花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

エッセイ漫画「東京藝術大学受験ものがたり」を読んだ。

2021-04-04 15:28:50 | 読書

ネットで、あららぎ菜名さんのエッセイ漫画「東京藝術大学受験ものがたり」(全34話)を読んだ。

https://note.com/nana_23/n/n1072e1974463

どうやら、今年3月に本にもなったようだ。

内容は、感動の実話物語で、もう、読みながらウルウルしてしまった。藝大受験、特に多浪生の大変さを知ることになったし、その若さや情熱が羨ましくもあり、また、苦労する娘を応援するお父さんも良かったし

特に、あららぎさんが自然光の美しさに目覚めるところなど、きっとヤン・ファン・エイクも同じだったのではないだろうか?と想ったり、美術における光と影の重要性も再認識させてもらったり、美術ど素人の私にも勉強になること多々だった。                                                                                            

実は、藝大受験に失敗して私立の美大に行った友人もいたので、藝大受験の厳しさはそれとなく知っていた。「すいどーばた」の名前までね。このエッセイ漫画で、多浪までして目指す「東京藝術大学」(国立唯一の芸術大学)の凄さと魅力も改めて知ったような気がする。

リアル藝大受験を見事合格した学生さんたち、頑張ってね!!その活躍する未来に想いを馳せてしまうよ。


塩野七生「小説 イタリア・ルネサンス4 再び、ヴェネツィア」を読んだ。

2021-01-24 19:08:21 | 読書

マルコ・ダンドロが装いも新たにヴェネツィアに帰って来た

朝日新聞社から随分昔に出版された塩野七生によるヴェネツィア・フィレンツェ・ローマの三都を主題にした殺人事件シリーズは既に読んでいたのだが、今回、新潮文庫から新たに「小説 イタリア・ルネサンス1~3」として改題・改装出版されたのまでは良いのだが、なんと!驚いたことに、書下ろし最新作として「小説 イタリア・ルネサンス4 再び、ヴェネツィア」まで出版されたのだ

内容は、あのマルコ・ダンドロが40代でヴェネツィア共和国に戻り、ノービレ(貴族)として政治中枢で働きながらの物語であり、ヴェネツィア(&神聖同盟)とトルコとのレパントの海戦を後半ハイライトとし、マルコの死に至るまでのルネサンス期ヴェネツィアの物語である。ある意味「海の都の物語」や「レパントの海戦」と重なる部分はあるものの、ヴェネツィア共和国栄光の時代の残照がマルコの「佇まいの美しさ(gentile aspetto)」を際立たせているように思えた。

今回、特に注目に値するのは、文庫に綴じ込まれたカラー口絵であり、小説内にも登場する当時のヴェネツィア派絵画が興を呼ぶ。ティツィアーノ、ヴェロネーゼ、ティントレット、そして何よりも意外だったのは、マルコ・ダンドロが青年期にロレンツォ・ロットに肖像画を描かせているのだから!! 故に、表紙がロットの《若い紳士の肖像》(通称:Il Giovane malato)というのも頷ける

ロレンツォ・ロット《若い紳士の肖像》(1530年頃)アカデミア美術館

塩野七生さんって、もしかしてロレンツォ・ロット好きなのかな??


佐藤猛 著『百年戦争』超サクッと感想(^^;

2020-10-16 10:43:53 | 読書

佐藤猛 著『百年戦争』(中公新書)を読んだ感想を書いていなかったので、超サクッと

読もうと思ったのは、ブルゴーニュ公国を百年戦争の中で俯瞰的に見てみたいという興味だったが、なんのなんの!イングランドとフランスという国家意識もまだ混沌としていた時代から、近代的国家意識の形成に至る、百年を超える両国の思惑と領地をめぐる戦いの歴史の複雑さに、もう読みながらヘトヘトになってしまった。

「百年戦争は、イングランド王が主従関係を切断しようとして始まった。その後、フランス貴族のさまざまな思惑に引きずられながら拡大し、複雑化した。そして、フランスの軍事力が勝ったからではなく、フランスの国家が統一されることによって終結した。」(P269)

