ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

ブログ開設にあたってのごあいさつ

2009-10-27 18:25:56 | ごあいさつ

【これまで読んでくださっていた方へ】

あけぼの会ホームページのエッセイ「再発患者の治療日記(4)」を引き継ぎ、このたびブログを開設することになりました。

私に自分の体験を「書く」という機会を与えて下さった「あけぼの会」から、今回、会のホームページから離れて、自分自身のブログで発信してはどうか、とのお勧めがありました。
「今はブログが簡単に始められる。そうすれば遠慮なく自分で書きたいように書きたいだけ書ける。その方が書きたいあなたのためによいでしょう。」と背中を押して頂き、会からもリンクをはって頂くことになりました。

書くことによって自分の気持ちの整理がつき、自ら発信することできちんと襟を正すことができる。-そのことがようやく分かりかけたところです。迷いはありましたが、思い切って開始しました。
そもそも会の日記をお引き受けしたときも写真も、実名も、ということでしたから清水の舞台から飛び降りた気分でしたが・・・。

これからも毎週の治療記録を軸にすえつつ、日々のかけがえのない今を大切にしながら、ロッキングチェアに揺られるように心地良い生活を送っていく上で、心動かされたこと、嬉しかったこと、読んだ本、見た映画・・・そんなことも書き綴っていければ、と思っています。

引き続きどうぞよろしくお願いいたします。


【新しくお読み頂く方へ】

プロフィールやこれまでのエッセイ(2009.7~9)は「あけぼの会」の下記アドレスからもお入り頂けます。
(アドレス)http://www.akebono-net.org/contents2/voice9/20090812.htm

【追加のお知らせ】

2011年4月以降、「あけぼの会」とのリンクは終了しております。
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【2009年9月-2】

2009-10-27 18:22:59 | 2009年9月
2009.9.15 ハーセプチン60回目
 採血後、内科診察へ。冷えるようになったのか手指のこわばりがあること、胸の鈍痛が気になること、先週診察後に親指の爪がとれ、かばって歩くためか腰痛がある旨ご報告。今日の採血結果、白血球は4200、好中球は1700程ということで、上がっていた。先生はこれまでのゾメタ点滴と好中球の関係を比較してくださったようだが、月ごとに上下があり、現在アロマシンのみの内服で、何か最近やめたり始めたりしているサプリメントも特にない、とすると原因はわからないけれど、結果オーライ。アロマシンは続行でよいとのこと。「先週頑張ってバナナや白い野菜を食べた効果でしょうか」と質問したところ、「そんな即効性はないでしょう」とのことだった。・・・確かに。アロマシン30日分の処方をして頂き、ほっとした。次回は採血なしで皮膚科の後内科。
 処置室に移動して、点滴が始まるまで1時間半ほど待つ。今日の読書は1冊目が上野千鶴子さん、辻元清美さんの「世代間連帯」(岩波新書)。仕事、すまい、家庭、子ども、教育、税金、経済、社会連帯、と2人のテンポのいい会話が進んでいくのだが、上野さんの「親になった人たちが、自分が子どもだったときの辛さを、どうしてあんなに簡単に忘れることができるのか、私は不思議に思ってきた。」「教育を親の投資にしない、子どもを親の生産財にしない」という言葉や、辻元さんの「一緒にいてくれてありがとう、という貸し借りなしの感謝の気持ちを持ち続けられたら親の人生は変わる。いつか子どもは社会に“帰っていく”のだから」の部分には下を向かざるを得なかった。2冊目は絵國香織さんの「すきまのおともだちたち」(集英社文庫)。小さな女の子と主人公の一風変わった長い長い友情の物語・・・なのだが、彼女にかかるとどうしてこんなに不思議な世界にすんなり入っていけるのだろう、といつも思う。
 今日は、中待合で本を読みつつ待っていた時に隣の女性から声をかけられた。「ネットを見ていますよ」とのこと。こうした経験は全く初めてだったので、驚いた。あけぼの会の会員さんではないようだが同じ主治医だという。今日は数ヶ月ぶりに検査結果を聞きに来た、とおっしゃっていた。“異常なし”でありますように。

