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花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

国立西洋美術館「西洋絵画、どこから見るか?」展サクッと感想(1)

2025-03-16 22:35:35 | 展覧会

国立西洋美術館「西洋絵画、どこから見るか」展を観た感想を、とりあえずサクッと書きたい

私的に好もしかったのは、単なる「サンディエゴ美術館展」ではなく、国立西洋美術館作品も合わせて並べることにより、時代的にもテーマ的にも一層充実した内容になっていたことで、「Emulation and Admiration」が了解できたことである。それに、展示作品の写真撮影OKもポイント高し

今回の展覧会では、スペイン絵画充実のサンディエゴ美術館作品の質の高さはもちろんだが、意外や(ごめん!)西美作品の質の高さにもあらためて気付かされたし、並べ方の妙で隣り合う作品同士から新たな意味が立ち上がる楽しさを感じることができたのも良かった。展覧会ってそういうものだと思うしね。

私的に特に注目していたのは、当然と言うべきかルネサンス・バロック絵画であり、オープニングを飾ったのはジョット《父なる神と聖人たち》であった。《バロンチェッリ祭壇画》はジョット工房作説もあるが、プロト・ルネサンス作品として貴重であることに変わりないと思う。(会場表記もジョット)

ジョット《父なる神と聖人たち》(1328-35年頃)サンディエゴ美術館

で、会場最後を飾っていたのがスペイン近代絵画を代表するホアキン・ソローリャ作品である。

ホアキン・ソローリャ《ラ・グランハのマリア》(1907年)サンディエゴ美術館

マドリードのロイヤル・コレクション・ギャラリーで「ソローリャ展」をみたばかりだったので、私的に何とも嬉しかった

※ご参考:ロイヤル・コレクション・ギャラリー「ソローリャ展」動画

https://www.youtube.com/watch?v=-lSB5r6PbKU

で、それ以上に嬉しかったのは、常設展会場に展示された「追加出品作品」の5作品で、特にサンディエゴ美術館のアグィッソーラ作品と西美のフォンターナ作品、ガリツィア作品の並びは、当時のロンバルディアとエミリア・ロマーニャ出身の女性画家たちの活躍が偲べるココロニクイ並びであった。個人的に、ガリツィア作品購入なら静物画が良かったのに、と思っていたが、この3枚並びであれば仕方がないと思ったしね

ソフォニスバ・アングィッソーラ《スペイン王子の肖像》(1573年)サンデェゴ美術館

ラヴィニア・フォンターナ《アントニエッタ・ゴンザレスの肖像》(1595年?)国立西洋美術館

フェーデ・ガリツィア《ホロフェルネスの首を持つユディット》(1622年頃)国立西洋美術館

ということで、サクッと感想(1)にしたのは、追々に個別作品を取り上げたいと思ったからである。だって、ジョルジョーネやサンチェス・コターン作品など、もっと詳しく語りたいしね



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6 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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常設展示室 (むろさん)
2025-03-18 00:20:51
先日私も上野へ行く用事があったので、西洋美術館に短時間寄って常設展示だけ見てきました。特別展の方はまだ資料の翻訳が終わっていないので、近いうちに行く予定です。
まずコズメ・トゥーラの聖ゲオルギウス。コズメ・トゥーラでこのテーマと言えばまず思い出すのは以前フェラーラの大聖堂付属美術館で見た「オルガン扉」の受胎告知と聖ゲオルギウス。こちらはコズメ・トゥーラらしい奇怪な顔の聖ゲオルギウスと王女なので、サンディエゴ美術館の絵が美男子なのは何故?と思っていましたが、図録解説を読むと、ロヴェレッラ祭壇画の注文の数年前に亡くなった同家の若者をモデルにしたと書かれていたので納得です。

私がコズメ・トゥーラ単独の資料で持っているのはRizzoliカタログ(伊語版1974)のみで、この中の解説では、「1929年まではマンテーニャの作品とされていた。ボーデ(1929)はこの作品をコッサの作品であると主張。ハルツシュ(1940)によってトゥーラと報告され、ロンギによってロヴェレッラ多翼祭壇画の左区画に唯一残された部分であると特定された。髪の毛の部分は完全に描き直された。」とあります。この本のカラー図版の中でもサンディエゴの聖ゲオルギウスは単独で掲載されているので、コズメ・トゥーラの作品中でもそれなりの評価をされている絵だと思います。なお、ヴァザーリの芸術家列伝では、フェラーラ派の代表的な3人のうち、独立して取り上げられているのはエルコレ・デ・ロベルティだけで、コズメ・トゥーラとフランチェスコ・デル・コッサは取り上げられていません。芸術家列伝中のコズメ・トゥーラの記事は、その師匠とされるガラッソ・ガラッシ伝とガラッソ・ガラッシの友人とされるニッコロ・アレティーノ伝にわずかに書かれている程度です(いずれも中公美版列伝の第2巻収録)。フィレンツェやローマではフェラーラ派の絵は重視されていなかったということですね。

