よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

6/23 いのへる寺子屋セミナー

2011年05月26日 | 健康医療サービスイノベーション

いのへる=Research Forum of Health Services Innovation寺子屋無料セミナーを開きます。

今回は国際医療福祉大学の松浦清先生をお呼びして、「包括評価導入による病院経営変革とマーケティング戦略」についてディスカッションを深めます。松浦清先生は私が渡米する前、私のボスだった方です。温故知新。

6/23、18:30~虎ノ門の金沢工業大学で開きます。

詳細と申し見込みはコチラからです。


原子力安全委員「低線量放射線の健康影響について」という文書

2011年05月22日 | 健康医療サービスイノベーション

先週書いた第22講:原発過酷事故、その「失敗の本質」を問うは、筆者の期待に反して解説記事週間閲覧数トップでした。辛辣な論説が、こともあろうに、原発を巡る政・産・学・官共同体の出店的な日経グループの媒体で週間閲覧数トップとは、尋常ではありません。

あるいは、日経連(清水正孝前東京電力社長は日経連副会長)ベッタリの日経グループの体質が変化しているのかも知れません。だとしたら、いい傾向です。

さて、原子力安全委員会が、「低線量放射線の健康影響について」という文書を5/20に発表しました。

「確定的影響」と「確率的影響」についてはこのブログでもとりあげています。上記文書は、確率的影響については、「100mSv以下の被ばく線量では、がんリスクが見込まれるものの、統計的な不確かさが大きく疫学的手法によってがん等の確率的影響のリスクを直接明らかに示すことはできない」というICRP(国際放射線防護委員会)の見解を引用したうえで、「2009年の日本人のがん死亡率は約20%(がん罹患率(2005年)は約50%)で、年々変動しております。また、地域毎、がんの種別毎のがん死亡率の変動もあります。100mSvの被ばくによるがん死亡率は、その変動の範囲の中にあるとも言えます」と結んでいます。

論拠は、「国際放射線防護委員会の2007年勧告」とされています。

つまり、今後、100mSv以下の被ばく線量によってがん死亡率が増えたとしても、それは毎年変動している日本人全体のがん死亡率の変動内に収まる、つまり特段の問題はない、ということを言っています。

まったくもっておかしな結論です。

まず、精密な議論をするためには、年齢区分別にがん死をとらえなければいけません。そして、これから生まれてくるであろういのちに注意を向ける必要があります。


上の図は、京都大学助教の小出裕章氏が、講演会や国会招致などで用いている人口1万人あたりのがん死亡を年代階層ごとに表示したものです。

若ければ若いほど、がんの発症に対して感受性が高くなり(敏感になり)、年をとるほど鈍感になります。

さて、ここで問題にしたいのは、0歳未満のいのちです。

卵子と精子がであって、受精卵となり、やがて胚となってゆきます。日本産科婦人科学学会では、妊娠8週未満を「胚芽」と呼び、8週以降を「胎児」と呼んでいます。


胚の発生後14日には、原始線条が現れて、臓器の分化が著しく発現して、人としての形状を顕しはじめます。細胞分裂が急速に進むので、DNAと染色体へのダメージも修復されることなく、分裂して引き継がれることが多くなります。これが将来、胎内死亡、胎内健康被害、そして生まれてからの健康被害を招くことになります。

したがって、原子力安全委員会が引用した「国際放射線防護委員会の2007年勧告」では、「子宮内医療被ばくに関する最大の症例対照研究は,すべてのタイプの小児がんが増加する証拠を提供した。委員会は,子宮内被ばく後の放射線誘発固形がんのリスクに関して,特段の不確実性が存在することを認識している。委員会は,子宮内被ばく後の生涯がんリスクは,小児期早期の被ばく後のリスクと同様で,最大でも集団のリスクのおよそ3倍と仮定することが慎重であると考える」と明記しています。

引用するのならば原子力安全委員会は、この部分の引用もすべきです。

ベラルーシでの人口10万人あたりの甲状腺疾患の発症率を示したものが上の図です。チェルノブイリ事故発生から6年後あたりから発症率が上がっているのが分かります。子どもはやがて青年になってゆいくので、赤(子ども)の発症率は下がるように見えますが、青色(20-46歳)の発症率は1990年代にはいってから急増しています。

こうして長期的な影響が尾を引きます。日本はベラルーシよりも公衆衛生、医療管理のレベルは全般的には高く(国民皆保険制度、検診制度、医療統計など)、今後より厳格なトラッキングが大切になります。

特に、放射性物質の降下量が多く、土壌汚染が強い多地域(資料1資料2)に、どの年齢のとき(生まれる前も含め)に居たのかといいうデータが重要になってきます。

以上により、今後、長期的に観察すれば、100mSv以下の低量被ばく、内部被ばくによるがん死亡率は、従来の変動の範囲内におさまる可能性は少ないと見立てられます。がんに注目が集まっていますが、なにも疾患はがんに限定はされません。その他の疾患についても注意深く発症率の将来的な推移をトラッキングするべきでしょう。

海外の研究者からはぜひデータが欲しいだの、共同研究をやらせてくれだの色々とリクエストが増えてきます。海外の研究者はチェルノブイリ以降のまさに千載一遇のチャンスとは表立っては言ってきませんが、人類史上稀に見る規模の大量放射性物質の環境への放出には間違いなく、疫学、毒物、公衆衛生、医療管理の研究者から見れば、喉から手がでるほどの「観察対象」のようです。

チェルノブイリ事故については原発推進派、反あるいは脱原発派で、データの収集方法、解釈に大きな乖離があり、それぞれが否定しあっています。科学には立場の違いはないはずですが、実は立場によって発表されるデータと解釈に雲泥の差があるのです。

ほっておけば、今回もそうなるでしょう。

・・・とても複雑な気持ちがします。原発擁護・反対の立場に左右されることがない公正な立場からの長期的な研究が待たれることろです。まずはなんといっても、放射性物質の不要な体内への取り込み=内部被ばくをさけることが大切です。そして文部科学省は、可及的速やかにこどもを対象にした現行の20mSv規準を、是正することがぜひとも必要です。

未来はこども達によって創られます。日本の未来に禍根を残してはいけません。それが大人の役割です。


4月中旬、NHKに一瞬映った 「WSPEEDI」 3月15日被ばく予測マップ

2011年05月16日 | 健康医療サービスイノベーション

Peace Philosophy Centreさんのブログに注目すべき情報が載っていますので以下コピペしておきます。Peace Philosophy Centreさん、感謝です。

