英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

歴史(時)は変化する   中国共産党指導部は気づいているのか?

2013年01月14日 11時28分10秒 | 時事問題と歴史
 中國紙「南方週末」新年号を当局が改ざんした問題を新聞やインターネットサイトで読むと、歴史は変化すると実感する。時は変化する。この変化を見逃すと人々や国は亡びる。滅びなくても大きなダメージを受ける。筆者は強くそのように感じる。
 14日付朝日新聞の見出しは「メディア対応 習氏不満 中國紙改ざん問題、終息優先」だった。習近平総書記が、この問題の処理をめぐって国内メディアを統括する劉雲山氏の強硬姿勢を批判したという。
 劉氏は、党宣伝部に抗議する編集者と記者の更迭や処分方針を内部決定していたが、習総書記はこの方針に反対し、処分しないで事態の収束を図ろうとしているようだ。
 共産党と人民の力関係はここまで変化したということだろう。約半世紀前、共産党は社会、政治、文化などのすべてを意のままに動かしていた。言論も、軍隊も、政治もすべて国家のためにあるのではなく、党のためにある。これが共産党理論の中枢だ。現在も理論上はそうだろうが、実践面では大いに違うようだ。われわれは日本の新聞を媒介としてこの事実を突き付けられている。
 現在、1917年にペテルブルグで起こったロシア革命を指導したボルシェビキの理論は通用しなくなっている。20世紀の遺物と化している。
 朝日新聞の記事を読んで、目を見張った文章がある。「12日には、広州市に隣接する仏山市三山村から訪れた農民約20人が南方週末を応援しようと(同紙の)ビルに近づこうとした。・・・同行していた弁護士によると一昨年、村政府による農地の収容問題を同じ『南方報業伝媒集団」』の日刊紙『南方都市報』が大きく報じた。『(連行された農民たちは)言論と新聞の自由は大切だと、身をもって知った人たちなんです』」
 弁護士の発言は衝撃的だ。中国人の大多数を占める農民までが民主主主義と言論の自由の大切さに気づきはじめている。毛沢東は新中国を建設できたのは農民の力だった。
 国民党との内戦で勝利した主因は、毛沢東の戦略理論「農村から都市を包囲せよ」だった。ロシア革命は都市革命であり、都市労働者を率いたレーニンやトロッキーらの都市革命。これに対して、毛沢東は帝朝の興隆と没落の歴史として位置づけられる長い中国史を考察し、都市労働者から革命は成功しないと考えた。人口の大多数を占める農民に共産党の戦略を浸透させて味方につけ、内戦に勝利した。
 朝日の記事から、かつての共産党の盟友の農民でさえ離反している、離反し始めているのかもしれないことが垣間見える。
 中国経済が発展すればするほど、中産階級を自認する人々が増える。教養を持ち、世界を知っている中産階級の人々が増えれば増えるほど、彼らは歴史の流れー議会制民主主義や、言論出版などのあらゆる自由―を支持し、自らもその流れを加速させていく。歴史の流れは時の変化でもある。
 人間は既得権を持つと、周囲の変化に疎くなる。既得権を守ることばかりに目を奪われるために、自らの望みや希望と反対の方向に歴史が動いているのに気づきにくい。中国共産党の幹部も関東軍の参謀も同じだ。彼らだけではない。われわれもその傾向が強い。風向きを読むことは、決して「日和見」ではない。生き抜くための知恵だ。既得権を放棄することがが結局、自らの生存を保障し、自利につながる。筆者はそう思う。


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