2009.9.29 ハーセプチン61回目、ゾメタ25回目
 皮膚科は5週間ぶり。20日ほど前にとれてしまった右親指の爪と、もうすぐ剥がれそうな左親指を診察して頂いた。左親指はサリチル酸ワセリンを続けて塗ること、右親指は生えてくるまで何もしなくてよい、とのこと。また、抜け落ちたまつ毛がまだろくに生えそろっていないので、“乳がんの化学療法で自慢の長いまつ毛がなくなった妻のために眼科医が開発した”というまつ毛美容液をつけていたのだが、沁みて痛いので最近は休んでいる。眩しいためか涙が年がら年中出て、それを無意識にこすってしまうのでまぶたがただれ気味。それで再びプレドニン軟膏を処方して頂いた。眉毛も相変わらず薄いままで、鏡を見ると実に間の抜けた顔である。手指の爪はようやくほぼ元通りになってきたので(少し薄く弱くはあるが)特に何も塗らないでよいとのこと。そろそろ手袋の外し時かもしれない。
 シルバーウィークだったため内科も2週間ぶりの診察。やはり連休の余波でとても混雑している。最近はアロマシンの副作用である手指のこわばりのためか握力がすっかり弱っていて、ペットボトルのふたを開けることすら結構厳しいことをご報告。また、連休中にずっと気になっていた納戸等、家の大掃除を始めたところ、つい大ごとになってしまい未だに片付かない。当然のことながら少々バテ気味であることをお話する。ここのところ胸の圧痛が結構続いており、息切れもあるので心配になり、骨の悪化では、とお尋ねしたところ、私の痛みの様子から狭心症でもなさそうだし(ハーセプチンが心毒性ということもあり)、範囲が広いので骨転移の痛みではなく肋骨の関節痛かもしれない、とのことだった。少しほっとするが、痛みがあるとどうも前向きになれない。点滴椅子も空きがなく、今日は入り口の狭いベッドで4時間余りを過ごした。
 今日は点滴4本で時間もたっぷりあったので2冊読み終わった。ご自身も乳がんの体験者である中島みちさんの「『尊厳死』に尊厳はあるか-ある呼吸器外し事件から」(岩波新書)。昨年秋、緊急入院を余儀なくされたときにやはり一度きちんと伝えておくべきことを書いておかなくては、ということで夫と息子宛に簡単な手紙を用意している。気が変わったり、何かあったときにその都度更新しているが、リビング・ウィルはきちんと用意しておきたい、と思った。もう1冊は岸本葉子・内富庸介さんの「がんと心」(文春文庫)。岸本さんは同年代でもあり読みやすいエッセイなのでよく手に取る。再発治療の項で、彼女は「自分は経験していなくて、(そのときのことは)語れないのだが」と言っているが、当然のことだ。過日参加させて戴いた「初夏のお集まり」のときにも感じたのだが、まず初発の段階で健康な人たちと線が引かれ、再発で今度は患者の中でもまた線が引かれる、と思う。もちろん初発の人たちも再発の恐怖から、自分のこの後について少しでも参考にしたい、ということがあるのだろうが、「再発治療中の人」という集まりの中にそうでない人が入ってくることについて温度差を痛感した。
 早いもので次回は10月。あけぼの会の大会の入場証も届いた。元気をもらいに参加してきたい。
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【2009年9月-1】

