かつて東京の近郊の田んぼでも「鯉のぼり」の後にはレンゲ草が咲き乱れ蜂や蝶がウルサイほど飛び交ったものである。その、レンゲ畑の赤紫色のジュータンの中にランドセルを放り出して「道草」をしていた子供の頃が懐かしい。今どきの小学生に「道草」の意味が分かるのだろうか。
レンゲ畑が姿を消して久しい。硫安や石灰窒素などの化学肥料に代わったこと、機械化が進みトラクターに草がからみつくこと、田植えの時期が早くなってレンゲの種ができるまで待てないこと、などによってレンゲ畑が見られなくなったという。
<レンゲ畑に出会ってホッと一息。蔵王連山のふもとの田園地帯の一景>
実は、子供の頃、春の風物詩であるレンゲ畑は春になるとめぐってくるの自然からの贈り物と思っていたが、そうではない。稲作の肥料として9月頃に種まきをして「緑肥」として栽培することを知ったのはずっと後のことである。根に寄生した根粒菌で空気中の窒素を固定し、田にすき込むと茎葉が肥料になるということだ。「窒素」を作る生産工場ともいわれる。
化学肥料が使われてレンゲ畑が姿を消しただけではない。田んぼや用水や溜め池にいたドジョウ・ザリガニ・タニシ・イナゴ・メダカ… どれだけの生き物が姿を消してしまったのか。
<レンゲソウ(蓮華草)。正式にはゲンゲ、ハチミツの源となる蜜源植物>
早期栽培(早稲)が主流になってレンゲ畑どころではなくなった。田植えと言えば梅雨の雨を利用した6月中頃の農作業で日脚が長くなった10月に刈り入れしたのだが。
何が急がせるのか、稲の早期栽培は一層はやくなり、残雪を見ながらの田植えとなっている。
<冷たい水の中で、か細い早苗(さなえ)が揺れる。水面を風が吹き抜ける>