かみつけ岩坊の数寄、隙き、大好き

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 「Hoshino Parsons Project」のブログ

すでに起こった未来

2008年05月21日 | 出版業界とデジタル社会
著書のタイトルにもなっているドラッカーの言葉
「重要なことは〈すでに起こった未来〉を確認することである。すでに起こってしまい、もはや後戻りできない変化、しかも重大な影響力をもつことになる変化でありながら、まだ一般には認識されていない変化を知覚し、かつ分析することである。」
        P・ドラッカー著『すでに起こった未来』ダイヤモンド社

 今、あらゆる領域で進行しているデジタル化の流れとそのスピードのもたらす変化を、
受け入れない人々、
受け入れようとしない人々、
理解できない人々、
それらがいかに多くいようとも、
いかに彼らのアナログ信仰に説得力があろうとも、
「すでに起こった未来」の現実として、
私たちはもっと真剣に立ち向かって考えなければならない。


このことには度々ふれていますが、
出版、書店業界に襲いかかっているデジタル化の流れを見るにつけ、
これから先、5年、10年といったスパンでの方向転換を
もっともっと真剣に考えなければならないのではないかと常々感じています。

何度でも書きますが、
アナログや紙の文化は、決して無くなることはない。
むしろ価値を増す領域も多いことと思う。

しかし、その市場規模は遅かれ早かれ、
ピーク時の半分以下になることは間違いない。

1995年頃を出版業界のピークとみると、この10年で
市場規模は約2割、縮小している。
これからの10年を考えれば、どう考えても更に2割以上
加速して減少していくことは間違いないと思う。

でも同業者の多くは、未だにピーク時の半分以下になることは想定していない人が多い。

私は、この現実を電子辞書の普及実例を通して、
これこそ、「いまそこに起きた未来」の典型的な例であるといい続けている。

群馬県は電子辞書の普及率が、全国でもずば抜けています。
学校の先生方の話を聞いても、クラスの半分以上が電子辞書を使っているという。
でもこの群馬県の特殊性は、ほんの一次のことと考えるべきだろう。
すでに都内の進学校での普及率は既に100%に近いという現実もある。

未だに先生のなかには、紙の辞書の方が良いという先生もいるが、
現実には、多数の生徒が持ち込み活用している現実を、
そうした先生ですら否定することはできなくなっている。

また、ひとつの辞書を徹底的に使いこなしている先生の指導は、どんなに優れた機能の辞書にも勝ることもある。

でも書店の新学期の紙辞書と電子辞書の販売比率は、もう数年前に完全に逆転した。

ここで起きている現実というのは、
電子辞書が、ただコンパクトに紙の辞書の内容をまとめてあるというだけのことではない。
これまでの紙の辞書ではできない
・辞書相互のジャンプ機能
・履歴保存機能
・英語などの音声機能(単語だけでなく例文も先生の発音より正しい発音が聞ける)
・手書き入力機能(漢和辞書の画数やつくりの知識がなくてもすぐ調べられる)
・画面の拡大表示(高齢者に限らず、画数の多い漢字は、拡大しないと識別できない)

これらの機能が、反射の少ない液晶画面や十分なバッテリー寿命の技術などが実現することで、多くの人の身近なものとなった。
今後、さらにネットとの接続などで便利な機能は増えていくことと思う。

ここで起きていることをみて大事なのは、
新しいハードやデジタルコンテンツの技術により、
「勉強の仕方」がこれまでとは変わったということです。

こうした現実を見れば見るほど、
今、全国の独立系書店が経営の柱にしている学校関係などの外商販売の領域こそ、
ある時期を境にして、デジタル化の流れが一挙に加速する可能性が極めて高いと予想される。

実務的な機能を要求される教科書や参考書の領域こそ、
この電子辞書のように、デジタル化によって劇的に利便性が増すことが考えられるからです。

ノートパソコンに限らす、機能を限定すれば、5万円以下でそうした作業に使える端末は既に実現、普及している。
トータルコストで考えれば、明らかに教育予算や親の負担を軽減、削減しながら、より進んだ教育を実現する条件がそこに見て取れる。

とすると、この領域こそ、ある日突然、
行政判断によって、一挙にデジタル化の流れが加速する可能性が大きいといえる。


この現実は、
(1)、多くの独立系書店は大きく依存している外商分野の学校や官庁関係へ納品している主力商品が、あるときから急激にデジタル化にともない消滅していく可能性が高いということ。

(2)、今ピークを迎えている大型店の出店は、これからのデジタル化の現実にともなう市場の縮小という現実を前にして、急激に危機を迎える。

(3)、より自由な情報の移動が保証された社会では、商品の情報よりも、顧客情報こそ、経営の最大関心事になっていく。

以上のようなことが予想されるので、これからこれらの事柄について継続して書いてみたい。
コメント
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