2009-10-27 18:20:50 | 2009年9月
2009.9.1 ハーセプチン58回目、ゾメタ24回目
 今日から9月。月初めの採血は40人待ち。30分程して採血後、内科へ。採血結果が出るのがいつもより遅く、待ち時間は1時間半近く。「先週も特に変わったことはなく」とご報告。採血の結果、白血球が3100で、好中球が910とのこと。4月に2000程だったのが、5月からずっと下がっているそうだ。低値安定だが、タキソテールの最終が3月なのでその後遺症にしては長すぎるし、4月に一度上がっているのでタキソテールのせいではなさそう。転院直後の数値を確認して頂くと、白血球が5~6000、好中球も2~3000あったようだ。アロマシンの副作用で好中球が下がることもあるそうだが、1000を割るのは余り嬉しくない。新型インフルエンザをはじめ感染症に注意しなくては。先生がおっしゃるには「今後の数値を気にしつつアロマシンを続行するかどうか。一度アロマシンを止めて好中球が上がればアロマシンが犯人ということになる。ただ、アロマシンは止めたくないですね。」「貧血なら頑張ってレバーを食べます、と言えますが、好中球をアップさせるには何を食べればいいのでしょうか。」と質問したところ、「バナナが良い、と言われているようだが、あまりないですね・・・」とのお返事。アロマシンを止めてまたフェマーラに戻る、という選択肢はなく、次はヒスロンになるようだ。ただしハーセプチンとの相性は不明だし、食欲がうんと出てムーンフェイスになるとのこと。ただでさえ丸顔の私がムーンフェイス・・・考えただけで気が滅入る。休職が明け、久しぶりに会った人からは必ずといっていいほど「ふっくら丸くなって元気そうじゃない」と言われる。いちいち「薬の副作用でむくんでいるので・・・」と言い訳をするのも面倒なので、そのままへらへらしているのだが、なんだかなあ・・・である。
 いずれにせよこの病気にとって肥満は大敵だ。とりあえず2週間後に再度採血をして、あまり下がっていなければ目をつぶってアロマシンを続けましょう。もしさらに下がるようだったら2,3週間アロマシンを止める。それで変わらなければアロマシン再開でいきましょう、ということになった。
 今日はハーセプチンとゾメタの日なので、生理食塩水を含め4本の点滴。十分時間があったので2冊読破。
 1冊目は恩田陸さんの「中庭の出来事」(新潮文庫)。芝居とミステリーが見事に融合、とあるように目まぐるしく進む内と外のお話に引き込まれ、戻っては確認しつつ一気読み。読後、お芝居を観に行きたくなった。
 2冊目はV.オフチンニコフ、早川徹訳の「日本人とはなにか 一枝の桜」(中公文庫)。米原万里さんがベネディクト「菊と刀」をしのぐ日本人論の名著と絶賛した、という帯に惹かれて選んだのだが、1970年代のベストセラーであるにもかかわらず1960年代の記憶として僅かに残っている部分を思い出しつつ十分楽しめた。
 ただでさえ今日は時間がかかったのに、なんと間抜けにも携帯を点滴椅子に忘れ、駅に着いてから気づいた。慌てて汗だくで病院を往復。自業自得とは言え、どっと疲れた。改札を入ってからでなかったのがせめても・・・。

2009.9.8 ハーセプチン59回目
 内科診察。やはり夏バテなのかだるさと眠さがあり、いくら寝ても眠いこと、足の親指の爪が殆どとれかけていることをご報告。腫瘍マーカーは3月の最終タキソテール投与前と殆ど変わらない数値。このところ、少しずつずっと下がっていたので久しぶりの上昇。ただし正常範囲内では必ずどこかで上下はあるので、今後上昇し続ける、ということがなければ心配はなさそうだ。来週の採血で白血球だけチェック。更に好中球が下がっていれば2週間アロマシンを止めて月末にもう一度採血。そこで上がっていればアロマシンが原因。来週好中球が1000程度あればこのまま続行、と方針確認。「アロマシンをやめて次の薬、の選択肢として前回話に出たヒスロンは、病状が進んで食欲がなくなったときに使うこともあるのでは」の質問をすると、「その使い方もあるが、とっておくこともない」とのお返事。また、ゾメタが原因ならアレディアに変更もありだが、時間がかなりかかるので出来れば避けたい、とのこと。普通は数ヶ月くらいで症状が出るのでもう1年半以上使っているゾメタが原因ということもなさそう。次回好中球がアップしていますように。
 処置室でスムーズに点滴開始。今日の1冊目が角田光代さんの「愛がなんだ」(角川文庫)。全力疾走片思い小説!と裏表紙にあるようにうんと切なく、なんだか胸がきゅんとしてしまうような。彼女の作品はいつもどこか心の琴線に触れて、うるうるしてしまう。
 2冊目は曽野綾子さんの「貧困の光景」(新潮文庫)。格差社会と言われている今の日本からは想像も出来ない貧困の現実。殴られたような感じ。「日本人は自分にお金がなくても自分の病気は治療されるのが当然の権利と考えているが、アフリカでは、お金がなければ医者にもかかれず薬も買えない、と考えることである。どちらが“現世の理(ことわり)”かめいめいが改めて考えるべきことだ。」や「どうせ死ぬ運命の子どもを養うより、少しでも生きる可能性のある子に食べさせないと、一人の子も残らないことになる。」とのくだりには慄然とするばかり。
 2週間分のアロマシンを薬局で受け取る。次回は9月15日。どうもまだ“ハッピーマンデー”に慣れない。“敬老の日”か、と思ってしまう。今年の夏はサンダルを履かないで終わった。足の痺れと爪の状態で、不安定なオープントゥーは怖かったから。太く低いヒールばかり履いていたら、何だか足がどっしりしたような気がする。
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【2009年8月】

