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花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

パノフスキー『ルネサンスの春』を読む。

2015-01-05 23:52:26 | 読書
お正月は本をまとめ読みするのに最適なので、積読(つんどく)状態で溜まっていた本を片付けることにした。中でも読み難かったアーウィン・パノフスキー著『ルネサンスの春』(原題:Renaissance and Renascences in Western Art)をようやく読み終えた。読んだからと言って、ちゃんと理解できたわけではないし、大体わかったという程度なのがド素人的に哀しい(^^;;;



『ルネサンスの春』を読み始めたのは、授業で薦められたこともあるが、一昨年のゲッティ美術館「Florence at the Dawn of the Renaissance」展を観て以来、ルネサンスとは何なのだ?というモヤモヤが頭に渦巻いていたからだ。(参照:一昨年のブログ

もちろんモヤモヤ解消のため、ルネサンス関係の本を幾つか読んでみたりはしたのだが、残念ながらどうも私のモヤモヤのツボからズレていて解決しなかった。そして、ようやく巡り合ったのがこの『ルネサンスの春』だった。

嬉しくも、読んでスッキリしたことが2点ある。ひとつは、古典古代の文化がルネサンスまで全く途絶えていたわけではなく、波のように、カロリング・ルネサンスや12世紀の早期ルネサンスがあったこと。もうひとつは、ジョット後の14世紀後半になると、フィレンツェとシエナでは根本的な「様式と嗜好の変化」があり、古典古代の様式からも離れて行ったということ。私的に14世紀後半はジョッテスキよりも国際ゴシックが受けたということなんじゃないかと勝手に理解し手打ちしたのだ。

パノフスキーは言う。「そこで、14世紀末には、イタリア美術は北方美術とほとんど同じくらい根本的に、古代から隔絶していた。そして、真のルネサンスは、いわば零から誕生したのである。」

まぁ、なんて明快に言ってくれるのだろう(笑)。パノフスキーの時代から随分経つから、現代の通説では違う解釈になっている可能性がある。でも、ジョット以後のジョッテスキ作品にがっかりした私は、これでかなりスッキリしたのだった。お粗末(^^;;;

『もっと知りたいカラヴァッジョ』

2009-12-24 01:07:56 | 読書
ゲストのアリスさんやokiさんから情報を頂いた『もっと知りたいカラヴァッジョ』(宮下規久朗・著/東京美術・刊)を読んだ。



今、日本で開催されている「ボルゲーゼ美術館展」でカラヴァッジョに興味を持った人々に向けての入門書として最適だし、もっとカラヴァッジョ作品を観たいと思っている人々にも親切な内容となっている。

作品やカラヴァッジョの人物像だけでなく、歴史的背景や、カラヴァッジョをめぐる人物相関図もわかりやすく、来年2月公開の映画「カラヴァッジョ」も事前に読んでおけば更に楽しめるはずだ。

多分『カラヴァッジョ鑑』や『カラヴァッジョ-聖性とヴィジョン』よりは読みやすいだろうし、読者には「もっと知りたい」から「もっと観たい」へと進化し、ぜひ『カラヴァッジョへの旅』へ…と言うのが宮下先生の思惑かも、なぁんて思ってしまった(邪推です)(^^;;;

で、私的には…う~ん、「もっと、もっと知りたい」気分だった。昨今、カラヴァッジョのサインも発見(?)されたようだし、没後400年記念イベントに向けて新しい研究成果も色々出ているようだし、それらもまとめて紹介して頂きたかったなぁ…。

「San Pietro penitente con il gallo」

2006-11-24 01:19:24 | 読書
CARAVAGGIOの真作話題で、ついでに「San Pietro penitente con il gallo 聖ペテロの悔悛と鶏」(個人蔵)を紹介しよう。これもデニス・マーン卿がCARAVAGGIO真作とした作品だ。私的にはジョルジュ・ド・ラ・トゥールの同題作品に構図がそっくりで(向きは反対だけど)ちょっと驚いたものだった。





去年、ミラノの「CARAVAGGIOとヨーロッパ展」で、この新作発見の詳細をまとめた本「CARAVAGGIO: San Pietro penitente con il gallo: Il restauro」を入手した。果たしてその後、研究者の間で真作と認められたかどうかはわからない。

う~ん、もしかして、こちらもローマで公開するのだろうか??

