年月に関守なし…… 

古稀を過ぎると年月の流れが速まり、人生の終焉にむかう。

安全神話

2012-03-12 | フォトエッセイ&短歌

 3月11日、東京電力福島第一原子力発電所で世界最悪レベルの事故が起きてから1年が経った。被災地の復興は遅々としながらも進んでいるが、原発事故に関わる復旧は進まないどころか、混迷が広がっているというのが感想である。
 原子炉のメルトダウンによって、大量の放射性物質が広範囲に放出され、福島では16万人が避難生活を続け、県外の6万2千人は行政側でも把握しきれていないという。政府は「帰還困難区域」「居住制限区域」「避難指示解除準備区域」に線引きし住民の帰還を進めるというが、3割の人は戻りたくないという。
 「絶対安全」であったはずの原発の最悪事故の真相は未だ明らかにされず、放射性物質の人体への影響は曖昧で、除染の見通しは立たず、停止から廃炉までには40年はかかるとすれば、故郷への思いを断つ人もでよう。
 それにしても、原発の何たるかを知らなかった事を振り返る。原子力発電も核兵器もウランやプルトニウムを使った核分裂反応によって生じる莫大なエネルギー(衝撃波と高熱)を利用するという点では共通している。被爆国の日本が世界有数の原発大国として18カ所・54基もの原発が設置されていたのだ。
 3.11は「安全神話」から私たちの目を覚まさせたという貴重な経験となった。原発推進を言ってきた専門家の中には「原発のある自治体の危機管理が拙かった。万一に備えて徹底的な事故対応が必要、住民側にも油断があった」と今になって指摘した。言語道断であろう。「安全神話」「原発マネー」を盾に住民の原発に対する疑義を許さず、批判を押さえ込んできた事を棚に上げて「住民の油断」では被災者は浮かばれない。
 先ずは、一度、原発を停止して「原発事故を想定内」にして、今後どうするかを議論する絶好の機会である。福井県の高浜原発3号機・新潟県の柏崎刈羽原発6号機が定期検査のため原子炉を完全に止める。続いて北海道の泊3号機が4月下旬に定検に入ると、国内54基全ての全ての原発が止まる。推進派は電力不足を声高に叫び再稼働に動き出している。
 自然エネルギーへの転換と節電の工夫が夏に向けて問われる事になる。3月11日は「原発ゼロ」「原発なくせ」行動が全国150カ所で実施された。

<川崎平和公園:原発ゼロカウントダウン inかわさき>

 

  原子炉の瀟洒な建屋水爆し爛れ狂った竜骨晒す

  作業着に身を固めての会見はメルトダウンの説明も出来ず

  海望む原発城下の見納めは透明魔神のセシウムの舞い

  モニターの原子炉建屋破砕して安全神話の自縛も解ける

  戒厳の封鎖地点を越え行けば阿鼻叫喚の廃墟の地獄か

  早春に溶け込んでいるステージは原爆ゼロの思い膨らむ