フランスの白百合貴族であるブルゴーニュ公家の思惑が色々と事を複雑にしたのも確かで、アラス会議でフランス王家と手打ちした後でも、薔薇戦争中のヨーク家と手を組んだり(シャルル・ル・テメレールとマーガレット・オブ・ヨークの結婚ね)、結局シャルルがナンシーで戦死した後に本貫の地ブルゴーニュを含めフランス王国内の領地を失うのだから…。

そう言えば、昔見た映画「冬のライオン」の主人公はアンジュー伯ヘンリー2世プランタジネットと王妃アキテーヌのエレオノールだったが、それに息子たちとフランス王フィリップ2世が絡む話で、舞台はシノン城だった。

ヘンリー2世がフランス王国内にフランス国王よりも広大な領土を所有していた時代(アンジュー帝国!)の話であり、その息子たちがその領土を失うのは時間の問題だったのだぁと、今にして思う。


『中世の秋』(2018年ライデン大学出版)英語版が到着!

2020-07-17 22:27:35 | 読書

今年1月、ヨハン・ホイジンガ『中世の秋』(2018年ライデン大学出版)の英語版をamazonでぽちっとした。

https://blog.goo.ne.jp/kal1123/e/6cdf22ab2275c0ee7680dfdbb569a2c3

5月配送予定がコロナの影響か(?)遅れに遅れ、ようやく本日到着した。

中身はユトレヒトの書店でサクッと目を通していたが、やはり挿絵図像が豊富で(それも全カラー♪)、文章よりもカラー図像を眺めているだけで楽しい。(一応『中世の秋』は堀越孝一訳で読んでいる)

ご存知寄りの肖像画や、もちろん宗教画&その他画像多々が並んだり....。目を通しながら、「Van Eyck展」のバーチャルツァーサイトや動画と共に、どっぷりと中世の秋に浸ることができそうだ。


積読の初夏?(^^;

2020-05-28 01:14:09 | 読書

緊急事態宣言が全面解除になっても、第2波が怖いので今まで通り自粛は継続予定だ。行政は当てにならないから自衛するしかないでしょ。(運悪く防ぎきれない場合もあるかもしれないけど...)

さて、先にも触れたが、実は書店に取り寄せ依頼していた本は...石鍋真澄・著『教皇たちのローマ』(平凡社)と宮下規久朗・著『カラヴァッジョ《聖マタイの召命》』(ちくまプリマー新書)だった。

でも、今読んでいるのは...佐藤猛・著『百年戦争』(中公新書)で...

新書なのだが、中身が濃すぎてなかなか先に進まない。やっと第3章に突入、1364年フランス王ジャン2世が再度渡英し客死したところだ。ちなみに、ヴァロア朝フランス王ジャン2世はブルゴーニュ公フィリップ・ル・アルディのパパである

Girard d'Orléansに帰属《フランス王ジャン2世の肖像》(1350年頃)ルーヴル美術館

ということで、自粛継続は「読書の初夏」ではなく、なにやら「積読の初夏」になりそうでマズイ


「芸術新潮」6月号を立ち読みした(^^;

2020-05-26 11:12:20 | 読書

取り寄せ依頼していた本を書店で購入しついでに、「芸術新潮」6月号をサクッと立ち読みした

https://www.shinchosha.co.jp/geishin/

緊急寄稿シリーズ「新型コロナウィルスと美術の現場」の中で、国立西洋美術館「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」監修の川瀬佑介氏が、コロナ禍の下での苦しい状況を書いていた。特に、将来的にも、疫病流行の可能性を含めて、国内外からの作品借り出しが必要な企画展の難しさ(移動や経費面も含め)は切実で、大規模な西洋古典美術の企画展などは困難極まりないものとなりそうだ。一美術ファンとしても暗澹たる思いになってしまう。

