眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

おかえり工場長

2023-09-06 17:44:00 | アクロスティック・ライフ
工場長が出かけている間に
どんぶら音頭に乗ってやってきた
桃太郎さんが後釜についた
能力においては皆をねじ伏せるほどで
人々は黙って従う他になかった


根本から覆すような
どえらい改革が始まって
諸々の慣習は改められていった
「飲み物は水だけです」
「膝を出してはいけません」


「こんにちはは禁止です」
「トングは1つだけです」
「持ち込みは禁止です」
「残ったゴミは持ち帰りなさい」
「頻繁に報告しなさい」


「恋人はつくれません」
「歳は偽りなさい」
「物をもらうのは禁止です」
「ノルマだけはこなしなさい」
「人でありたいならロボットであれ」


工場長が帰ってきた
どこのどいつだセンターにいるのは?
桃太郎だ?
乗っ取りじゃないかこれは!
人聞きのわるい台詞に偽工場長はハッとした


「工場長が帰ってきた!」
「どこからともなく帰ってきたぞ!」
「元の工場が再建されるのだろう!」
「ノルマよりも大事なものが僕らにはあった!」
ひざまずいた桃太郎さんが口を開きます


虎視眈々と狙っていました
トップの座をこの手に入れて
もっといい暮らしがしたかったの
のし上がることでしか成し得なかった
人は皆が争うものだというのに何故に私が……


心の内を明かしたあとは
どこか魂の抜けたような様子で
桃太郎さんは足早に去っていきました
残された者たちが手にしたものは
非日常のあとの前より少し明るくみえる日常でした

コメント
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