首都圏在住者の方々(私も含めて)は念のため下の図を見ておきましょう。あまり気持ちのよい図ではありませんが。

<以下貼り付け>

4月中旬、NHKに一瞬映った 「WSPEEDI」 3月15日被ばく予測マップ

文部科学省原子力安全課原子力防災ネットワーク「環境防災 Nネット」のサイトにあるように、文科省はダイナミックな三宅島噴火のシミュレーションを作れるSPEEDI-MPというものを持っています。しかし福島事故については公表しておらず、小佐古辞任演説でも情報開示が求められています。

(小佐古辞任文より) 
とりわけ原子力安全委員会は、原子力災害対策において、技術的な指導・助言の中核をなすべき組織ですが、法に基づく手順遂行、放射線防護の基本に基づく判断に随分欠けた所があるように見受けました。例えば、住民の放射線被ばく線量(既に被ばくしたもの、これから被曝すると予測されるもの)は、緊急時迅速放射能予測ネットワークシステム(SPEEDI)によりなされるべきものでありますが、それが法令等に定められている手順どおりに運用されていない。法令、指針等には放射能放出の線源項の決定が困難であることを前提にした定めがあるが、この手順はとられず、その計算結果は使用できる環境下にありながらきちんと活用されなかった。また、公衆の被ばくの状況もSPEEDIにより迅速に評価できるようになっているが、その結果も迅速に公表されていない。

 初期のプリュームのサブマージョンに基づく甲状腺の被ばくによる等価線量、とりわけ小児の甲状腺の等価線量については、その数値を20、30km圏の近傍のみならず、福島県全域、茨城県、栃木県、群馬県、他の関東、東北の全域にわたって、隠さず迅速に公開すべきである。さらに、文部科学省所管の日本原子力研究開発機構によるWSPEEDIシステム(数10kmから数1000kmの広域をカバーできるシステム)のデータを隠さず開示し、福井県*、茨城県、栃木県、群馬県のみならず、関東、東北全域の、公衆の甲状腺等価線量、並びに実効線量を隠さず国民に開示すべきである。 (*原文ママ)
「福井県*(*原文ママ)」とあるのは、文脈からも福島県のことだろう。小佐古氏は「福島県、茨城県、栃木県、群馬県のみならず、関東、東北全域の、公衆の甲状腺等価線量、並びに実効線量を隠さず国民に開示すべき」ということで、実際自分はそのデータを見ていてその深刻さを把握しているということを訴えているように聞こえます。

実はこれに相当するような情報が4月半ばNHKニュースで一瞬流れた、との情報が埼玉の自称「天狗」さんから入り、その画面を保存した画像ファイルを送ってくれました。


私は見たことがない画像だったので驚きました。「天狗」さんによると、これは公表されていないとのことです。このNHKの画面にも、「放射性物質の予測 データ公表見送る」とのキャプションが
あります。「公表見送る」のにどうしてこの画面で公表しているのか不可解ですが、NHKが入手した一部を流したということなのかと察します。これは「先月(3月)16日に計算されていた」 I-131 infant organ dose 2011_03_15_15H ということなので、放射性ヨウ素131による乳児の臓器被ばくの程度の予測で、3月15日15時時点での積算値ということなのではないかと思います。文科省が他に公表しているSPEEDIの被ばく線量予測は、3月12日6:00からになっているので、これもその時点からの積算値ではないかと想像されます。いずれにせよ、一番大量の放射線が放出された後の3月15日午後までのデータだということは意味深いです。3月14日から15日早朝にかけては福島第一で悲惨な事故が相次ぎました。14日昼前、3号機は爆発しました。これは白煙で覆われた12日の1号機水素爆発とは違い、黒煙が高く上がった爆発で1号機の爆発とは質の違うものだと言われています。2号機は14日夕方燃料棒全体露出に続き15日早朝、圧力抑制室で爆発がありました。4号機も15日早朝に爆発しました。これだけ大事故が続いた直後の乳児の被ばく予想というのは重要と思います。上記のマップに「天狗」さんは地図を重ね、埼玉県のご自分が住んでいる町がオレンジ色の地帯(1mSV-10mSV)に入っていたことを知り、危機感を募らせました。


これは広く共有した方がいい情報と思い、ここに掲載しました。分析、コメント、情報提供等、歓迎します。( ツイッター @PeacePhilosophy )あらためて、どうしてこのように重要な情報を3月16日時点で計算しておいて公表しないか、人命軽視も甚だしいと思います。

文科省が既に発表したSPEEDI計算結果についてはここをご覧ください。

文部科学省 緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)による計算結果

文科省東日本大震災関連情報

 

<以上貼り付け>

(私の意見)

いわき、北茨城、日立、三戸というように茨城県を通り、千葉県北西部を横切り、北本、熊谷など埼玉県の中央部を通り、群馬県前橋あたりまで、円弧を描くように、1000mSv~10,000mSvのオレンジ帯が伸びています。

最も大量の放射性物質が放出された3月15日の翌日の3月16日の時点での予測計算値をグラフィック化したものです。被ばく予測データとしては、とても重要なものです。

【疑問】

①なぜ3月16日の時点でかくも重要な予測データ公表されなかったのか?

②なぜNHKは4月半ばの時点で「一瞬」この画像を流したのか?そこには公衆に知らせておこうという意図があったのか?

③小佐古氏は、上記予測データとそれが意味する甚大な事柄を深く理解していたはずです。官邸が「守秘義務」をたてにとって圧力をかけたとされていますが、小佐古氏は「公益通報者保護法」をタテにしてディフェンスしなかったのでしょうか?

引き続き、上記の3点調べます。

 


日本医師会も20ミリシーベルト問題を非難・糾弾

2011年05月15日 | 健康医療サービスイノベーション

5/12になってようやく日本医師会が文部科学省「福島県内の学校・校庭等の利用判断における 暫定的な考え方」に対する日本医師会の見解の見解を公表しました。日本医師会は、日本に居住するすべての人々の健康・医療サービスをキュア、ケアするなかで大きな影響力を持つ、専門職の最大職能団体です。(ときとして圧力団体にもなってきましたが)

<以下貼り付け>

平成 23 年 5 月 12 日 

文部科学省「福島県内の学校・校庭等の利用判断における暫定的な考え方」に対する日本医師会の見解 

 

社団法人 日本医師会 

 文部科学省は、4 月 19 日付けで、福島県内の学校の校庭利用等に係る限界放射線量を示す通知を福島県知事、福島県教育委員会等に対して発出した。 

 この通知では、幼児、児童、生徒が受ける放射線量の限界を年間20 ミリシーベルトと暫定的に規定している。そこから 16 時間が屋内(木造)、8 時間が屋外という生活パターンを想定して、1 時間当たりの限界空間線量率を屋外 3.8 マイクロシーベルト、屋内 1.52 マイクロシーベルトとし、これを下回る学校では年間 20 ミリシーベルトを超えることはないとしている。 