で、別記事のなかで、コロナ禍のローマ「ラファエッロ展」について言及していたが、「ファン・エイク展」もだが、途中で中断・中止状態になってしまった展覧会も多い。

記事には扱われていないが、私的に注目していたミラノ「ジョルジュ・ド・ラトゥール展」も影響を受けた展覧会のひとつだ。サイトを確認すると、パララッツォ・レアーレは5月28日から再開し、会期も、2020年2月7日~9月27日と延長になっている。

Palazzo Reale「Georges de La Tour - L'Europa della luce」展

https://www.palazzorealemilano.it/en/mostre/leuropa-della-luce

2016年のプラド美術館「ラ・トゥール展」を観ていたので、多分あれ以上の充実した作品展示は望めないだろうという予想もあったが、今回の展覧会はホントホルストやビゴーなどの欧州テネブリズムとラ・トゥールとの関わりに焦点を当てており、興味深い展覧会であるのは確かである。

実は、私的に注目したのは企画者側のラインナップであった。

Curated by Prof.ssa Francesca Cappelletti advisory committee Pierre Rosenberg (a former director of the Louvre), Gail Feigenbaum (Director, Getty Research Institute), Annick Lemoine (Director, Musée Cognacq-Jay), and Andres Ubeda (Deputy Director, Prado Museum)。

以前、拙ブログで「The Burlington Magazine」誌におけるローゼンバーグ氏のプラド美術館「ラ・トゥール展」展評に触れたことがあるが、結構辛口な評で、特に展覧会場の照明に文句を付けていたのが印象的だった。ということは、もしかして今回のミラノ展覧会場は申し分ない照明効果が期待できるのだろうか??

https://blog.goo.ne.jp/kal1123/e/723d101fdc1818ae8f565d577f1129e4

いずれにしても、この新型コロナウィスルのお陰で、国内にしろ海外にしろ、個人的には当分(ワクチンや治療薬ができるまで)展覧会や美術館に行くことはできないだろう。本当に悔しくて悲しくて辛い。


小説「デトロイト美術館の奇跡」を読んだ。

2020-04-10 21:26:33 | 読書

このところの「StayAtHome/iostoacasa」状態で、Amazonぽちとな、が続いている

ということで、文庫本になった原田マハ「デトロイト美術館の奇跡」を読んだ。

実はノンフィクションだと勘違いして注文したのだが、いざ読んでみたら「事実をもとにしたフィクション」だった

「デトロイト美術館は1885年に開館。2013年、デトロイト財政破綻の影響で所蔵品の売却が検討されたが、市民や国内外の支援によって売却されなかった。」(Wikipedia)

物語は、デトロイト美術館(DIA)所蔵のセザンヌ《マダム・セザンヌ》を中心に、この絵を愛するデトロイト市民夫婦、この絵の旧所蔵者であったタナヒル、そして、この絵の専門家であるDIAアシスタント・キュレーターの物語を通し、デトロイト市財政破綻に伴うDIAコレクション売却要請に直面した危機と、その奇跡的なDIA存続への過程を描いている。

読後の感想としては、事実部分は別として、いかにもアメリカン・ドラマ調(出来過ぎの人物設定と展開)に、いささか甘ったるさを感じたものの、私的にはその奇跡の過程を知りたかったので、それはそれで目的は果たせたと言える。

ちなみに、2016年に上野の森美術館で開催された「デトロイト美術館展」には、この狂言回し的(?)な《マダム・セザンヌ》も来日展示されていた。

ポール・セザンヌ《マダム・セザンヌ》(1886年頃)デトロイト美術館

この夫人像を観ていても、セザンヌの色彩感覚は素晴らしく、やはりフランス人だよなぁと思ってしまう。


ホイジンガ『中世の秋』(2018年ライデン大学出版)の英語版が!

