マラソンと言えば冬のスポーツ。駆ける事などおよそ無縁な私は炬燵に寝転がってタイムを気にしながらアアダコウダと能書きこきながらの観戦だ。CMの時間には「ヨッコラショ」とお茶を入れに行ったりトイレに立ったりと何やかにやと結構忙しい。
立冬を過ぎた11月18日、横浜市の山下公園を発着点にした横浜国際女子マラソンがあった。たまたま開港記念会館に用事があって「日本大道り駅」の地下から地上にあがったら、何やら騒然としている。黄色のヤッケのスタッフに聞くと4分後にはトップランナーが通過するという。
思わぬ偶然にしてやったりとカメラポジションを決めていたら大会関係者の大型車輌や報道関係の車がダダッツと通過したかと思うと先頭のランナーが目の前を通過していく。赤いランニングウエアーに包まれた褐色のしなやかな肢体、軽快なエンジンを思わせる腕の振り、メトロノームのような一寸の狂いもない足の運び、音もなく一陣の風の如く走り去っていった。後が続いて来ない。
2時間23分7秒の大会新記録で優勝したリディア・チェロメイ(ケニア)であったことは後に知った。実際に見られたのは時間にして2秒位か。目に焼き付く美しい走りであった。とりわけ、目線を前方地面の一点に向けた顔にブレがなく、哲学的な風貌さえ湛えていた。やっぱり本物は圧倒的な凄い迫力である。
チェロメイから3分35秒遅れで2位に入った那須川瑞穂は素人目にも明らかに姿勢が崩れていた。日本陸連の幹部が日本選手の余りの気力の低調さに嘆きの声を上げていたが、何か根本的なマラソン哲学が必要なのではないか。
まあ、そんな事はともかく、駅のエレベーターは厳禁して階段を登ろう!と一瞬だが誓うのであった。
アッと云う間に通過しチェロメイさんの写真は撮れなかった。13位に入った松岡 範子さんの力走か。
都市砂漠ビルの谷間のせせらぎを飛沫のように流れ消えゆく
コンクリのみなとみらいの谷深く流れるようにランナーが走る
しなやかに大地を蹴って駆け抜ける美しき脚一寸の乱れなく
軽快にアスファルトを蹴るチェロメイは砂漠で鍛えた牝豹の足か
しなやかにチェロメイの足が巻き起こす一陣の風はアフリカの風
ビルの谷間の都市砂漠チェロメイはケニアの牝豹となりて疾走す
褐色の引き締まる下肢躍動しケニアのチェロメイ横浜を走る