 しかし、そもそもこの数値の根拠としている国際放射線防護委員会(ICRP)が 3 月 21 日に発表した声明では「今回のような非常事態が収束した後の一般公衆における参考レベルとして、1~20 ミリシーベルト/年の範囲で考えることも可能」としているにすぎない。 

この 1~20 ミリシーベルトを最大値の 20 ミリシーベルトとして扱った科学的根拠が不明確である。また成人と比較し、成長期にある子どもたちの放射線感受性の高さを考慮すると、国の対応はより慎重であるべきと考える。 

 成人についてももちろんであるが、とくに小児については、可能な限り放射線被曝量を減らすことに最大限の努力をすることが国の責務であり、これにより子どもたちの生命と健康を守ることこそが求められている。 

 国は幼稚園・保育園の園庭、学校の校庭、公園等の表面の土を入れ替えるなど環境の改善方法について、福島県下の学校等の設置者に対して検討を進めるよう通知を出したが、国として責任をもって対応することが必要である。 

 国ができうる最速・最大の方法で、子どもたちの放射線被曝量の減少に努めることを強く求めるものである。 

<以上貼り付け>

(私の意見)

この声明のポイントは2点あります。つまり、「1~20 ミリシーベルトを最大値の 20 ミリシーベルトとして扱った科学的根拠が不明確である」から、20ミリシーベルトの根拠を示せ。そして、「国ができうる最速・最大の方法で、子どもたちの放射線被曝量の減少に努めることを強く求めるものである」ということ。

 このブログでは、文科省の「福島県内の学校・校庭等の利用判断における暫定的な考え方」について「メチャクチャ」と書きましたが、日本医師会でも、ようやく場当たり的な基準について非難声明を出してくれました。できればもっと迅速に、かつ既存メディア、ネットメディアに対して会見を行いプロモーションしてくれればよかったですね。

さて、診断をして治療をするというのが伝統的に医師の業務の中心でしたが、近年ではそのワークフローを前後に引きのばして、健康増進・疾患予防→アセスメント→診断→治療計画→介入→評価となりつつあります。

放射線物質が発する放射能の低線量被ばく、内部被ばくは、明らかに健康増進・疾患の予防に直結する課題です。今後30年以上に渡って続く、主として低線量被ばく、内部被ばくが引き起こす多様な疾患、健康被害に見舞われる患者を現場でキュア、ケアする医師の最大職能団体がこの声明を出したことの意味は大きいです。

権力から独立した大規模な医学・社会医学・医療管理・疫学・毒物研究調査スキームをデザインして、今後の健康被害の動向を科学的にフォローすることも大切です。いずれ、暗く、根の深い、陰湿な社会的な問題に発展することが必至なので、このさい、未来に向けたアクションを始めるべきなのです。

①子どもたち、これから生まれてくる赤ちゃんは、日本の未来です。②すぐそこに来ている未来の健康被害の動向を科学的にフォローすること。このように未来をケアしてもらえれば、日本医師会をポジティブに再評価したいと思います。

内に閉じた開業医中心の利益誘導、既得権益の維持だけではいけません。

 


東京も「チェルノブイリ第3レベル」並みの汚染

2011年05月13日 | 健康医療サービスイノベーション

事故発生から約2ヶ月経ってやっと3月25日現在までのヨウ素131の表面沈着量を予測するSPEEDIのデータが公開されました。3/25の時点で行われた予測が、5月の連休明けに出てきました。

あと出しジャンケンのようなものです。

パブリックヘルス(みんなの健康)を守りたいのならば、政府はもっと早く公表すべきでした。ほかにもっと守りたいものがあったようですね。

さて結論からいうと、自分や家族の健康を守るために、放射性物質の量を入れ込んで判断することが大切な時代になってしまいました。テレビ、新聞は、この重要な問題についてダンマリを決め込んでいます。ネットをよく調べて、自分や家族(子孫も含めて)の健康を守りましょう。

まずは、下の図で、自分や気になる方が住んでいる地域の目星をつけて、だいたいどの色なのかを特定してみてください。それから下に引用している文章などを参考にして、自分が負担している(というか正確には負担させられている)健康被害リスクを考えてみましょう。

このブログでも書いてきた、低線量被ばく、晩発性健康被害が、首都圏でも今後じわっと起こるであろうと推測するにたる重大なデータです。人口が一極集中している東京と首都圏に確率的影響が出る地域だからです。確率的影響と確定的影響についてはこちら



黄色の地域:1,000,000-10,000,000Bq/m2
福島県東部(避難エリア)にとどまらず郡山市北部から福島市中心地、宮城県白石市南部まで拡がっている。いわき市より南の北茨城県茨城市・日立市までも含む。

緑色の地域:100,000-1,000,000Bq/m2
福島県中部の大部分、宮城県、山形県の南東部、茨城県のほぼ全域。栃木県はまばら状態。千葉県の東北部。埼玉県の中部、西部。東京都は奥多摩を除くほぼ全域。神奈川県はまだら状況。

水色の地域:10,000-100,000Bq/m2
東北・関東・静岡・山梨のほぼ全域のエリア。

青色の地域:1,000-10,000Bq/m2
東海地方の一部、日本海側の海岸線に近いところから静岡県北部の山岳地方にかけてのエリア。

           ◇    ◇     ◇    

上記についてこちらのブログでのコメントを引用しておきます。

<以下貼り付け>

■ チェルノブイリ汚染区分に当てはめてみると・・・

最後にチェルノブイリの汚染区分と比較しておこう。ここでは先述した理由から予測値の最高値を使って計算する。

東京:77,000Bq/m2(MBq/km2)=2.1Ci/km2
茨城(北茨城・日立除く):125,000Bq/m2(MBq/km2)=3.4Ci/km2
福島市中心地:500,000Bq/m2(MBq/km2)=13.5Ci/km2
※Ci(キュリー)=37000MBq(MBqは百万ベクレル)


福島市中心地の13.5Ci/km2とは、自主移住が進められたチェルノブイリの第二汚染区分(5-15Ci/km2)に匹敵する。東京の2.1Ci/km2はチェルノブイリの第三汚染区分(1-5Ci/km2)に匹敵する。この記事ですでに千葉市が第三区分に含まれると書いたが、WSPEEDIの情報から東京の大部分も第三区分に含まれる可能性が濃厚になった。この第三汚染区分は、チェルノブイリ災害から10年から20年の間に、その地域で呼吸しその地域の食品を食べていた人々(成人含む)の中でガンや白血病が増加したエリアである。

これらは3月25日までの堆積量の予測値であるが、もちろんその後もセシウムは放出され続けている。地表がコンクリートでかなり下水に流れたエリアを除けば、堆積量もさらに多くなっているはずだ。福島市近辺でもすでに第一汚染区分(15Ci/km2以上)つまりソ連が強制移住としたレベルにまで達しているかもしれない。航空モニタリングのデータでは30km圏外の飯舘村で81Ci/km2以上(セシウム137)というとんでもない値が出ている。


