序盤早々に銀得を果たす。どう考えても「うっかり」に違いない。気の早い人ならば、また普通の時間の将棋なら、投了しておかしくない。
しかし、相手には全くその気もないらしい。その時、あなたはどんな感じを持つだろうか。
・投げない相手への恐怖、不信感
どうして平気で指しているのだろう。
もしかして、自分は弱いと思われているのでは?
そういうちょっとした心の揺れが、指し手に影響することもある。
・気が抜けてしまう
これならどうやっても勝てる。これくらいでもいいだろう。いくら形勢が大差でも、楽観しすぎてよいことはない。銀得くらいでは、どうやってもいいとはならない。
・プレッシャーがかかる
この将棋は、絶対に負けられない。
形勢がよくなった時に、過剰なプレッシャーを背負ってしまう。実は、弾丸(3分切れ負け)では、よくなって負けることも多いのだ。悪い方は負けても元々なので無茶苦茶指してくる。(それはそれで怖い相手だ)絶対などということはなく、まだまだ大変くらいに思っているくらいがいい。
「金持ち喧嘩せず」という格言も忘れた方がいい。大事にしたいと思いすぎることで、思い切りを失い、守勢に偏る。慎重になるあまり妥協を重ね、ポイントを与える。気持ちが守りに入ると視野が狭くなり、攻める手が指せなかったり、ミスも出やすくなる。無理せずリードを保ちたいと考え、最善を追究する姿勢が崩れる。迷い、震え、決断が鈍って時間を使いすぎてしまう。要するに、いつもの自分でいられなくなる。
いつも伸び伸びと指して好きなように攻めていく気風の人が、突然守りに入っては、自分のよいところが少しも出ない。そうなっては、勝てる将棋も勝てないだろう。
・ちゃんと勝つことは難しい
いい手なんか1つもなく、全く勝ち目のないような将棋を指すのは、正直つまらなくもある。だが、勝負の上ではそれも正しいとは言える。自らは積極的によくする手が全くなくても、相手が勝手に間違えてチャンスが巡ってくることもあるからだ。ミスをしない人間はいないし、悪手は山ほど転がっている。(時には、ほぼすべての手が悪手だ)
将棋は逆転のゲームとも言われ、弾丸のような極端に短時間の試合形式では、その傾向はより顕著に表れると考えられる。