2009-10-27 18:16:07 | 2009年8月
2009.8.4 ハーセプチン54回目
 月初めの採血日。今日は採血室が混雑しており、診察開始・点滴開始ともどんどん押せ押せになる。「この1週間はおかげさまで特に変わったこともなく」と報告。採血結果は白血球が3400。それ以外は特に異常なし。腫瘍マーカーの結果は来週。薬を頂く日だが、先生から「(アロマシン以外の)抗がん剤副作用対策の薬はどうしますか、そろそろやめてみましょうか。」というお話が出る。手足の痺れ軽減のビタミン剤(ビタノイリン→ビタメジン)は2月から、むくみ防止の利尿剤(ラシックス)と手足の痛み軽減の漢方薬(芍薬甘草湯)は3月から、半年近くお世話になっていた。予備が数日分残っているので、もし止めて症状が出るようであれば来週の外来まで残りを飲んでしのぐことにする。いつまでも薬に頼っていないで自力で頑張ろうということだ。その後は予定通りハーセプチンの点滴。処置室も同じく混雑しており、点滴椅子が空くまでに1時間半近くかかった。
 点滴後、会計で「来月から抗がん剤等の薬の廃棄分も請求することになるので、金額が上がりますが、ご了承ください。」というお話があった。確かに患者一人ひとりの体表面積を計算して必要量を出し、オーダーメイドで調剤するのだから、残りがもったいないので、他のどなたかのために使ってください、というわけにいかない。廃棄分も含めて請求されるのは当然だとは思うが、またこれで命の値段が上がったなあ・・・と思う。薬はもちろん効いてくれるならずっと効いていてほしいけれど、サードオピニオンを頂いた先生の言葉を思い出した。「再発してハーセプチンが効く人は何年も続けるけれど、実際のところ、お金が大変だよね。」-本当にそうだ。今は“自分の”保険証で“自分の”預金口座から治療費が払えているというのがささやかな私のプライドでもある。もちろん、夫は自分で払え、とは決して言わないと思うけれど。
 そんなわけで今日は待ち時間がたっぷりあったため、2冊の本が読めた。1冊は池田夏彦さんの「他人と深く関わらずに生きるには」(新潮文庫)。題名だけ見ると、一体どんな話?と言われそうだが、他人をコントロールすることはたとえ子どもでも夫婦でもまずいよね、という話が印象に残った。もう1冊は宮台真司・香山リカ両氏の「少年たちはなぜ人を殺すのか」(ちくま文庫)。これもまたショッキングな題名だが、いわゆる“魔の中学2年”の息子がいる私は、自分の中学生時代の記憶がかなりいい加減になっていて(自分に都合の悪いことは忘れていて)、少しでも今を生きる子どもたちが理解できたらと、いろいろな本を物色している最中だ。

2009.8.8 歯科検診
 3ヶ月に一度、近所のクリニックに検診に通っている。どちらかと言えば歯が弱いほうで歯科医院とは子どもの頃から長い付き合いだ。ゾメタ治療を始めてから歯科検診は欠かせない。抜歯や削る治療は点滴治療中には原則として出来ない。副作用の顎骨の壊死を誘発する、ということになるのだから。QOLがどれだけ下がることか。今のところ、問題なしとのこと。歯石を軽くとっていただき、次回3ヶ月後に予約を入れて帰宅。
 今朝、夫と息子が元気に北海道鉄道の旅に出かけるのを見送る。