引き続き政府には、まだ隠し持っているすべてのデータ・予測値の公表と、一向に行われないプルトニウムやウランの計測を求めたい。また25人に1人の子供をガン死させる学校の基準や、国際基準より数十倍ゆるい食品・水の基準値を早急に見直し、徹底的な放射性物質の除去・排除に努めてもらいたい。

<以上貼り付け>


「福島大学原発災害支援フォーラム」について

2011年05月09日 | 健康医療サービスイノベーション

学校教育法第83条によると、大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的としている。原発事故とそれにともなう放射性物質の環境への拡散は、社会科学、自然科学、人文のあらゆる領域に新たな研究領域を提供しつつある。

事故現場の福島第一原発に最も近い福島大学は、その意味でこの新しい事象に接近するための「最先端」にいる。この状況下では、福島大学にこそ、あらゆるバイアス、誘導、操作から距離を置く「学の独立」が求められることになる。

「学の独立」を担保する主体は多様だ。教育・研究サービスのユーザである学生を筆頭に、国立大学法人の経営主体、各大学院、学部、付属教育・研究機関、学生組織、各教員、地域住民など大学の学の独立を担保するステークホルダーは多様だ。

原発事故と放射線物質拡散被害のただ中において、「学の独立」が不十分であるという状況を懸念する教員を中心とするステークホルダが、福島大学原発災害支援フォーラムを立ち上げた。


<以下貼り付け>

 

提言 「福島大学および県は、低線量被曝リスクについて慎重な立場を

(2011.4.27)

  


【はじめに】

福島第一原子力発電所の爆発事故により、大量の放射性物質が環境中にまき散らされました。私は、実際に「被曝」をしている当事者として、この身に降りかかるリスクについてできるだけ冷静に論じたいと思います。



【低線量被曝リスクについての既存見解】

ここで問題とするのは、積算で100mSv以下のいわゆる「低線量被曝」です。たとえば福島市では、事故から一ヶ月間の積算放射線量はおよそ3.5mSvであり、4月27日現在でも毎時1.5μSvを超えているので、人によっては今後一年間で10mSv程度の被曝量に達するケースもあるかもしれません。もちろんこれは外部被曝だけの値であり、内部被曝については別途考慮する必要があります。


現在のところ、低線量被曝の健康被害(たとえば晩発性のガン)についての見解は、世界的にみても一致しているわけではありません。大きくわけると、以下のような3つの立場が存在しています。なお、【 】内はそれを支持する主な機関です。 

ある量以下の被曝はまったく無害とする立場

【フランス医学・科学アカデミー】


被曝量が下がればリスクは減るものの、どんな低線量でもリスクはゼロではないとする立場

【アメリカ科学アカデミー, 原子放射線の影響に関する国連科学委員会, 国際放射線防護委員会(ICRP)】


低線量だからといって、必ずしもリスクは小さくならないとする立場

【欧州放射線リスク委員会(ECRR)】



これ以外にも、低線量被曝はむしろ人体に有益であることを強調する立場がありますが、これは①に含めて話を進めます。 

①から③のうち、どの立場が正しいのかはわかりません。ただ、控えめにいっても、②の立場が少数派ということはありません。このように未だ不十分な科学的知見のなか、少なくともいえるのは、②や③の立場があることを無視して①の立場のみを強調する態度は科学的ではない、ということです。


そもそも、なぜこのようにいろいろな立場が存在しているのでしょうか。その理由のひとつは、これまでの実証研究では100mSv以下の被曝が健康被害をもたらすという有意な結果が得られていない、ということにあると思われます。


その真偽のほどはわかりませんが、仮にそうだとしましょう。では、我々被曝者は、今後の実証的研究結果を待たなくてはならないのでしょうか? 低線量被曝と健康被害の因果関係が実証されるまで暫定的に安全とみなすのであれば、それは、犠牲者が出るまでは放っておくということを意味します。我々は誰しも、「サンプル」にされない権利を有しているはずです。


したがって、低線量被曝のリスクはゼロでないとの前提に立っておくことが、現時点では望ましい態度であると思われます。



【福島県および福島大学へのお願い】

福島県では、放射線被曝に対する県民の不安を取り除くため、県外の複数の専門家を、放射線健康リスク管理アドバイザーとして招聘しました。これらのアドバイザーは、低線量被曝の健康被害については無視できるという考えを持っており、実質的には先述の①の立場に相当すると思われます。


福島大学においても、公式ホームページの学長メッセージを読みますと、福島大学構内の放射線レベルであれば安全であると断言しております。また、県の放射線健康リスク管理アドバイザーを招いた講演会などを通じ、構内がいかに安全であるかを印象づけることに力を注いでいます。


しかし、低線量被曝リスクについては、先述したような②や③の立場が少なからず存在しているので、こういった「情報操作」は公正ではありません。したがって、次のことを要求します。


★県は、②ならびに③の立場の専門家もあわせてアドバイザーとして招聘すべきである。

  

★県および福島大学は、②や③の観点から低線量被曝のリスクが必ずしもゼロであると断言できないことを認識し、低線量被曝を防ぐための具体策(マスクや線量計の配布など)を講じるべきである。



【不確実性の評価】

低線量被曝のリスクがゼロでないとすれば、それはどれくらいと見積もられるのか。国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に従えばガンで死ぬリスクは1Svあたり0.05程度ですが、これが真実か否かは誰にも分かりません。実際の数値はもっと小さいかもしれませんが、逆にもっと大きいかもしれません。欧州放射線リスク委員会(ECRR)は、ICRPは内部被曝の影響を過小評価していると批判しています。


また、仮に0.05というリスク(たとえば10mSvの被曝なら1万人あたり5人がガンで亡くなる)が正しい値であるとしても、そのリスクの大きさを軽く受け止めるか深刻に受け止めるかを判断するのは、被曝する当事者です。


当事者に対して「そんな小さな確率は無視してよい」と簡単に片付ける態度は、もはや論外です。 


【最後に】

人々を不安にさせるような情報を与えないことは、短期的な利益をもたらすかもしれません。

しかしながら、そのことは、ずっと後になってから取り返しのつかない損失をもたらすかもしれません。


人を守り、人を作るのは五十年の計です。


目先の利益に拘らず、先々を見据えて人を守るのが行政の役割であり、先々を見据えて人を作るのが大学の役割であると信じています。

  

(文責:石田 葉月)


<以上貼り付け>


①の立場のみを強調する立場の代表は、3月20日より福島県知事の要請で、放射線健康リスク管理アドバイザーとして現地の被ばく医療に従事している山下俊一氏だろう。氏の主張は長崎大山下俊一教授語録に詳しい。

