イタグレと暮らす戌年男のブログ

 イタリアングレーハウンド(イタグレ)と過ごす中で、家族、趣味、出来事についての感想などを書きたいです。
 

用意周到な計画

2020-07-07 09:43:34 | 
 新潮文庫「点と線」(松本清張)。

 NHK出版新書『「松本清張」で読む昭和史』(原武史)を読んだことで、本棚にあった「点と線」を読み返そうと思いました。

 高校3年生の時に読んでいることが、自分の読書録に残っているんだけれど、その時の記憶はありません。
 2007年にドラマがあって、それで読み直したいとあらためて買いました。
 それを再び読んだことに。
 
 原武史さんが解説していたことが頭に残っていたので、ある程度解決への道筋は予想できたのですが、でも、意外な感じがしました。

 まず、用意周到な計画に圧倒されたというか、もちろん、実際の事件ではなく、筆者の考えたことなんだけれど、本当に細かく考えられている。

 結果的に、だからどこかに嘘があるんじゃないか。虚実でいえば、虚があるんじゃないかと考えられたわけだけど。

 最近だと、カルロス・ゴーン氏が国外に出たときの行動。
 用意周到な計画だったんでしょうね。気付かれたら相当なことになったと思います。
 そのリスクを考えた上で、実行。

 「点と線」では、情死と思われたことを事件として考え、謎を解いていくのですが、こちらも事前に試してなくて、ぶっつけ本番で、完遂。
 しかし、それを暴いてしまいました。

 読み終わってすっきりしたかというと、そうではなかったです。
 奥さんが結核で静養。週に1回は静養地に見舞いというか、様子を見に行く夫。
 いい夫婦のようでいて、その裏に男女の難しさ。それが結末を書いている部分で、何だかすごく冷たい話のように感じてしまって。

 結局は、官僚の汚職事件をどうもみ消すかという、そこに行き着くんだけれど、それは今も同じ。上の立場の人は罪を逃れて、逆に出世。真相を知る、あるいは一番の実働者が命を絶って、事件をわからないものにしてしまう。
 その点では、昭和32年に書かれた当時と、今と同じことであるという、何だかやりきれないものがあるのも、すっきりしない部分のように思います。


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