2009.8.11 ハーセプチン55回目、ゾメタ23回目
 週末から夫と息子が旅行に出ているので、久々に独身貴族の身分。昨日仕事を終えてから思い切って病院の最寄駅のホテルに前泊した。素泊まりだったけれど、一人で時間を気にせずゆっくり好きな本を読んだ。高層階の部屋からは病院もよく見え、ささやかな夏休みの気分転換になった。明け方、静岡沖震源地震で目覚めた。台風9号のため、起床時は止んでいた雨も出かける時には土砂降り。びしょ濡れで病院に入ることになった。いつもより30分前の時間に予約を入れて頂いており、さらに小一時間早く病院に入れたことで、診察も点滴もとんとん拍子に早く進んだ。
 前回の血液検査の結果、腫瘍マーカーは正常値内でまた若干下がっていた。副作用の対処の薬をやめて1週間。自力できちんと排尿でき、むくみも悪化せず、痺れや痛みのほうもひどくなっていない。仕事も昨日からフルタイムになっていることを伝えると、ようやく「もういいですね。」と先生に言って頂いた。来週は久しぶりに肺のレントゲンを撮ってみましょう、とのこと。
 今日の一冊は宮子あずささんの「ナースな言葉 こっそり教える看護の極意」。宮子さんは文筆家吉武輝子さんのお嬢さん。先日「がん支えあいの日」のイベントで吉武さんと主治医の先生との対談は拝聴していたので、興味深く読んだ。特に自己決定権の章で、彼女が「自分自身ががんになって治療を選ばなければならない状態になったときには、すべて夫に決めてもらう。なぜなら自分が亡き後、自分のことを一番思い出すのは夫で、そのとき夫自身が一番納得いくようにしてもらえばいい、と考えるから。」と書いていたことに、唸った。私がタキソテールの副作用でよれよれだった時、夫に八つ当たりして「もう次回は絶対抗がん剤なんかやらない。だめならだめでいいから!」と言い放ち、夫が実に哀しそうな顔をしたのを思い出した。「一日でも長く生きてほしい」と言ってくれる人に対して、また、私が十分納得した上で治療をしてくださっている先生に対しても失礼だった、と反省した。
 帰り道には台風一過ですっかり青空になり蒸し暑くなった。もうすぐお盆。仏花を買い、仏壇に供えた。りんどうの濃い紫色がとても美しい。

2009.8.19 ハーセプチン56回目
 今日は久しぶりの診察前レントゲン撮影。レントゲンの待合は結構混んでいたが、思ったほど待たずに撮影開始。前からと横から2枚撮影。
 その後内科へ。「夏ばてもせず、元気です。手指のこわばり、両膝の関節痛がちょっと気になります。胸の圧痛は相変わらずです。」と1週間の報告。最近階段の上り下りの際に膝に痛みがある。手指のこわばりは明け方だけでなく、日中もそれなりに残る。夜も手袋をして寝ているし、冷えるとよくないのでは、と自分でも無意識のように指のマッサージをするようになっている。現金なもので他の痛みや不調が収まってきているので、相対的にこちらが気になるのかもしれない。副作用対策の薬をやめて2週間。半年間、朝昼夕の食前、朝夕の食後に飲んでいた薬がなくなり、今は朝食後小さなアロマシン1錠のみ。つい忘れ物をしているような気になる。
 レントゲンの結果は「変わりなし」。11月のタキソテール治療前にはっきりしていた影が治療後の3月に薄くなり、そのままの状態で今回キープされている。横からの写真でも「特に変わりなく、カテーテルもいい位置にありますね」とのこと。
処置室へ移動して予定通りハーセプチンの点滴。今日は鎖骨下埋込中心静脈ポートへの刺針後、若干痛みが残ったので点滴開始前に少し様子を見て頂いた。何ともない時は本当に痛みも何もないのだが。「今日は痛点にでもあたったのかも」と看護師さんの弁。それにしても去年の今頃はなかなか血管が確保できず、看護師さんも私も汗だくで何度もトライ、だったのでそれを思えば“一回チクリ”で済むようになったことは本当にありがたい。
 今日の読書は昨日からの読みかけもあったので2冊。1冊は篠田有子さんの「子どもの将来は『寝室』で決まる」(光文社新書)。題名に惹かれて選んだのだが、20年余りにわたるいわゆる“川の字”寝のような「寝方調査」から子どもの発達、親子関係、兄弟仲への影響の発見についての書で、なかなか興味深く読んだ。
 もう1冊は北澤京子さんの「患者のための医療情報収集ガイド」。初発治療の時から比べても本当に今はネットの情報で様々な治療法が選択できる。それでも情報の洪水から「本当に役に立つ情報を見極めるテクニック」の章はとてもわかりやすくためになった。賢い患者にならなくては、と思う。先生や看護師さん達ときちんと話をするために。
 夫と息子は、週末無事に旅行から帰ってきた。今日の夕食は何を作ろうか、と考えながら帰宅。

