ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2013.2.27 熱気球で思い出すこと

2013-02-27 20:19:41 | 日記
 エジプトのルクソールで熱気球が爆発墜落、日本人観光客を含む19名が犠牲となった。邦人はいずれも60代のご夫婦2組だという。
 先日もグアムで邦人の犠牲者が出たばかり。結婚式やご夫婦で観光旅行という楽しい筈の旅が、一瞬にして暗転した海外での事故に心が塞ぐ。突然命を落とされた方たちのご冥福を祈りたい。

 熱気球には一度乗ったことがある。
 息子が小学校低学年の頃、10年近く昔のことである。だんだん体力もついて、安近短のひたすらプールでまったりというリゾート旅行から、観光にも付いてこられるようになってきた頃だ。オセアニアなら季節は逆だけれど時差もないし、夜便で寝て行けるし、ということで選んだのが中でも一番近かったオーストラリアのケアンズだった。

 高所恐怖症の夫はあまり気乗りがしなかったのかもしれないけれど、こんなことでもなければ経験出来ないことだし、と高い所好きの私は思い切って、当時は結構高額だったオプショナルツアーを申し込んだ。
 ツアーは、早朝に熱気球に乗った後、牧場のレストランで遅めの朝食という日程だったと記憶している。
 前夜、「明朝早いから早く寝なくては・・・」と言いつつもそうそう早寝もできず、しっかり目覚ましをかけて寝た。3時半だったか4時だったか・・・。が、私はなかなか寝付けず、ふと気付くともう目覚ましが鳴っている・・・つもりだった。

 とんでもない! 鳴り響いているのはモーニングコールどころか、集合場所である宿泊ホテルのロビーに降りてこない私たち3人に業を煮やしたツアーガイドさんからの“最後通牒”の電話だったのだ。
 一瞬、何が起こったのかわからない。そんな状況でも我が家の男どもは高いびき!である(我が家は、私がコケれば、皆コケる、のである。)。
 「あと10分だけ待ちますから・・・」と言われ、とにかく慌てて2人を起こし、最低限の身支度をさせてロビーに駆け降りた。

 顔を洗って歯磨きをして着替えるのが精一杯。当然、お化粧やブローどころではない。その時の写真を見ると、息子は洋服と色の合わない派手なストライプの靴下にサンダル履きだし、私も撫でつけたつもりの髪の毛がハネているし、なんともトホホ・・・であった。
 私たちの寝坊の所為で足止めされ、ただでさえ眠くて不機嫌なツアーの皆さんからの冷ややかな視線を浴びつつ、お詫びをして小さくなったままマイクロバスだかバンだったかに乗り込んで、気球の発着場所に向かった。
 後にも先にも、旅先でこんな大失態を演じたのはこれ一回である。

 が、問題はその次だった。あろうことか、夫と息子にはお手洗いに行かせたのに、私は行きそびれていた。道中も気球発着所にもお手洗いなど、ない。草原の真っ只中である。
 当然、出かける前は何も飲まず食わずだったけれど、寝起きである。お手洗いに行けずに・・・なんと緊急事態だったことか。外はまだ暗い。車に揺られつつ、じっと下を向いて他のことを考える切ない時間であった。ああ、男の子だったらよかったのに、と心底思った。

 発着場所に到着する頃、ようやく太陽が昇り、眩しい朝焼けとともに眼の前では色鮮やかな沢山の気球があちこちで上がり始め、それは感動的な景色だった。
 大きなバスケットに乗り込み(この時も少しでも下腹部を圧迫しないように必死だった。)、いざフワリと舞い上がった後は、バーナーの凄い音も気にならないほど。文字通り、別世界だ。
 高すぎず、低すぎず、まさしく鳥になって悠々と空を飛んでいる気分。あっという間の1時間だった。下を見れば、カンガルーが飛び跳ねているところまではっきり見える。気球に乗っている姿を空から撮影した写真にもしっかりおさまって、無事帰着した。

 素晴らしかった空中散歩に興奮しているけれど、それでもずっと(早くお手洗いに行かせて・・・)状態が恐怖であった。帰着してからは、乗客皆で大きなバルーンを折り畳むお片付けのイベント付き。息子は大喜びでその上で飛び跳ねて、現地の男性から注意されていたけれど。私は一刻も早く片づけてお手洗いへ・・・という状態。気もそぞろのまま、再びバンに乗りこんで朝食レストランへ向かった。

 何はさておき、お手洗いへ直行。危機一髪で粗相をしないで済んだけれど、本当に今でも思い出すと腎臓が痛むほどの大変な思い出だ。この間抜けな難行苦行に耐えてくれた我が腎臓と膀胱に感謝である。

 そんなわけで、情けないことに私にとっては熱気球体験=お手洗い緊急事態、である。
コメント (2)
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