かみつけ岩坊の数寄、隙き、大好き

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 「Hoshino Parsons Project」のブログ

アジテーターとオルガナイザー

2010年12月12日 | 脱・一票まる投げ「民主主義」 自治への道

以前どこかで読んだことです。
昔の左翼用語のイメージでとらえられがちな表現ですが、
「アジテーター」と「オルガナイザー」という言葉があります。
このふたつを区別する説明で、以下のようなうまい表現で説明されていたのを記憶しています。

アジテーターというのは、ひとつのことを10人の人に伝える仕事をする人。
オルガナイザーというのは、10のことをひとりの人に伝える仕事をする人。
というのです。

なるほどと思ったものです。
私たち本屋の仕事は、まさにこのふたつの方法をそれぞれ行うことが大事です。

あくまでもものごと原則は、1対1。
ハート・トゥ・ハートが基本ですが、それだけではビジネスになりません。
運動の輪も広がりません。

ただ有象無象のたくさんの本をいろいろな人に売るということではなく、
10人の人に伝えたいようなすばらしい1冊の本を見つけ出し、それを伝えること。

あるいは1冊の本の魅力が、10人に伝わるような売り方をすること、それが大事です。

本との出会いなど、まさにパーソナルなものです。
ひとりひとり、まさに千差万別の出会いによって成り立っているもので、私たちの仕事はそうした出会いに個別に対応していくことが求められています。
しかし、それをより多くの人にサービスとして提供して、ビジネスとしてそれが成り立つようにするには、ひとつひとつの出会いを個別の体験にとどまらせることなく、なんらかの仕組みづくりをすることが必要です。

それが、このオルガナイザーとアジテーターのふたつの方法論です。

特定のひとりのお客さんのためにすすめられる本を10冊選びだすこと。
児童書に興味のあるお客さん、
自己啓発書に関心の強いお客さん、
仏教関係に興味のあるお客さん、
海外のミステリー小説を読みあさるお客さん、
特に専門はないけれど強い読書意欲を持っているお客さん、
                          ・・・等など

あらゆる分野の顧客に対応することなど、普通の人間に出来ることではありませんが、店の一部のヘビーユーザー数人のこうした需要に応えること、またそうした見方をしながら日々の商品をみていること、お客さんをみていることが大切です。

うちのB型のパートさんは、こうしたことを実によくやってくれています。

時々、こんな本がよく売れたものだと驚くようなことがあります。
またこんな本いったいどんな人が買ってくれたんだろうと思うこともあります。
その本は、確かに2冊目が売れるようなことはまずあり得ない特殊な本かもしれません。
しかし、その本を買ったお客さんがどんな人かがわかると、その本の次に仕入れるべき1冊の本が見えてきたりします。

 ひとりのお客さんの指向やリクエストから10冊の本を導きだすこともありますが、
1冊の特殊な本を買ってくれたお客さの顔と名前を知ることで、それに続く10冊の本を見つけ出すこともあります。

 1冊の本を、文化として見るためにも、商品として見るためにも、このように
1冊の本を10人につたえるしくみづくり、
ひとりのお客さんに10冊の本を薦めるしくみづくりは
とても大事なことなので、日々心がけて、ブログやホームページ、メールマガジン、チラシニュース、POPなどで訓練し続けることが求められます。

現実には、1冊の本を10人の人へでなくとも、3人くらいの人の顔を想い浮かべるだけでも
日々そうした訓練が出来れば十分だと思います。
普通の相手であれば、ひとりの人へ薦められる3冊くらいの本を思い浮かべるだけでも、十分だと思います。

ただ「良い本」売るということではなく、売るためのこうした「エンジン」を持つことが、ビジネスとしてはとても大事なことです。

コメント
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