開催されているのが「ジョヴァンニ・ベッリーニ(Giovanni Bellini)展」である。充実した内容とあまりの素晴らしさに2日間通ってしまった(^^ゞ



大型祭壇画を含めたジャンル別・年代別に展示されたジョヴァンニ・ベッリーニ(1438/1440-1516)の足跡を辿りながら、ヴェネツィア絵画の特色とも言える、自然主義的な光と豊穣な色彩が醸し出す詩情溢れる世界にどっぷりと浸ることができる展覧会だったのだ。 まず、オープニングから《ペーザロ祭壇画(Pala di Pesaro)》+《ピエタ/通称(Imbalsamazione di Cristo)》(ヴァティカン所蔵)の合体がど~んと展示してあり、入場者がおおっ!と驚く仕掛けになっている。さすが合体すると規模の大きさが実感できるのだ。


《ペーザロ祭壇画》:聖パウロ・聖ペトロ・聖ヒエロニムス・聖フランチェスコのいる聖母戴冠 + 《ピエタ》
  
このペーザロ祭壇画はペーザロの領主スルフォッツァ家のために描かれた。祭壇画本体である《聖母の戴冠》は構図的にもかなり興味深い。中央のキリストと聖母が座る玉座の背面が窓となり背景が遠近法的に描かれており、両脇の聖人たちの上に浮かぶ天使たちを含めて空間が窓の空間と呼応して広がりを見せる。その二重空間的な窓から見える風景はベッリーニ的な光に満ち、あの美しい横雲がたなびく。 不思議だったのはキリストと聖母よりも両脇に立つ聖人たちの方が写実的に描かれている点だった。そのため聖人たちの存在感が際立ち、背景にヴェネツィアの光に満ちた風景が無ければ北方絵画的な雰囲気もするなぁと思えたほどで、もしかしてこれは玉座部分の「聖母の戴冠シーンを幻視している聖人たち」を描こうとしたものなのかも?とも考えてしまった(^^; 更に上部の精霊の象徴である鳩の上にはヴァティカンの「ピエタ」が合体している。本体画面の空と呼応するようかの空と雲ではあるが、そこには観る者の心を打つ沈痛な悲しみが溢れている。そう、私が初めてバティカン絵画館に行った時に画面と一体になることのできたピエタは、まさしくこの「ピエタ」だった。夕暮れの光と静かな悲しみが画面の外にまで広がり、まるでその場に居合わせたような気がしたものだった...。 ちなみに、ヴァティカン絵画館の現在は....↓である(^^;



ペーザロ祭壇画を飾る額縁縦両側にニッチ風に描かれた聖人たちも、その影を映す明暗により活き活きとした立体感を見せる。しかし、下のプレデッラの方は聖パオロの回心などの聖書物語が描かれてはいるが、意外にも素朴な画風である。 このペーザロ祭壇画は油彩で描かれており、油彩は当時フランドル派から学んだアントネッロ・ダ・メッシーナのヴェネツィア滞在(1475年ごろ)によって伝えられた技法と言われる。しかし、青色には当時主流のアズライトやラピスラズリだけでなくガラス質のエナメル顔料も使われているようで、ベッリーニが油彩についての先進技術を身につけていたことがわかると言う。

■参考:マリオリーナ・オリヴァーリ著「ジョヴァンニ・ベッリーニ」(東京書籍刊)



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14 コメント

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遠いペーザロから! (Cojico)
2008-11-17 22:16:24
花耀亭さん

おお、なんとすばらしいものをご覧になったのでしょう!遠いペーザロから、彼の傑作の祭壇画が来たのですね!

それまでは多翼祭壇画が主流であった時代に、ピエロ・デッラ・フランチェスカが考え出したパーラ(一枚の祭壇画)を発展させたのがベッリーニです。今まで離れて展示されていたものが、こうやって元の姿で見られるのは、なんと貴重な体験でしょう!

ピエロから受けたと思われる遠近法が、見事にバランスの取れた空間を作り出していますね。中央部分の細部は分からないのですが、聖人達の方が写実的に描かれているのですか・・・実際に見てみたいです。

実はいつか、ジョヴァンニ・ベッリーニを追っかけてペーザロまで行きたいなあと思っていたのです。
ブレラそしてヴェネチアのアカデミア美術館で見た彼の気品のある聖母に魅せられ、またフラーリ教会では、ティツイアーノを差し置いて、横の部屋にあったベッリーニの多翼祭壇画のほうに惹きつけられてしました。凛とした美しさがすばらしい!

初期のマンテーニャの影響ある時代から、光に満ちた自然を取り入れまでの彼の変遷を1つの美術展で見ることができたなんて、なんてすばらしい体験でしょう!
花耀亭さんの旅行の決断は、見事だと思います!

Cojicoさん (花耀亭)
2008-11-19 01:53:22
そーなんです、ペーザロから来ていたのですよ~!
で、さすがCojicoさんです!勉強不足の私はパーラがピエロ・デッラ・フランチェスカ由来だとは知りませんでした(汗)。そして、おっしゃる通り確かに構図はシンメトリーを意識した遠近法により構成されていてますよね。本当にこの《ペーザロ祭壇画》合体を見れただけでもローマに行った甲斐があったと思いました(^^ゞ
Cojicoさんが《フラーリ祭壇画》で魅了されたのは私にも了解されます。ティツィアーノの上昇する聖母と対照的に、玉座に凛とした佇まいの聖母には神々しいオーラがありました。

