英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

樹木希林さんは死して人間の生き方を教える       今朝の朝日新聞を読んで思う

2018年11月29日 08時58分22秒 | 時事問題
 ことしの9月26日付の私のブログに故樹木希林さんについて記した。一人の人間が亡くなってから人生観や生き方が分かり、それに感動することがある。希林さんはそのような女性だったかもしれない。29日付朝日新聞朝刊39面に「死ぬこと 誰かの心の中で生きること」のタイトルで希林さんについての記事が載っている。彼女は30年以上の友人との語らいの中で、彼女が到達した心境について書いている。
 江戸時代後期の高僧、良寬や、仏教の開祖、釈迦の言葉を通して自らの生き方を求め続けた希林さん。「うらを見せおもてを見せてちるもみぢ」「散る桜 残る桜も 散る桜」。また友人の何必館(かひつかん)・京都現代美術館長の梶川芳友さんが仏教の教え「独り生まれ、独り死し、独り去り、独り来る」を話すと、希林さんはこう返答したという。「絆も信じ過ぎるとお互い苦しくなる。弧の意識が人を育てる」
 中国の名宰相、諸葛孔明が戦陣で亡くなる直前、部下に自分が亡くなった後の撤退方法を伝授。部下が孔明の指示に従って軍を撤退させたおり、敵の名将、司馬懿仲達は追うどころか指をくわえて傍観していた。孔明の罠を恐れて自軍に攻撃を命令しなかった。後生の人びとは「死せる孔明、生ける仲達を走らす」と評し、孔明の偉大さを称える。生前に脇役が多かった希林さんは亡くなってから、主役のようにスポットが当てられている。彼女の厳しい生き方や人生観への賞賛の証なのだろう。まるでわれわれが亡くなった希林さんに走らされているようだ。
 夫の内田裕也さんに触れた言葉もあった。梶川さんに電話で「共演者と合わなくて。あー疲れた」と愚痴をこぼした。梶川さんは釈迦の弟子の一人、提婆達多(だいば たった)の話しをした。彼は釈迦にたてつき、困らせ、皆が彼を遠ざけた。だが釈迦は「役立つ人だけがいいのではない。困らせる人は己を磨く上で必要だ」と説いた。すると、希林さんは「くっくっ」と笑いながらこう言った。「そういえば提婆達多は、私にとっての裕也ね」
 内田さんは妻の手のひらで遊ばれていたのかもしれない。麻薬に手を染めたり、世間を騒がせることが多かった夫を達観して眺めていた希林さん。私には想像できないくらい心の広い人物だったと思う。
 私は20代前半まで心の中で芸能人を馬鹿にしていたところがあった。好きなことをして、わがままな生き方をしても世間から許される「芸人」と。しかし20代後半に英国に住んだ。シェークスピアを生み、名優を多数輩出した国。その国の大学で、芸術を教えている先生に出会った。彼女は「英国の女優や男優で、名優と呼ばれる人は、一般の人びとに生き方や人生観を教えているのです。人生の模範を示しているのです。そんな人が名優でしょう。俳優を馬鹿にしてはなりません」と私を諭した。私の見方は、それ以降変わった。
 名女優や名男優は声を出して自らの生き方を教えてはいない。ただ台本から先人の教えを受け、黙って自らの人生を作り上げ、それを実践して黙ってこの世を去っていく。希林さんもそんな名女優だったと思う。人は死してから本当の価値を他人に知らせしめるのかもしれない。

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