年月に関守なし…… 

古稀を過ぎると年月の流れが速まり、人生の終焉にむかう。

檜原・カブト造り

2009-06-05 | フォトエッセイ&短歌

 檜原は関東山地にあり、多摩川の上流である北秋川と南秋川の渓谷を囲むようにして在る。北秋川沿いに三都郷(みつご)・神戸(かのと)・樋里(ひざと)、南秋川沿いには人里(へんぼり)・笛吹(うずしき)・数馬(かずま)などの悩ましい集落が点在するのも落人の伝説を持つ里らしい。

<秋川渓谷の清流が飛沫をあげている。サンショウウオがじっとうかがっている>

 奥深い山里の文化は10年1日の如く緩やかに流れ、人々は風物の変貌のあることを知ることもなく生涯を閉じるのかもしれない。時代が流れ、ふと気がつくと取り残された山里の風物が際だった文化として継承されていることを認識する事もあろう。
 檜原村の兜(カブト)造りと呼ばれる家屋などもその一つである。合掌造りの妻側を短く切り破風をおおきくとったもので、外観が兜に似ているのでその名が付けられた。


<檜原村のは入母屋の二重兜造りで山梨の影響が強い事から甲州系兜造り>

 巨大な兜造りは若干の差異を見せながら各地方ごとに見られる特異な民家である。数馬の兜造りは妻側に二段以上の庇を持っている。建物が大きくて高いのは屋根裏を蚕養に使うためである。カイコ棚を3層~7層も設置したという。
 カイコは凄い食欲で桑の葉を抱え込むようにたいらげていく。ザワワザワワ風にそよぐサトウキビ畑のような音を奏でながら……。音が止むと薄暗い屋根裏で糸を吐きながら繭づくりに励むカイコの姿は神秘的である。


<採光・通風などを考えた養蚕棚を持った多層構造の合掌造り。大型化する>