2009.8.25 ハーセプチン57回目
 まず皮膚科へ。足の爪をお見せすると、「いい感じ」と言って頂く。確かに前回は今すぐにでもとれそうな状況だったけれど、サリチル酸ワセリンのおかげか、まだはがれずにくっついている。自然にはがれるのを待ちましょう、ということだ。手の爪も痛みもなくなり、大分良くなっている。顔の色素沈着用クリームはもうすぐなくなるのだが、「もういいでしょう」ということで、なくなったら終了。次回は連休のため5週間後。
 1階に降りて内科へ。すでに中待合に入る合図の私の整理番号が画面に出ていた。「朝起きると、手指のこわばりが酷い」とお話する。「皆さんそうなりますからねえ」ということ。気休めにマッサージをしたり夜も手袋をはめてみたりしているけれど、まああまり気にしないでよい、ということだ。皮膚科の様子もパソコンでご覧になり、タキソテールで長期にわたり酷く副作用が出たのは私が第一号患者なのだ、というお話を伺う。単純というか貧乏性というか「そうですか。私が先頭を歩いているなら、頑張ります。」と言ってしまう。予定通りに今日もハーセプチン。来週は3週に1度のゾメタも加わり、月初めなので採血もあり。
 診察後処置室へ。今日は先生が昼前から出張されるため最小限の患者さんの予約だったとのことで、いつになく空いていた。点滴椅子の患者さんもまばらですぐに針刺がされ、薬が届くのを待つ。看護師さんに足の爪を見せると、「わあ、再生している、って感じ」と言われる。確かに死んでしまった部分とはっきり線がついて新しいピンクの爪が出てきている。何事もなく点滴終了。
 職場である大学でも、学生に新型インフルエンザ患者が発生している。もし発熱したらどうしたらよいか、と相談したところ「まずは予防を、万一発熱したら、近くのお医者さんでインフルエンザ検査を受け、薬は処方されたものを飲んでよい。熱があるうちは無理して毎週の点滴に来なくて大丈夫。ただし解熱後3日経っていたら前日に電話で状況を報告した上で通院するように。」との回答を頂く。息子も今日から学校が始まった。新型のウィルスが我が家に持ち込まれないことを祈りたい。
 今日の1冊は結城康博さんの「医療の値段―診療報酬と政治―」(岩波新書)。健康で殆ど医療費がかからなかった時には図書館でもスルーしていただろう本。患者と医師との情報格差を埋めるには中・高・大という教育課程で医療制度に関する授業を設け、ある程度の知識が身につくシステムが必要、という筆者の意見に賛同した。
 2冊目は創作童話「100万回生きたねこ」の作家・佐野洋子さんの「覚えていない」(新潮文庫)。彼女が50代に書いたエッセイ集。西原理恵子さんの解説ではないが、爽やかな気持ちにさせる愛のある悪口痛快エッセイ。
 それにしても筆者の子どもに対する語り口や台詞の表現は、本当に素晴らしい。
 来週の予約票を見るともう9月。日が短くなったのを感じる。今年の夏は暑すぎず過ごしやすくありがたかった。夏休みはなかったけれど、涼しかったおかげであまり悔しがることもなく。職場では夏休みのお土産のお菓子を頂戴するばかりなので、先々週お世話になった病院最寄り駅のホテルでクッキーを買って帰った。


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【2009年7月】

2009-10-27 18:08:49 | 2009年7月
2009.7.7 ハーセプチン50回目
 月初めの採血。今日でちょうどハーセプチン開始から1周年。「七夕の日、願いはかないますよ。」と言ってくださった先生の言葉を今も思い出す。
 日曜日にあけぼの会の「初夏のお集まり」で患者会デビューをしたせいか、気分はとても前向きで、看護師さんにも冗談などを言ってしまう。
 手先、足先の痺れと痛みのために服用中の芍薬甘草湯はもうしばらく続行。一時は妊婦のときと同じまでになった体重は、ほぼ元通りになったものの、夕方の足のむくみを考えると、利尿剤(ラシックス)もまだやめられないでしょう、ということになる。やはりむくみから開放されるのもぺらぺらに薄くて浮き上がってしまった爪が元通りになるのと同じくらいの時間がかかるということだ。半年から1年の我慢だ。
 採血結果は白血球が低めで2900、ずっと低めだったアルブミン、カリウムについては正常下限値になったとのこと。腫瘍マーカーは来週のお楽しみ。
 点滴の時間、毎週1冊ないしは2冊の文庫本が読み終わる。今日は重松清さんの「あの歌が聞こえる」、吉本ばななさんの「ハードボイルド・ハードラック」。お2人とも同世代なので、時代背景が懐かしくとても読みやすい。
 1ヶ月分のアロマシン、ラシックス、芍薬甘草湯、ビタメジンを薬局で受け取る。手さげ袋いっぱいの結構な量になった。