「西洋絵画の巨匠(11) カラヴァッジョ」

2006-11-22 02:54:55 | 読書
会社の書籍購買に依頼していた宮下規久朗・著「西洋絵画の巨匠 (11)カラヴァッジョ」(小学館)が届いた。





読み始めたばかりだが、2001年に真作披露された「ジャンバティスタ・マリーノの肖像」を初めて知ることができたし、CARAVAGGIOを取り巻く時代や画家たちも取り上げ、CARAVAGGIO作品のある都市をも紹介するという、単なる画集にとどまらない意欲的な内容構成だ。

特に、作品の制作年に西暦と日本暦を併記するなど、日本とCARAVAGGIOの関係にもスポットを当てており、仙台出身者としては支倉常長とパウルス5世やシピオーネ・ボルゲーゼとの関連をも指摘してもらえたのが嬉しい。以前、拙サイトの掲示板でも触れたことがあるが、田中英道・著「支倉六右衛門と西欧使節」(丸善ライブラリー)等を読むにつけ、ボルゲーゼ家のCARAVAGGIO作品を支倉一行が観た可能性は大きいと思うのだ。

そして、なによりもCARAVAGGIO追っかけを自認する者として一番頷いたのは、「カラヴァッジョ芸術はあくまで現地で体験してこそ真価を発揮する」というくだりであった。薄暗い教会の礼拝堂でコインを入れ、照明が点った瞬間の畏怖に似た感動、現役の祭壇画として礼拝の場で観る聖なる輝き、直射日光を板切れで塞いだ窓のこぼれ陽を浴びてそこにある存在感…私のCARAVAGGIO体験もページをめくりながら蘇える。私には旅を思い出す手引きでもあり、これからの旅へ誘う手引きともなりそうだ。

さて、今週はじっくりとこの新しいCARAVAGGIO画集に取り組もうと思っている。

読書編

2005-03-06 03:56:21 | 読書
「ラ・トゥール展」を花耀亭的(ちょっとヘソ曲がり?)に記念して、ファラデー著「ロウソクの科学」(角川文庫)を読み始めました。こんな素晴らしい本が本体価格350円だなんて素敵過ぎます!
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4043127014/250-1106704-8113858

一緒にジュリア・クリステヴァ著「斬首の光景」(みすす書房)も購入しました。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4622070855/qid%3D1110045818/250-1106704-8113858
こちちらは良く見られるフランス本の難解な日本語訳と違い、わかりやすい日本語訳なので読むのが楽しみです。一応サックリと目を通したのですが、CARAVAGGIO作品ではボルゲーゼの「ゴリアテの首を持つダヴィデ」が扱われています。全体として素描作品が中心となっているようです。

わかりやすいと言えばエルンスト・H・ゴンブリッチ著「若い読者のための世界史」(中央公論美術出版)ですが、座りながらの立ち読み(?)をしてしまいました(^^;
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4805504765/qid=1110045342/sr=1-1/ref=sr_1_10_1/250-1106704-8113858
こちらも心に染みる名著ですね~☆ ゴンブリッチのファンになりましたです。できたら美術史書も読みたいのですが、入手が難しそうですね(涙)。RUNさんの貴重なゴンブリッチ情報に感謝でございます!

文体練習

2005-02-20 03:50:28 | 読書
「地下鉄のザジ」の作者レーモン・クノーの「文体練習」を読み始めた。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4255960291/ref=pd_sr_ec_ir_b/249-6581990-2677910
1頁に収まるような思わず笑ってしまうようなつまらない内容なのだが、それを99通りに書き換えたところがこの本・クノーの凄さである。すなわち99の文体だ。

私の自説は文体=人格である。ということは、クノーは99の多重人格を演じてみせたことになる。その99の人格が1つのストーリーを違った視点と主観と文体で各々語る。フランス人らしく時に辛らつで、時にウィットに富み、更にばかばかしく、きどったり、ふざけたり、戯曲風だったり...もう、ニヤリと笑うしかない。

まぁ、思うに、真実だって相対的なものだし、自分にとっての真実と、他者にとっての真実とが違っていることなんて多々あることだ。大体1+1=2だって数学的には真実なのかもしれないが、Rock的には違うし(笑)。ミック・ジャガー+エリック・クラプトンが組めば凄い曲ができるか...と言えば、倍以上の素晴らしいものができるかもしれないし、1.5いや1以下のつまらないものができるかもしれない。ああ、つまらない例をだすのが好きな花耀亭なのでお許しあれ。

ということで、クノーの本は頭をシャッフルしてくれる、真面目にも斜めにも読める本なのである。日本語に翻訳した訳者も本当に大変だったと思うけどね(^^;