2020-01-18 23:45:42 | 読書

先にも書いたことがあるが、ユトレヒトの書店でヨハン・ホイジンガ『中世の秋』(2018年・ライデン大学出版)を見つけた。挿絵写真が豊富で素晴らしく、本当は買いたかったが、重くて荷物になるのとオランダ語であるのがネックで、迷った挙句諦めてしまった。

https://www.universiteitleiden.nl/nieuws/2018/09/minister-president-mark-rutte-ontvangt-eerste-exemplaar-jubileumeditie-herfsttij-der-middeleeuwen

ところが、何と!英語ヴァージョンが5月に出版される予定だ。

「Autumntide of the Middle Ages (英語) ハードカバー – 2020/5/15

Amazonで予約受付中で、つい嬉しくなり「ぽちっとな」してしまった私であった


マンガ『プリニウス』8巻一気読み(^^;

2019-08-29 23:58:26 | 読書

西洋美術史の本を読むとプリニウス(Gaius Plinius Secundus、23-79)『博物誌(Naturalis Historia)』からの引用がよく登場する。戦争に出かける恋人の(壁に映った)影の輪郭をなぞったのが絵画の起源であるとか、アペレスとプロトゲネスの話とか...色々とね。

でも、そんな有名なプリニウスなのに、恥ずかしながら殆ど知ることのなかった私であったが(汗)、イタリア語教室で偶然に火山の話題が出て、プリニウスはヴェスヴィオ火山の噴火で死んだんだよね、と話が盛り上がり、ご一緒したHさんの「マンガ『プリニウス』を読んでいます」発言に、思わず「貸してくださ~い!」と、ずうずうしくもお願いしてしまった

ヤマザキ・マリ&とり・みき『プリニウス』(新潮社)現在8巻刊行。

古代ローマを生きた博物学者・プリニウスの活躍とその時代を描く、歴史伝奇ロマンの決定版。(公式サイト)

https://www.shinchosha.co.jp/plinivs/2018/11/22.html

実際のプリニウスは書斎派だったようだが、マンガのプリニウスは書記係エウクレスと配下(軍人)フェリクスをお供に、好奇心の趣くままローマ帝国領内を水戸黄門漫遊記的に旅するのである。時はローマ皇帝ネロの時代、陰謀渦巻く首都ローマは禍々しい事件が立て続けに起っているが、プリニウス一行はそんなローマを離れ帝国属州を気ままに旅している。8巻最後はロドスのヘーリオスの巨像が出てくるし、アレキサンドリアでは大灯台も出ていたし、幻想怪奇な生物も色々登場するし、このマンガはプリニウスだけでなく暴君ネロとその時代も併せての歴史伝奇ロマンなのだ

ちなみに、古代ローマ人は基本的に髭を生やさないが、髭を生やしているのはギリシアかぶれらしい(7月にお勉強した)。マンガでネロが髭を蓄えているのが、なるほど!と了解されたのだわ

ということで、第9巻は12月刊行予定らしいので、続きも楽しみだ♪


圀府寺司『ユダヤ人と近代美術』を読んだ。

2018-03-09 23:23:34 | 読書

去年か一昨年だったと思うが、圀府寺司著『ユダヤ人と近代美術』(光文社新書)を読んだ。ユダヤ教は偶像崇拝を禁じている。描くことも見ることも禁じてきた民の「美術をめぐる静かな闘争」の物語、と銘打つだけに、なかなかに面白い内容だった。

実は、私的に一番興味深かったのは、序章「緋の十字」である。それによると、ベラスケスは「コンベルソ」(改宗したユダヤ人)だった可能性があるという。「ベラスケスの(サンティアゴ騎士団への)入会審査記録においては彼が貴族の家系であったことも、純粋なキリスト教徒の家系であったことも証明されておらず、結局、国王フェリペ4世の勅命により超法規的な例外措置として入会を許されていたらしいことがわかってきた」とのこと。

※参考↓:『西洋美術研究4』(大高保二郎:「封印された野望-ベラスケス 平民から貴族へ」)

http://www.sangensha.co.jp/allbooks/index/070J.htm 

今回「プラド美術館展-ベラスケスと絵画の栄光」を観て、珍しく図録(ハードカバーが重い!)を買ったのも、その詳細への興味もあったのだが、残念ながら展覧会でも図録でも触れてはいなかった。まぁ、そーゆーものなのでしょうね、きっと