今回展示された祭壇画はペーザロだけでなく、後からも触れたいと思いますが、ムラーノ島サン・ピエトロ・マルティーレ聖堂《バルバリーゴ祭壇画》も、ヴィチェンツァのサンタ・コロンナ《キリストの洗礼》(現在はPalazzo Chiericati?)も来ていたのですよ~☆
Cojicoさん、もしご都合がつけばぜひベッリーニ漬けを味わってくださいませ(^^;;;
UK-Japan 2008 WEBサイトへのご参加依頼 (UK-Japan 2008 WEBサイト運営事務局)
2008-11-21 03:02:26
こちらは、UK-Japan 2008公式WEBサイトの運営を行うUK-Japan 2008 WEBサイト運営
事務局です。
以前お声掛けさせていただきましたブロガーさんへ、再度改めてご連絡させていただいております。

駐日英国大使館およびブリティッシュ・カウンシルは日英外交関係150年となる今年2008年、「芸術・科学・クリエイティブ。新しいUKを体感できる一年。UK-Japan 2008」を開催しています。
http://www.ukjapan2008.jp/

現在このUK-Japan 2008 公式WEBサイトに、サポーターとしてご参加いただける公認ブロガー様をスカウトしております。
ぜひ、UK-Japan 2008にサポーターとしてご参加いただけませんでしょうか。

公認ブロガーとしてご登録頂くと、UK-Japan 2008 WEBサイト運営事務局より、各公認イベントへの特別招待やチケットプレゼントをご案内しています。
(応募者多数の場合は抽選となります)

このようにさまざまな特典もあるUK-Japan 2008に、ぜひ公認ブロガーとしてご参加ください!
以下にご連絡をいただければ、詳細をご案内させていただきます。
UK-Japan 2008 WEBサイト運営事務局
blog@ukjapan2008.jp

※UK-Japan 2008 WEBサイト運営事務局は、株式会社読売広告社および株式会社ライトアップで構成されています。駐日英国大使館とブリティッシュ・カウンシルで構成されるUK-Japan 2008実行委員会より委託され、UK-Japan 2008公式サイト及びBLOGの運営を行っております。

#突然コメントに書込みを致しましたが、こちらのブログにふさわしくないようでしたら、お手数ですが削除をお願い致します。
是非ミラノへ (レイコ)
2008-11-24 02:37:40
はじめまして、ミラノ在住のレイコです。
今、個人所有のカラヴァッジョの「サウロの回心」が一般公開されています。それも無料なため長蛇の列ですが、素晴らしい。
2分間しかみる時間はありませんが、また並べばいいのです。
是非お時間があればご覧ください。
このさき一般公開はされないのでは、と言われています。
http://wahei.blog-niigata.net/a_tavola/2008/11/caravaggio-a-mi.htmlにインフォメーションを載せました。ブログの宣伝ではありませんので、もし意にそぐわなければ削除してくださいね。
その一枚の絵だけが展示されてますが、他のかラヴァジョの絵をご存知の方なら必見です。
UK-Japan 2008 WEBサイト運営事務局さん (花耀亭)
2008-11-24 04:01:18
お声をかけていただき、ありがとうございます。
運営事務局さんのブログを拝見して、「ターナー賞展」や「ミレイ展」も観たのですよ。素晴らしい企画をありがとうございます。
後ほどメールさせていただきますね。(前回は急に忙しくなり、大変失礼いたしました(^^;;;)
レイコさん (花耀亭)
2008-11-24 04:33:27
初めまして、ようこそです!
で、レイコさん、貴重な情報をありがとうございます!!
ああ、本当にとってもとっても観たいです。でも、連休を取ったばかりで...む、無理です~(号泣!)

オデスカルキ=バルビ・コレクションの「聖パウロの回心」は画像からでもその素晴らしさが伝わってきます。ミラノ在住のレイコさんが羨ましいです!!こうなったらレイコさんの詳細なご感想を期待してしまいますよ~☆
ハッピーバースデー! (oki)
2008-11-24 22:12:14
Juneさんこんばんは。
昨日はお誕生日でしたね、おめでとう!
僕はすっかり忘れて寝ていました。
Juneさんは何をして過ごされましたか?
僕は昨日の借りをかえすべく、今日は国立近代美術館行きましたが、ガラガラ。
丸紅コレクションが入りました、損保ジャパンのやつ。
ちかいうち送ります。
また素敵な一年を過ごされることをお祈りし、来年もお互い
ハッピーバースデーといえるようにしたいですね!
okiさん (花耀亭)
2008-11-25 01:39:36
バースデープレゼントのチケット、ありがとうございました!!
実はこの誕生日連休は風邪がぶり返して寝たり起きたりでした(^^;;。でも、okiさんのブログを拝見して、五島美術館の古更紗展だけは観ることができました。素敵な展覧会を紹介していただきありがとうございました!

で、okiさんも、お誕生日おめでとうございます!
お祝いにスイーツお茶会しなくちゃいけませんね(^_-)-☆ またひとつ歳を重ねましたが、お互い楽しく美術館賞のできる1年にしたいですね♪
カラヴァッジョ展 (レイコ)
2008-12-18 16:50:18
こんにちは。
先日、例のサウロの回心の件では掲示板の方に投稿させていただきました。とりとめも無い意見をだらだらと、、、です。
私は専門家ではないので読み流してくださいね。
ミラノでの展示はあまりにも好評だったため12月20日まで延長されました。

レイコさん (花耀亭)
2008-12-21 05:33:48
こんばんは。レスが遅れて申し訳ありませんでした!
実はサイトの方の掲示板は不具合が多くて放置状態だったのですが、レイコさんの書き込みで機能していることがわかりました。あちらにレスさせていただきました。気が付かず本当にごめんなさいです<m(__)m>

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