よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

講演会の補足(日本助産師会)

2010年01月12日 | 健康医療サービスイノベーション
先週末、日本助産師会@東京で講演。テーマは、『病院経営の視点からみた助産マネジメント~助産師外来・院内助産所開設のキーポイント~』

2時間ではちょっと少なめでした。少子高齢化が進み人口が減る国はなかなか成長・発展しません。ではどうするか?人口というものは人為的に操作が難しいものですが、先進国では悩みのタネの一つです。政策という点から考慮すべき2つのオプションがあります。

(1)フランスのPACS
フランスでは1999年にPACS(連帯市民協約)法というものが成立し、同棲カップルにも夫婦と同じ権利が与えられるようになった。そのひとつの結果として出生率が上昇に転じている。

http://trickystar.blog59.fc2.com/blog-entry-51.html

<以下貼付け>

歴史的な流れのなかで、人工中絶、ピル解禁、契約結婚、同棲、通い婚など、時流に合わせて規制緩和がすすみ、結婚と事実婚の制度上の恩恵にかかわる格差が縮まり非婚カップルが増えた。フランスで結婚を選ばない、いわゆる「非婚カップル」が一般化したのは、五月革命のショックを経て、結婚と事実婚の間の格差が縮まり、事実婚が限りなく結婚に近づいていった結果であると言われる。しかし実際のところ、五月革命の直後しばらくの間、婚姻数は増え続け、事実婚は70年代後半から急増し始めた。とはいえ、地域格差はある。パリを中心とした大都市と、地方とではカップル形態もことなり、「結婚」が重視される地方も依然多い。大都会を中心に以下のような形態が見直されるようになってきた。①同棲(ユニオン・リーブル)②近くに住み互いに行き来③PACS④結婚、など。

<以上貼付け>

(2)移民の受け入れ
移民を大量に受け入れる。ただし移民の70~80%位は中国人となる可能性が高いので様々な軋轢が想定されるが・・・。フランスやドイツでは移民増加による社会問題が頭痛の種になっている。

               ***

以上は国レベルの政策の話。現場ではもっと細かなことが問題になっています。

さて、現状では出産の98%は病院で行われており、助産施設での出産は2%位にとどまっています。医療費抑制政策、産科医師の大きな業務負担、産科医師に対する訴訟リスクなどが複合して、医療機関での産科が脆弱になってきています。これららの問題に対処するために、

・助産施設を院内で開く、拡充させる→助産外来・院内助産施設の拡充
・助産師による独立起業→独立型助産施設の拡大

がクローズアップされてきているのです。この流れは、うまく行えば受益者である妊婦さん、地域医療の利益になります。

まずは、病院(医療行為)と助産施設(非医療行為)の役割分担を整えて、形式主義ではない現場の仕事をやりやすくしてスムーズな連携を実現するワークフローを確立すべきです。

ところが、千葉県では、「超音波は診断になるため助産師は診断ができない」などという意見が医師会から出され、助産施設の業務を圧迫している歪んだ現状があります。

嘱託医の監督下で、超音波を活用するテクノロジーを使って、頭位・骨盤位胎盤の位置・羊水量・頭の大きさ・大腿骨頭の長さ心拍数の状況を観察するのは、助産師にとって業務上必要なことで、妊婦の利益になることです。これらの業務は厚生労働省によっても認められています。

厚生労働省によって認可されている業務が、地域の医師会の声によって円滑に出来なくなるのは問題です。

「超音波検査は、助産師が嘱託医の監督下で行い業務遂行のための状況観察をおこなうものだから必要」、「超音波検査から得る情報によって助産師が診断するのではない」ということを共有すべきです。

これをやるなという声が医師会から上がるということは、尋常ではありません。またそれを真に受ける行政もどうかしている。一時が万事、力関係や声の大きさに依拠するインフォーマルな政治的意図で誘導されいて、合意形成のための民主的な議論とは言えません。

日本助産師会としては政策分析・提言機能を強化して、健全な合意形成を促し、そのプロセスの中で職能団体としてのポジショニングを主張してゆくべきでしょう。