先日、つれあいが自宅でお茶会を開き、懐かしい友人が訪ねてきてくれた。香港にいる頃のお茶会は、何かと中華やアジアに関係が深い人が多かったが、今回はその辺りに接点がない人もいて、いろいろと素朴なギモンをぶつけられた。例えば・・・
「北京語(標準中国語)と広東語が違うって、方言ってレベルじゃなく違うんですか? 通じない?」彼女はフランス語が専門なので、フランス語を例に挙げることにした。「北京語がフランス語だとしたら、広東語はスペイン語だと思って」
be動詞にあたるものが、北京語では「是」(shi)だが広東語では「係」(hai)。否定語が「不」(bu)に対して「口吾」(m)(口へんに吾で一字)。「あなたは日本人ですか?」はこうなる。
北京語:你是日本人嗎?/你是不是日本人?(にぃしぃりーべんれんま?/にぃしぶしりーべんれん?)
広東語:你係[口吾]係日本人呀?(ねいはいむはいやっぷんやんな?)
この音を聞いただけで、違う~~~ということがわかっていただけると思う。
北京語では嗎?をつけるだけで疑問文にしても、是不是~と動詞+不+動詞で疑問文にしてもいいのだが、広東語では係[口吾]係~と動詞+[口吾]+動詞にした上に、最後に呀(a)?をつけなければいけない。(これをちゃんとつけないと、香港人は質問されてる感じがしないらしい)
北京と香港の距離は2000km近く。パリからアテネやカイロに行くよりは近いが、ヘルシンキに行くよりは若干遠い。マドリッドやベルリンでは、往復してもおつりがくる。これだけ距離が離れていたらヨーロッパでは違う言語で当たり前なのが、たまたま政治的に同じ国というだけで、同じ言語?と思われてしまうわけだ。実際、漢字を共用していなかったら、中国全土で中国語を通じるようにさせること自体、無理だったかも。現在では一応、どこの地域の人も標準中国語を話せる。ただ、発音の地方差はかなりすごいものがある^^; 発音を聞いただけでどこの出身か当てられる、中国語版ヒギンズ教授がいたりして(笑) 各地で家の中では地方言語(広東語・客家語・上海語・潮州語・福建語・四川語・・・)、学校や職場では標準中国語を話している人が相当数にのぼると思われる。
実は自分のハンドルネームを決める時、北京語と広東語の習慣の違いを知らずに失敗した。本名(姓)を広東語にするとseui hoとなり、既婚女性の敬称・太太(たいたい)と合わせてseui ho太太(そいほーたいたい)と広東語の先生には呼ばれていた。真ん中を取ってHO太(ほーたい)にしたのだが、香港では*さんの奥さんを*太(*たい)と呼ぶことがよくあるので、「HOさんの奥さん?」と中華圏に関係がある人は思ってくれるだろうと期待していた。ところが、中国語が分からない人はもちろん、わかる人も全然気づいてくれない。「ほたさん」「ほーたさん」と呼ばれたり、男だと思われたことまである。紆余曲折の後にわかったのは、北京語では「太(たい)」一文字だけでは「奥さん」の敬称にならず、必ず「太太(たいたい)」としなければならないということだった。「陳太」「何太」でいいのは広東語だけだったのだ! 当然、広東語を知らない人は「太太の太」とは思いつきもしない、、、もう慣れてしまったのでどうでもいいが。あ、「太」は敬称なんだから、「HO太さん」は敬称ダブってる?
香港政庁のNo.2だったアンソン・チャン(陳方安生)女史は、「陳太」(ちゃんたい)と呼ばれていた。夫の姓を名乗るキャリアウーマンが○太と呼ばれるのはなんかカッコいい。一方、大富豪の奥様は○夫人(ふーやん)と呼ばれて、チャリティイベントに出てきたりする。北京ではお手伝いさんが奥さんを呼ぶのも「夫人」(ふーれん)だったけど、ちょっと格が違いすぎ(汗)
友人の素朴なギモン第2弾については次回。