原発事故にともない拡散されている放射性物質による健康被害などを巡るリスク言説は、政・産・学・行・報複合体サイドに属する、属さないの立場の相違により全く異なる。この言説の相違は根が深い構造から生じているので、一気に収斂させることはできないだろう。

そのような状況下で、敢えて「人々を不安にさせるような情報を与えないことは、短期的な利益をもたらすかもしれません。しかしながら、そのことは、ずっと後になってから取り返しのつかない損失をもたらすかもしれません」として声をあげた福島大学原発災害支援フォーラムは意義深いものだと思う。

地表汚染マップ

2011年05月07日 | 健康医療サービスイノベーション

文部科学省は、米エネルギー省と協力して航空機で放射性物質の蓄積量を測った。その結果の一部が発表されたが、非常に深刻な状況が判明した。

北西方向にセシウム137が1平方メートルあたり300万~3000万ベクレルの汚染地域が帯状に伸びている。

30km圏外でも緑色(1平方メートルあたり60万~100万ベクレルの汚染地域)には丸森町、伊達市、川俣町、福島市、二本松市の一部が含まれてる。

30万~60万(薄い水色)の地域は飯館村あたりから曲がるようにして西南の方向に帯状に伸びている。福島市、二本松市、郡山市などが触れている。

チェルノブイリ原発事故では、セシウム137による汚染が55.5万ベクレル以上の地域が強制避難と移住の対象となった。上図の緑色1平方メートルあたり60万~100万ベクレルの汚染地域)の地域に近い薄い水色の地域(1平方メートルあたり30万~60万ベクレル汚染)は、55.5万ベクレルを越えているだろう。

しかし、これらの地域であっても5/7現在、計画的避難区域ではない。

そのような地域にも、多くの子供たちがいて汚染された学校に通わされている。「年間20マイクロシーベルト以下なら『安全』」なのか???

旧ソ連で強制避難・移住の対象となった地表汚染でも、2011年5月7日の日本ではほとんどケアされていない。・・・ということは、ひかえめに言っても現在の日本は1986年の旧ソ連よりも公衆衛生(public health)を尊重しない国、国民の健康被害を防ぎ、国民の生命を尊重しない国、ということになってしまった。

   だれしもが抱く率直な疑問。

   国と自治体はいったいだれのためにある?

   国民あっての国ではなかったのか?

さて、「直ちに人命・健康には影響しない」という常套文句は、下図の確定的影響を指して用いられるのならばいい。しかし、確率的影響にたいしては、この常套文句の範囲外。

地表汚染で怖いのはしいき値がある嘔吐、脱毛などの確定的影響に直接結びつくというよりも、癌、白血病(急性ではない)、子孫に伝わる遺伝的影響などにあらわれる確率的影響のほうだ。しきい値がないので、どこからどこまでが安全という範囲がない。(資料

国際放射線防護委員会の2007年勧告では、「100mSv程度において、がんおよび遺伝性疾患の発生確率は、最新知見を考慮の上、等価線量に比例するという仮定が科学的に見て妥当である」(下線部は松下)、とされている。わかりやすく言えば、べつに放射線に晒されていなくても、がんは自然にもできる。でも、無用な線量はないほうがいい。そのほうが健康のためにはいい、ということ。無用な放射線を体の内外から浴びないことが転ばぬ先の杖ということ。

こどもならば、20ミリシーベルトを越えなければ心配ない、というのは一見、100mSvの1/5なのでOKなように見えるが、そんなことはない。1/5の確率で危険に晒すことを推奨するということなのだ。そもそも、事故の前には、国際的に妥当とされている標準1mSvを国内で用いていたにもかかわらず、一気に20倍に引き上げた。

幼い子供、胎児、近未来に汚染された人体(傷ついた染色体、DNAを持つにいたった両親)から生まれてくるであろうあかちゃん。感受性が強く、より確率的影響を受けやすい生命を積極的にリスクにさらそうとしている。

とんでもないことだ。将来、健康被害が多く出てくることになるだろう。そうなると、医療費はさらに増加し現在の医療崩壊に深刻な拍車がかかりかねない。

European committee on radiationのバスビー教授は「日本政府は原子力産業を守るために、放射能の健康への被害を過小評価している」と指摘している。その中で、Criminally irresponsible(犯罪的無責任)という言葉を用いている。(Press TV記事

上に書いた「確定的影響」と「確率的影響」などについてはフリージャーナリストの岩上安身さんが、空本誠喜さんにインタビューしたビデオがわかりやすい。


放射性物質に安全な量などない

2011年05月03日 | 健康医療サービスイノベーション

New York TimesのUnsafe at Any DoseHELEN CALDICOTT Published: April 30, 2011)という記事が示唆的です。

中鬼さんという方が以下のように翻訳してくださっています。

2011

 

<以下貼り付け>

ニューヨークタイムズ(2011年4月30日)掲載

「安全な量などない」(Unsafe At Any Dose)

by ヘレン・コルディコット医師
(Founder of Physicians for Social Responsibility and Author of "Nuclear Power Is Not the Answer")

6週間前に初めて日本の福島第一原発の原子炉の損傷を聞いたときに、私は一つの事を確信しました。

格納容器や燃料プールが一つでも爆発を起こせば、北半球全体で癌の新しい発症が何百万も増加するのだ、と。

原発推進派はこれを否定するでしょう。先週おこなわれたチェルノブイリ事故25周年の集まりでも、「犠牲者はほとんどいなかったし生存者の子供たちに関しても遺伝的異常が見つかるケースはほとんどない」と何人もの人達が言っていました。石炭燃料に比べて原子力は安全だとか、福島近辺に住んでいる人達の健康についての楽観的予測も、そのような観点から簡単に導き出しているのです。

私のようにきちんと状況を理解している医者達にとっては、これはとてつもなく酷い情報で何の根拠もない議論だとすぐに分かります。チェルノブイリ事故の犠牲者の人数に関しては大きな議論がずっとなされています。International Atomic Energy Agency (IAEA)は約4000人があの事故が原因で癌を発病して亡くなっていると発表をしていますが、2009年にNew York Academy of Scienceのリポートでは、約100万人の人達が事故の影響で癌やそれ以外の病気にかかって亡くなっているという結論をだしています。更に、高濃度放射能の放出によってどれだけの流産が起きたかについては、遺伝子を破壊された胎児の人数を知ることはできないのでその犠牲は数に入っていません(ベラルーシやウクライナでは奇形で生まれた多くの子供達が施設に住んでいます)。