2009.7.14 ハーセプチン51回目
 胸の鈍痛、足や手の痺れは相変わらず。手指の先に水泡ができて皮がむけてきている。手袋をはずしてお見せすると先生いわく「脱皮ですかね・・・。」「・・・脱皮ですか。」って・・・先生お茶目でしょう?!ぶつけると痛いしぺらぺらになった爪が折れそうなので手袋はまだとれない。
 先週の腫瘍マーカーCA15-3値は4.1。低く安定しているので、欠かさず治療を頑張りましょう、とのこと。レントゲンやCTは当分不要。症状とマーカー値で判断していくが、何もなくても秋には撮る予定、とのこと。
 看護師さんがおっしゃるには、ハーセプチンを長く使うと皮膚が弱くなるそうだ。確かに以前は採血の後にテープを貼ってもなんともなかったのに、今ではどうも跡が残ったり赤くかぶれたりする。昨年11月のポート埋め込み手術のときにぐるぐるに貼り付けられた跡はいまだに残っている。今も点滴の時、ポートを固定するテープにかぶれて真っ赤になる。それで脱皮?困ったものだ。
 点滴中の今日の1冊は、安保徹先生の「病気は自分で治す―免疫学101の処方箋―」。先生いわく人間はぎりぎりのところで生きている。がんばりすぎてもだめ、だらけすぎてもだめ・・・本当にそうなのだ。

2009.7.21 ハーセプチン52回目、ゾメタ22回目
 今日は予約の30分前に病院に到着。なんと、ほとんど待たずに診察室から呼んでいただく。「どんな1週間でしたか。」といういつもの質問にお答えする。アロマシンの副作用の手指のこわばりが強くなったこと、いよいよというか遅ればせながら手指に続いて足の親指の爪がとれそうになってきたこと、胸骨の鈍痛は相変わらず、などをお話して点滴室に入る。
 点滴中、ホットフラッシュでかっと暑くなって上着を脱ぐと、今度は冷房で寒くなって、脱いだり着たり・・・忙しい。それでもポートにしてからは、両腕が自由になっているので本当にありがたい。これが腕からの点滴だったら脱いだり着たり、はとてもできないのだから。ゾメタが入ると胸全体がぎしぎしして鈍痛がひどくなる。効いている、ということなのだろうと思うのだが。
 点滴の間の今日の1冊は、NHKがん特別取材班による「日本のがん医療を問う」。文庫は去年の4月に出たもの。今や日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなっている時代だという。
 私は公務員なので民間に勤めている方たちよりとても恵まれた職場環境なのだと思うが、それでも今回休職したことで、今後1年間は同じ病気では病気休暇がとれない。そんなわけで世は夏休み、の今、夏季休暇も小出しにすべてこの通院休暇に使っている。制度は元気な人たちが作るものだから、休職してまで治療に専念したわけだし、1年も経過しないうちに復職後も引き続き週1回の通院が必要、などということは「想定外」なのだろう。同じ病気では、というところがミソで初発乳がん、再発乳がんと再々発乳がんは違う病気なのか、まだ確認できていない。いずれにせよ、基本的には休職すれば完治する病気が対象で、完治しなくとも経過観察が必要でも、月1回程度の通院ならわざわざ病気休暇等取得しなくとも有給休暇で足りるだろう、ということ。慢性疾患で週1回の通院が必要な病気まではやっぱり「想定外」なのだ。そのため、職場からは平日5日間しっかり働いて土日に通院できないのかとか、午前中の休みだけで間に合わないのか、という質問もされた。確かに個人のクリニックなら土日も開いていて診ていただけるかもしれない、それに通院している病院が職場からドアツードアで30分くらいで、1回30分程度の点滴なら半日休暇でも間に合うのかもしれない。でも、そうではないのだ、ということがやはりなかなか理解してもらえない。こうなってくると「働く意欲と能力があれば・・・」という能力が、自分にはすでになくなっているのか・・・と少々いじけてしまったりもする。
 それでもこうして書くことにより、私たち患者が通院と仕事を続けていくことがどんなことなのか、1人でも理解してくれる人ができれば嬉しいし、先に書いたように2人に1人がこの病気になるとしたら、今のままの制度では決して企業も役所も立ちゆかなくなるのではないか、と思う。
 初発の時に執刀してくれた病院の先生から言われた言葉を思い出した。「抗がん剤を始めたら、あまりそのことを考えすぎてはだめ。精神的にきつくなるので、治療を生活に組み込んでいかなくては。」・・・今こうして週に1回の通院を1年あまり続けてきて、治療が私の生活の中心(とまで言っては職場に申し訳ないけれど)というか軸になっているのは確かだ。治療を軸にして今の私の生活が回っている。
これからも命をつなぐためにきちんと治療に通います。

