年月に関守なし…… 

古稀を過ぎると年月の流れが速まり、人生の終焉にむかう。

風薫る<1>春 霞

2010-05-01 | フォトエッセイ&短歌
 霞(かすみ)の立つ季節になった。気象学的には特段の定義もなく、春に霧(きり)や靄(もや)などによって視界が悪くなり、景色がぼやけて見える情景を春霞(はるがすみ)と言う。
 大気中の水分が植物の蒸散で活発化するなどで増え、気温の低下などによって微粒子状(細かい水滴)となり景色をぼやけさせるのだという。昼と夜の気温差の大きい日に起こりやすいという事は昨今の異常気温は春霞の絶好の環境であるのかも知れない。
 風雅をテーマとする和歌の格好の題材で古くから多く春霞がうたわれている。『誰しかも とめて折りつる 春霞 立ち隠すらむ 山の桜を』(古今和歌集:紀貫之) <一体誰が探して折ってきたのだろう、春霞が隠していた山の桜を>

<山間の裾野の人家にたゆたう春霞(はるがすみ)>

 しかし、最近の春霞は中国からの「黄砂」などの微粒子によって起こる場合が多く、春霞と言えば黄砂を指していると思っている人もいるとか。当然、黄砂は微粒子状であるから鼻や喉に侵入してくる訳だ。風雅どころではない、家に帰ったらまずはガラガラポイッのうがいですね。
 気温の上昇によって紗の幕を引くように霞は晴れわたり新緑の目映い舞台があらわれる。藤の淡紫色が柔らかな緑に映える。蔓(つる)が「右巻き」に巻きつくノダフジ(野田藤)である。藤の成分には、ポリフェノールが含まれ、花粉症、メタボリックシンドロームなどの現代の生活習慣病の体質改善に有効な働きをするといわれる。

<しばし、藤棚の下で房状に垂れて咲く藤の花の独特の淡い香りを楽しんだ>

 花より団子で春霞に話を戻そう。実は『春霞』と言えば秋田の名酒。秋田県仙北郡は秋田の中でも酒造りが盛んな地域であり、そこを代表する明治7年の創業とか。銘柄は、謡曲「羽衣」の一節、「春霞たなびきにけり久方の~」から取ったという。

<霞(かすみ)は古くは酒の異名であったという。萌える若葉を肴に一献参るか>