次に2024年の新規購入作品。私はビアージョ・ダントニオ・トゥッチの作品が15世紀後半のフィレンツェ派ということで、どんな絵なのか注目していました。(ZERIカタログでは下記。itをjpに変えていますので、itに戻してください。)
https://catalogo.fondazionezeri.unibo.jp/scheda/opera/15388/

ビアージョ・ダントニオ・トゥッチもヴァザーリの芸術家列伝に独立して取り上げられていない画家であり、ヴェロッキョ工房にいた周辺画家の一人とされています。ヴェロッキョ伝にヴェロッキョ作として書かれているフィレンツェのサン・ドメニコ女子修道院の祭壇画が現在ブダペスト国立美術館にある聖母子と諸聖人であると考えられ、D.コーヴィのヴェロッキョ研究書(2005年)ではTHE BUDAPEST ALTARPIECEの一項目が取り上げられていて、ビアージョ・ダントニオ作とされています(ZERIカタログでは下記。jpをitに。)
https://catalogo.fondazionezeri.unibo.jp/scheda/opera/15082/
確かにこの絵はヴェロッキョに近いものを感じますが、今回西美が購入した絵はこれと比べるとかなり手が落ちる(というか線が硬すぎる)と感じました(購入価格については後記)。

もう一つ注目していたのがフェーデ・ガリツィアのユディトです。西美では事前に写真を公表していなかったので、ZERIカタログその他でいろいろ予想していましたが、結果はZERIカタログには掲載されていない、下記URLの作品でした。
https://www.robilantvoena.com/art-work/judith-with-the-head-of-holofernes-lCY?exhibition=ahead-her-time
カラヴァッジョの少し後の1620年頃の絵として、なかなか良い作品だと感じました。ビアージョ・ダントニオの絵との差は、調達金額7,400万と5億6,000万の差を表しているのかもしれませんね。なお、ラヴィニア・フォンターナ作アントニエッタ・ゴンザレスの肖像は4億4,000万。
https://procurement3.blog.jp/archives/88883311.html#google_vignette
https://procurement5.blog.jp/archives/45465063.html#google_vignette
https://procurement4.blog.jp/archives/45465062.html#google_vignette
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むろさんさん (花耀亭)
2025-03-20 02:36:39
「追加出品作品」常設展示だけでもかなり楽しめますよね(*^^*)

>フィレンツェやローマではフェラーラ派の絵は重視されていなかった
ルネサンスは各地方の独自展開なので、確かにフェッラーラ派はフィレンツェやローマではあまり認知されていなかったかもしれませんね。というか、ヴァザーリなんてある意味フィレンツェ至上主義ですし(^^;。まぁ、今ではフェッラーラ派と言えばコスメ・トゥーラの名が挙がりますが...。

で、西美も意欲的に新収蔵作品購入していますよね(^^)。ビアージョ・ダントニオ・トゥッチ作品はガラス瓶と花の描写が写実的で、解説にフランドル美術の影響が示唆されていて、フィレンツェのフランドル美術受容の傾向になるほどと思いました。

>フェーデ・ガリツィアのユディト
ガリツィアは同テーマで数ヴァージョン描いてますが、私的にはロンバルデイア静物画系譜作品が望ましかったです(^^ゞ
返信する
ビアージョ・ダントニオとフェーデ・ガリツィア 追記 (むろさん)
2025-03-20 12:44:41
私がビアージョ・ダントニオ・トゥッチにこだわるのは、ヴェロッキオ工房とボッティチェリに関連するためです。この20年ぐらいで来日した作品として、ウフィツィ美術館所蔵の「正義の寓意」と「信仰の寓意の素描」の2点があり、ZERIカタログでは下記URLです(jpをitに)。
https://catalogo.fondazionezeri.unibo.jp/scheda/opera/15380/Anonimo%20pesellinesco%20sec.%20XV%2C%20Allegoria%20della%20Giustizia
https://catalogo.fondazionezeri.unibo.jp/scheda/opera/110135/Tucci%20Biagio%20di%20Antonio%2C%20Allegoria%20della%20Fede

正義の寓意は2014年都美のウフィツィ美術館展に出品され、図録ではビアージョ・ダントニオ・トゥッチの作となっていますが、ZERIカタログでは氏名不詳のペゼリーノ風画家となっていて、その他画家への帰属説の欄にアントニオ・ポライゥオーロとビアージョ・ダントニオ・トゥッチの名も書かれています。信仰の寓意の素描の方は1991年世田谷美術館(及び名古屋・京都)のフィレンツェ・ルネサンス 芸術と修復展及び2016年都美ボッティチェリ展の2回来ていて、1991年の図録ではボッティチェリ(帰属)、2016年の図録ではヴェロッキオ(帰属)と変化し、ZERIカタログではビアージョ・ダントニオ・トゥッチ作、その他画家への帰属欄にボッティチェリの名が出ています。2016年ボッティチェリ展図録解説には「作者の帰属は錯綜している」として、ビアージョ・ダントニオへ帰属する説があることも書かれています。