原子力事故は決して終わりがないのです。チェルノブイリ事故の放射能汚染による影響は、何十年もしくは何世代も時間がたたないと全貌を理解することができないのです。

広島と長崎のケースから分かるように、癌の発病は何年もの時間がかかります。白血病は5から10年ですが、癌となると15から60年かかったりします。更に、放射能が関係する変異体は劣性的に起こります。つまり、二つの劣性遺伝によって特殊な病気をもった子供が産まれるまでには何世代も時間がかかったりするのです。特殊な病気とは、私の専門である嚢胞性繊維症などのことです。要するに、私たちはこれからの将来にチェルノブイリや福島の事故で拡散された放射性物質によってどれくらいの癌や他の病気が発病されるのかまったく分からない状態なのです。

医者達はこのような危険な状況を理解しています。私たちは白血病から子供達を救うために、そして転移性乳癌から女性達を救うために一生懸命働いているのです。それでも、医療的観点からこのような不治の病をどうにかする唯一の方法は予防でしかないのです。そのような事から、医者達ほど原子力産業に関わる物理学者達に対して声を上げる準備ができている人達はいないでしょう。

そんな物理学者達は放射能の”許容用量”なんて事について説明をします。彼らは、原発や核実験などで拡散される放射性物質が体内にとりこまれ、小さな細胞に大量の放射能が取り込まれる体内被ばくを全く考慮に入れずに議論をするのです。原発から拡散される放射性物質にしても、医療レントゲン、宇宙、そして自然界からの放射性物質にしても、彼らは常に健康への被害の少ない体外被ばくにだけに焦点をあてるのです。

しかし、医者達は放射能に関して安全な許容量などない、また放射能は蓄積されるものであることを知っています。放射能の影響で起こる細胞変異は一般に有害なものばかりです。嚢胞性繊維症、糖尿病、フェニールケトン尿症、筋ジストロフィなどの病気を引き起こす何百もの遺伝子を私たちはもっています。現在、2600以上もの遺伝的疾患があると言われていますが、そのどれもが放射能に由来する細胞変異に関係している可能性があります。そして、私たちが人工的に拡散される放射能のレベルを引き上げていることで、これらの病気の発病率は上がっていくことでしょう。

もう何年ものあいだ、医者達に比べると原子力産業に雇われた物理学者達は少なくとも政治やマスコミの間では随分と重宝がられています。40年代のマンハッタン計画以来、このような物理学者達は簡単に国会に登場することが可能になっています。まずは国の核となる部分から準備を始め、物理学者達は核兵器を擁護するにしろ原発を擁護するにしろ、大きな力をつけていったのです。彼らは国会に堂々と入り込み国会自体を彼らの言いなりにしたのです。彼らの言う先進技術こそが全てとなり、その代償は何十年後もあとになってやっと分かるという仕組みになりました。

それに比べて医者達は国会との関係の歴史が浅く、さらに核に関する事についてはアクセスが非常に制限されています。私たちは発癌の潜伏期間や放射線生物学にまつわる研究の発展について議論をしてまわったり普段はしません。しかしその結果、放射能の長期的な健康への被害について政治家や市民の皆さんに説明をするという仕事をおろそかにしてしまっていたのです。

癌の患者さんが私たちにやってきたときに、彼らが80年代にスリーマイルアイランドの風下に住んでいたとか、放射能に汚染された牛乳から作られたハーシーズのチョコレートを食べていたかなんて質問をするのはよくない事だとされています。私たちは最初から事が起こらないように働きかけるよりも、事故が起こってからそれに対処をしようとします。しかし医者達は今こそ原子力産業に立ち向かう必要があるのです。

原子力はクリーンでもないし、持続可能でもないし、化石燃料の代替でもありません。逆に地球温暖化を促進させるものなのです。太陽、風力、地熱発電、そして省エネで私たちの電気の需要は満たすことができるのです。

昔は放射能が癌を引き起こすなど誰も考えていませんでした。マリー・キューリー(キューリー夫人)とその娘は扱っている放射性物質が自分達を殺すことになるなんて知りもしませんでした。 しかし、マンハッタン計画に関わった初期の物理学者達が放射性物質の有害性を理解し始めるまではそれほど長い時間はかかりませんでした。私は個人的に彼らをよく知っています。彼らはヒロシマとナガサキで起こったことへの罪の意識から原子力の平和的利用が推進されることを常に願い続けてきましたが、結局はその逆の事が広まってしまっただけでした。

物理学者達が核の時代を始める知識を持っていたのならば、医者達はそれを終わらせるための知識と適格性を持っているのです。

<訳:中鬼>

<以上貼り付け>


新生児、幼児への健康被害:チェルノブイリ原発事故・終わりなき人体汚染

2011年05月02日 | 健康医療サービスイノベーション

チェルノブイリ原発事故から10年後の1996年にNHKが企画制作した特集は、昨今の状況から見ると示唆に富みます。「ただちに健康に被害を与えるものではありません」という文言をNHKの解説委員は多用しますが、この番組では、「原発事故による長期的な健康被害」にマトを絞って特集しています。ずいぶんものの云い方が違います。

問題意識の強い方がYoutubeに残してくれています。(でもいつ消去の憂き目にあうのかわかりませんが)

 チェルノブイリ原発事故・終わりなき人体汚染~その1(動画)

チェルノブイリ原発事故・終わりなき人体汚染~その2(動画)

チェルノブイリ原発事故・終わりなき人体汚染~その3(動画)

チェルノブイリ原発事故・終わりなき人体汚染~その4(動画)

ついでも20年後の真実も。

汚された大地で ~チェルノブイリ 20年後の真実~その1(動画)
http://youtu.be/PHeq8TfSRBM

汚された大地で ~チェルノブイリ 20年後の真実~その2(動画)
http://youtu.be/8hXmoNuJHKs

汚された大地で ~チェルノブイリ 20年後の真実~その3 (動画)
http://youtu.be/Fgx1mcUgHnA

汚された大地で ~チェルノブイリ 20年後の真実~その4(動画)
http://youtu.be/BiFTMaApEpw

汚された大地で ~チェルノブイリ 20年後の真実~その5
http://youtu.be/ZK7T6BDiB1c

        ◇   ◇   ◇

終わりなき人体汚染の新生児、幼児に関する長期にわたる低量被ばく問題のことろのみ、以下まとめです。


◎キエフ小児産婦人科研究所医師ダシケビッチ産婦人科部長:

「かつてのIAEAの予測と大きく食い違ってきています。その原因は長期間の被ばくのためだと思います。今後は長期的な被ばくの影響を注意深く調査していかなければいけません。また妊婦や新生児に染色体の異常も見られるので、世代を越えた遺伝的な影響が出てくるかもしれません」

「汚染地域では事故後、人工中絶が急増している。放射能による被ばくが胎児に悪い影響をあたえるだろうという不安があるから」

◎ミンスク遺伝性疾患研究所のゲナジー・ラジェック所長:

