途方に暮れている母を
遺品に紛れた宝くじに引き込んだ
束の間ならば現実を離れられる
ジャンルというものもある
(それにしてもどうして未開封なのか?)
1等から順に確かめる
大当たりなんて認めないと母は言う
兄の命には見合わないからだ
(100万円までなら許すらしい)
案の定 まるで当たりくじは出てこない
手つかずのままのスクラッチを10円玉で削る
母は表面の銀のみならず絵柄まで削ってしまう
(力を込めすぎだ)
やっぱり 全部駄目だった
削りかすで真っ白になったテーブルの上に
コードレスの掃除機を滑らせた
母が使いこなせない奴
(なぜ?) 今はそう問うこともなくなった