この2作品を見てすぐに思うのは、ウフィツィ美術館にあるボッティチェリの公的なデビュー作フォルテッツア(剛毅、堅忍の徳)及びこれと一連のポライゥオーロ作の6美徳像です。フォルテッツアはボッティチェリがヴェロッキオ工房の協力者となった直後の1470年作であり、年代の明確な初期作品として有名なもので、上記2点のうち素描の方はボッティチェリ本人かヴェロッキオの作としてもいいような出来のいいものですが、正義の寓意の方はボッティチェリの影響を受けた別人の作という感じがします。ZERIカタログでペゼリーノ風としている理由はよく分りませんが、ペゼリーノはフィリッポ・リッピの後継者であり、ボッティチェリと近い部分があるのかもしれません。

また、ビアージョ・ダントニオについては、ピストイアにあるロレンツォ・ディ・クレディ作のピストイア祭壇画とフランドル絵画の関係を扱った江藤匠氏の論考(美術史155号、2003年:貴ブログ2022年7/5で言及:下記URL)でも数点のビアージョ作品を取り上げ、特に上記コメントで書いたブダペスト祭壇画は「ピストイア祭壇画の直接的な前段階をなす作例」としています。
https://blog.goo.ne.jp/kal1123/e/f2897060a0393285c680f556cd60b38c

以上より感じたのは、ビアージョ・ダントニオ・トゥッチという画家はヴェロッキオの周辺画家であっても、ヴェロッキオやボッティチェリ(の初期作品)を考える時に無視できない存在であり、今回西美が入手した作品はあまり出来が良い方ではないと思うが、これを機会に今後もこの画家には注意していくつもりです。

次にフェーデ・ガリツィアの件。上記フェーデ・ガリツィアのユディトが出ているサイトは、2023年末~24年初めにニューヨークで開催された展覧会の紹介です。そして、この後に売却されたようで、同サイトのNotable Salesには2024.9.20付け記事で「東京の国立西洋美術館が購入」のニュースが出ていて、内容をクリックすると「フェーデ・ガリツィアの傑作。これまで知られていなかった絵で、画家の成熟期の独創性と巧妙さを物語る」とあります。下記URL。
https://www.robilantvoena.com/notable-sales

事前に調べていた「ホロフェルネスの首を持つユディト」は、購入された絵の他に下記の4点です(ZERIカタログの2件はjpをitに)。最後のwikiでは、リングリング美術館の絵の最後に出ている「その他のバージョン」を拡大してご覧ください(所有者は不明)。この絵とZERIカタログの1番目(ミラノ個人蔵)はよく似ていますが、拡大すると装飾品や指輪が異なるようです。
https://catalogo.fondazionezeri.unibo.jp/scheda/opera/47485/
https://catalogo.fondazionezeri.unibo.jp/scheda/opera/47504/
https://emuseum.ringling.org/objects/24553/judith-with-the-head-of-holofernes#
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Judith_with_the_head_of_Holofernes.jpg

花耀亭さんも上記コメントで「同テーマで数ヴァージョン」と書かれていますが、上記Notable Salesの記事でも「(この主題は)画家が好んだ題材」となっていて、今回の西美購入作品はその中でもなかなか出来が良い作品ですね。5点中、西美の絵だけが「向かって右を向いている」「胸をはだけている」「侍女が老婆ではない」の3つの特徴があり、これが購入できて良かったと思います。
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むろさんさん (花耀亭)
2025-03-24 01:41:10
なるほど、ビアージョ・ダントニオ・トゥッチはヴェロッキオ工房でボッティチェッリと重なる時期があったのかもしれませんね。むろさんさんが注目する理由がよくわかりました(^^)
フェーデ・ガリツィア《ホロフェルネスの首を持つユディト》は良い作品だと私も思います。でも、しつこいですが(汗)静物画作品も良いのですよ。ガルゾーニへの影響もあるのかなぁと思いますし。
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いってきました (山科)
2025-05-03 13:07:54
ようやく、いけました。そこそこの混雑でしたが、行く価値のある展覧会でした。
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山科さん (花耀亭)
2025-05-05 02:03:02
おお、東京でご覧になったのですね。おっしゃる通り、行く価値のある展覧会でしたね(^^)。嬉しくも久々に充実した内容の展覧会でした。
で、山科さんのブログでご感想を拝読いたし、なるほどでした。ご紹介のクリヴェッリのサンディエゴ美術館動画も興味深く、勉強にもなりました。クリヴェッリ作品は特に金地背景の繊細な浮彫風文様が美しく目が惹かれてしまいました💛。
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