ミンスク遺伝性疾患研究所の調査によると、被ばく地に住む妊婦2000人の染色体細胞を検査した結果、被ばく量が多い妊婦ほど染色体の異常が多いことが判明。染色体の異常が遺伝すると先天性の異常に繋がる可能性が高いとミンスク遺伝性疾患研究所の専門家はみている。

「我々の調査によると、妊婦の染色体異常ばかりではなく新生児の先天性異常も汚染の高い地域ほど増えていることが分かった。その原因としてはストレス、栄養障害、化学物質の影響などさまざまな要因が複合していることが考えられる。しかし、それらの要因のうち、ひとつの大きな要因として放射能の影響がある。」

先天性異常を持つ新生児の数は事故前の1.8倍に増加。しかし、汚染地域の妊婦の染色体異常と先天性異常を持つ新生児の因果関係はまだわかっていない。ラジェック所長は今後、遺伝子レベルのより詳細な調査が必要と考えている。

        ◇   ◇   ◇

(私の意見)

福島第一原発事故は、チェルノブイリ原発事故とは性格が異なり単純に比較することはできません。

ポイントを絞って、事故発生後の長期にわたる低量被ばくの新生児や幼児に対する健康被害を中心に見ていきたいと思います。

ミンスク遺伝性疾患研究所所長のゲナジー・ラジェック氏の「チェルノブイリ原発事故から10年たっても因果関係はまだわかっていない」という発言がポイントです。

今後、福島県、関東地方などを中心として白血病、がん、各種小児疾患、新生児の異常、脳機能障害などが発見された場合、日本には疾患分類別の単位人口当たりの疫学データが整っているので、特定地域の異常な発症率はマクロ的には判別することができるでしょう。

しかし、個別の患者、個別の胎児の発症となってくると、因果関係の検証(反証)は極めて難しくなります。長期になればなるほど、他の要因が発症に複雑に影響を与えるからです。因果関係が認められなければ損害賠償請求もできません。もろちん、東電や政府は、積極的に因果関係を認めて保証に応じるほどお人よしではありません。

上記ビデオでも、ラジェック氏がいっているように、長期的な社会医学、疫学調査、医学的研究、公衆衛生研究が必要となってきます。

第三者機関による厳格、科学的な追跡調査が必要になってきます。いずれにせよ、原発事故は、経済成長を鈍化させ、社会的コストを増加させます。ないもいいことはありません、なにも。

それら以上に、いのちが粗末にされるのはいたたまれません。


原発事故と新生児、幼児への健康障害

2011年04月30日 | 健康医療サービスイノベーション

日本助産師会で過去、4回も講演させていただいており、また今年も講演の予定が入っていますが、新生児、幼児、母胎の健康にはことさら強い問題意識を持っています。

このところ、放射線物質、放射能と健康被害について内外の研究者と意見交換をしています。Fukushimaの件は、海外のhealth service, public health, disaster management分野でも俄然注目をされています。

国内の既存マスコミから流れてくる情報は、統制情報、作為的にマニュピレート(操作)された情報が幅を利かせています。原発事故の被害状況(原発の施設状況、大気、環境に放出されている放射性物質、健康被害など)は、政・産・学・官の利権構造に報(主流メディア)が組み込まれている構造から発せられているので、原発擁護派による暗黙的情報マニュピレーション(操作)やマヌーバ(工作)が織り込まれています。

もっともこれは昨今始まったものではなく、「原発・正力・CIA」(有馬哲夫 2008)で明らかにされているように、衆議院議員の正力松太郎、讀賣新聞、日本テレビ、CIAが原子力に好意的な新米世論を日本に形成、誘導した1950年代から延延と半世紀以上にも渡っているものです。

さて、小佐古敏荘東大教授が、内閣官房参与を務めた人が「子ども20ミリシーベルトは間違っている」と断言して辞任したことにより、本件を巡る事態は流動的になってきました。たぶんドタバタと政権交代を経て、規準が厳しくされることでしょう。しかし、タイミングが遅すぎました。

以前このブログの「放射線・放射能と人の行動」で書いたように、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム、SPEEDIのデータ公開のやり方がまったく間違っています。4/25から事故発生以降1カ月以上たって公開されはじめましたが、過去に予測されたデータを後になって公表するのはまったくもって本末転倒。予測データは「その時」に公開されなければまったく意味はありません。本件については政府・関連機関が情報を隠蔽、操作してきたと指弾されても弁解の余地はないでしょう。

放射線物質、放射能汚染は、大人より子供、そして子どもでも発達過程が若ければ若いほど微量でも長期的に影響することが疫学的研究により明らかになりつつあります。また、現在の乳幼児の女の子が将来、妊娠して出産する場合、新生児の健康に影響を及ぼすことも、チェルノブイリ、その他のケースの分析で明らかになりつつあります。

明らかになったのではなく、明らかになりつつある、と書かざるをいない理由は、(1)25年前に起きたチェルノブイリ原発事故でさえも、その長期的な影響は現在にいたるまで延々と継続している。(2)IAEA-WHOのライン(注1)以外の政治的な意図を持たない疫学的調査では、IAEA-WHOラインとは異なる健康被害(より深刻)の状況が報告されているからです。(参考サイトは以下)

ここでは、年齢範囲がひろい子どもではなく、新生児、幼児の健康被害に限定します。新生児、幼児の健康被害の実態は、「直ちに」現れるものではなく、長期的なタイムスパン(複数の次世代にまで)で現れるものです。

 (A)汚染状態、予測を知り得て退避行動をとった時の損害

 (B)汚染状態、予測を知り得えないで退避行動をとることができなかった時の損害

ここにおいて、(B)-(A)が問題となります。健康被害は損害賠償請求の対象となりますが、熊本・鹿児島・新潟の水俣病、富山県のイタイイタイ病などの経緯を見てわかるように因果関係の立証は容易ではありません。

今後必要なことは、まず正しい情報に接することによって自分とこどもの身を守ること。その上で学術コミュニティにも果たさなければいけない責任があります。たとえば、上記の利権構造とは分離された長期的な調査です。新生児、乳幼児に関しては以下のデータが重要になります。

(1)新生児の健康状態を出生前からモニタリングして経時的に追跡することの徹底。

(2)妊娠前後の時期から出生時まで母親と新生児はどこにいたのかに関する調査。

(3)母胎について推定被ばく量を統一的な手法(母乳や検体の放射線物質含有量など)で調査すること。

この種のサーベイは国とは明確に分離され、拮抗力を有する第三者機関が行う必要があります。できれば特定の利害に左右されない国際的な機関と提携してやるべきでしょう。早々に着手する必要があります。