2009.7.28 ハーセプチン53回目
 今日は4週間に1度になって初めての皮膚科診察の日。2月の最初、タキソテールの副作用から頬の皮膚がむけ、目の周りがただれ、顔全体の色素沈着、爪の痛み等々で診ていただくことになって以来、毎週、2週に1度、3週に1度、と間隔があき、ようやく今回の4週に1度になった。今日は両足の親指の爪を見ていただく。「はがれるのは時間の問題」とのことで、なるべくやわらかく自然に取れるようにとサリチル酸ワセリンを処方していただいた。これからはお風呂あがりに塗布してラップでくるんで寝ることになる。今まで手の爪もワセリン塗布+ラップをしてきたが、おかげさまでずいぶんよくなってきた。
 2週間前「脱皮」のお話をしたが、確かに医学用語ではないけれど「脱皮」に間違いないのだそうで、(医学的には表皮剥離)、新しい皮がちゃんと出てきて入れ替わっている、ということはよいことなのだそうだ。一皮むけていい女、になれればよいのだが・・・。
 その後内科へ。皮膚科での受診情報はすでに先生のパソコンにも入っていて足爪の話題から。先週は心配だった頭痛もなく胸の鈍痛・圧痛と足の痺れ、だるさ以外は特に変わったことがないとご報告。予定通り今日はハーセプチンの点滴。次回は月初めの採血後、診察になる。
 点滴中の今日の一冊は、小川洋子さんの「犬のしっぽを撫でながら」。集英社文庫・夏の一冊(ナツイチ)のエッセイ集。「博士の愛した公式」をめぐる数学の美しさ、「アンネ・フランクへの旅」等、自分も少女の頃一生懸命読んだ「アンネの日記」をもう一度読もうかと思わせられる彼女の素敵な作品が生まれるまでのお話等。一気に読み終わる。
 その後ちょっと眠いかなと眼をつぶると「終わりですよ。」と看護師さんの声。ハーセプチンを生理食塩水に換えていただいたことも知らないほど初めて点滴椅子で爆睡した。「よく寝ていましたね、声かけるのためらったわ~」と言われ、思わずびっくり。ずいぶんずうずうしくなったものだ。最初の頃はとても緊張して、経過時間と点滴の残量を比べてはちゃんと落ちているか暗算していたりしたのに・・・。
あまりに暑く頭が蒸れるので、先週から家でもかぶっていたバンダナや帽子をとることにした。息子が(私のはげ頭は)「見たくない」と涙ぐんだのでずっと我慢していたのだけれど、夫が「ママの頭があせもになってイライラされるよりいいじゃないか、うちには一休さんが一人いると思って」って、・・・一休さんですか?!難しいお年頃の息子だけれど、1週間して私のクリ坊頭にも慣れてくれたので、外出以外はかつらの暑苦しさから開放されている。
 これからどんどん抜けていくのではなくて、今は芝生のようだけれど、どんどん生えてくるのだからいいじゃない、とようやく自分でも言えるようになったのだ。
明日は職場の健康診断。去年は肺の影について連絡してもらったけれど、最初に連絡があったときは、今度は胃も・・・と勘違いして慌てふためいた記憶がある。検診は大切だけれど、結果が出るまでやっぱり不安だ。
 早いもので次週は8月。東京とはいっても田舎の自宅。窓の外から聞こえる蝉の声がとても大きい。短い夏の命の燃焼を感じる。

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