           ◇   ◇   ◇


関連する参考サイト、ニュース、報告、意見などを貼っておきます。

(注1)Chernobyl: A Million Casualties

3.11の1週間前の3月5日に収録された毒物学者ジャネット・シェルマン博士へのインタビュー。このビデオの中には1959年にIAEAとWHOとの間で結ばれた協定についてのコメントが入っています。この協定は、二つの機関が互いに互いの承認無しには研究発表を行ってはならないことを取り決めたもの。残念ながらWHOは、原子力を推進するIAEAの同意なしには、例えばチェルノブイリ事故による人々の健康への影響に関する報告を行うことが出来ないという現状にあり、欧州ではこの協定の廃棄にむけた市民運動があります。

IPPNW「チェルノブイリ健康被害」新報告と、首相官邸資料「チェルノブイリ事故との比較」との驚くべき相違


IPPNW(核戦争防止国際医師会議-1985年ノーベル平和賞受賞)のドイツ支部がまとめたチェルノブイリ原発事故25年の研究調査報告が4月8日に発表されました。英語サイトはここです。 レポートのリンクはここです。論文の中でも特に重要である、5-11ページの「論文要旨」、「WHOとIAEAにより発表された公式データの信頼性欠如に関する注記事項」、「核戦争防止国際医師会議と放射線防護協会は要請する」の和訳をここに紹介します。チェルノブイリ事故25年、その人体と環境に対する夥しい被害の全容がこの研究により明らかになっています。そして、首相官邸のホームページで公開された、日本政府のチェルノブイリ事故への見解がこういった最新の見解と大きく相違することを指摘します。

WHO と IAEAにより発表された公式データの信頼性欠如に関する注記事項 (報告8ページ

国際原子力機関(IAEA)と世界保健機関(WHO)により2005年9月に組織された「国連チェルノブイリ・フォーラム」 において、発表されたチェルノブイリの影響に関する研究結果は、きわめて首尾一貫性の無いものだった。たとえば、WHO と IAEAの報道発表は、最も深刻な影響を受ける集団では、癌と白血病により今後最大4000人が死亡する可能性があるとしている。しかしながら、この論文の根拠としたWHO の報告では、実際の死者数を8,930としている。これら死者数はどの新聞記事にも取り上げられることはなかった。WHO 報告書の引用元を調べると、癌と白血病による死者数の増加として1万~2万5千人という数字に行き当たる。

 これが本当ならば、IAEAと WHOの公式声明はデータを改ざんしていると合理的に結論づけることができる。IAEAと WHOによるチェルノブイリの影響に関する説明は実際に起こっていることとはほとんど無関係である。


「子供の許容被ばく線量高すぎる」と疑問 (動画)
(04/27 テレ朝ニュース)

ノーベル賞も受賞した国際的な医師の団体がワシントンで会見し、文部科学省が子供の1年間の許容被ばく線量の目安を「20ミリシーベルト」に設定したことに反対の意思表示。

 アイラ・ヘルファンド医学博士:「衝撃的だったのは、日本政府が福島の子供たちの許容被ばく線量の基準を高く設定したことだ」

 ヘルファンド博士は、「子供の場合、がんになるリスクが成人よりも2倍から3倍高くなる」と指摘して、許容される被ばく線量の基準を引き下げるよう要求。アメリカでは、原子力関連施設で働く人の1年間の許容量の平均的な上限が年間20ミリシーベルトとされています。

福島第1原発:放射性物質放出 毎日154テラベクレル (4/25 毎日新聞)

 国際評価でレベル7という最悪の原発事故が、四半世紀を経て東京電力福島第1原発でも発生した。

 「予断を許さないという点で、チェルノブイリより深刻だ」と笠井篤・元日本原子力研究所室長は指摘する。

 チェルノブイリ原発事故で放出された放射性物質は520万テラベクレル(テラは1兆倍)と推定されている。爆発で一気に放出された分、発生から約10日間でほぼ止まった。これに対し、福島第1原発事故では37万~63万テラベクレルとチェルノブイリ原発事故の約1割で、経済産業省原子力安全・保安院は「大半は原子炉内に閉じ込められている」としている。しかし、内閣府原子力安全委員会によると、事故から約1カ月後の今月5日時点で1日当たり154テラベクレルが放出されている。今も本来の冷却システムが復旧しておらず、余震による影響や水素爆発が懸念され、新たな大量放出も起こりかねない。

 事故処理にも違いがある。チェルノブイリ原発はコンクリートで建屋を覆う「石棺」で放射性物質の拡散を防いだが、福島第1原発は1、3号機で格納容器全体を水で満たす「水棺」の検討が進む。東電は、原子炉の安全な状態である「冷温停止状態」まで最短6~9カ月かかるとしているが、見通しは立っていない。

 福島第1原発では、がん発症率が0.5%増えるとされる100ミリシーベルトを上回る放射線を浴びた作業員は23日現在、30人に上る。被害の実態はまだ把握できないが、松本義久・東京工業大准教授(放射線生物学)は「チェルノブイリ原発事故では各国の研究機関が綿密な健康調査をした。日本政府は、住民や作業員の心身両面の健康状態を追跡する態勢を早急に確立すべきだ」と訴える。【中西拓司】

ドイツ連邦政府が行なった調査によると、1980年かから2003年の23年間に、5歳以下で小児ガンと小児白血病を発症した子どもについて、ドイツ国内の22基の原発を含む16の原発の立地点から子供たちの居住地までの距離と発症の相関関係が調査された。

約6300人の子どもたちのデーターから得られた結果は、原発から5km以内に住む子どもが小児ガン・小児白血病ともに他の地域と比べて高い発病率を示していた。小児がんで1.61倍、小児白血病で2.19倍という有意な結果で、統計的に高い発症率であることが明らかになった。>

「原子炉閉鎖で乳児死亡率激減」 最大で54.1%マイナス 米研究機関が発表
(2000年4月27日東京新聞より)

 【ワシントン26日大軒護】放射線の健康に与える影響を調査している米研究機関は26日、原子炉の閉鎖により周辺に住む乳児の死亡率が激減したとの調査結果を発表した。


 調査は免疫学や環境問題などを専門とする医師、大学教授などで組織する「レイディエイション・パブリック・ヘルス・プロジェクト」(RPHP)が、1987年から97年までに原子炉を閉鎖した全米7ヶ所の原子力発電所を対象に、半径80キロ以内の居住の生後1歳までの乳児死亡率を調べた。


 調査は、原子炉閉鎖前の死亡率と、閉鎖2年後の死亡率を比較しているが、それによると、87年に閉鎖したワイオミング州のラクロッセ発電所では、15.3%の死亡率減少だった。もっとも減少率の大きかったのが、97年に閉鎖したミシガン州ビッグロック・ポイント発電所周辺で54.1%の減少だった。減少は、がん、白血病、異常出産など、放射線被害とみられる原因が取り除かれたことによるものとしている。

『規制値の再整理』 中部大学武田邦彦教授のブログ