英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

 ウクライナのクリミア橋爆破とロシアの報復   戦争の終わりの始まりか

2022年10月11日 16時20分25秒 | 国際政治と世界の動き
 最後にこのブログを書いてから半年がたった。「光陰矢の如し」。まるで歳月はロケットのように早く、われわれを過去から現在、未来へと運ぶ。
 2月24日にロシア軍がウクライナに侵攻してから7ヵ月以上たつ。時の流れほど冷厳な現実を見せつけるものはない。ロシアのプーチン大統領ほど、このことを噛みしめている人物は世界中でいないだろう。
 この”特別軍事作戦”でロシアは苦戦しているのか?。否、敗北の道を進んでいる。私にはそう見える。プーチンが呼ぶ”特別軍事作戦”はそもそも何だったのか。権威主義者プーチンがウクライナの首都キーウを数週間で陥落させられると信じた。彼が言うところの、ウクライナのゼレンスキー大統領ら”ネオナチ”勢力を一掃できると盲信した。しかしキーウ陥落も”ネオナチ勢力”の一掃もできなかった。それどころか泥沼にはまった。
 1931年から1945年の中国戦線で、日本軍が泥沼にはまったように、ロシア軍もはまった。両者に共通するのは傲慢と現実無視だった。ウクライナも中国も国土は広大だ。何よりも当時の中国の指導者、蒋介石も現在のウクライナの指導者、ゼレンスキー大統領も徹底抗戦の意思が硬い。そして何よりもウクライナ軍の士気は高い。それに対してロシア軍の将兵は、なぜ戦っているのをまったく理解できない。
 そうだろう。理解できるはずがない。この戦争はプーチンの戦争だからだ。プーチンの歴史観から出てきた戦争なのだ。歴史的にウクライナはロシア領土だという彼の歪曲した歴史観。それはドイツの独裁者アドルフ・ヒトラーがドイツ人の「レーベン・シュトラウム(生存権)」は東ヨーロッパにあるとした主観的で一歩的に考えた歴史観と同じだ。プーチンこそヒトラー思想の後継者でありネオナチだ。
 欧米から最新兵器を供給されたウクライナ軍は、9月攻勢をかけた。練度の低いロシア兵は次々と敗走している。ロシアは戦争の初期に占拠したウクライナ東部と南部4州の一部を、ウクライナ軍は奪還した。プーチンは苦し紛れに「部分動員令」を出したが、ロシアの若者の多くは「部分」とは見なさず、「総動員」と見なし、そのうちの数十万はロシア国境から国外に脱出した。
 10月8日、2014年にロシアに併合されたクリミア半島とロシアを繋ぐ19㌔の橋の一部が爆破された。爆破はウクライナの仕業だとプーチンは判断し、ロシア軍にウクライナ全土にミサイル攻撃をするよう命令した。このため、ウクライナの首都キーウやリビウなど複数の都市が、ミサイル攻撃を受け、建物などが損壊し民間人の死傷者が出た。
 軍事的に見て、ロシアの劣勢を挽回する助けにはまったくならない。それどころかウクライナ民間人を殺傷したと世界中から非難を受けている。またこの橋を使えず、軍事物資や兵器の貴重な補給路は断たれ、ますますロシア軍は苦境に立たされるだろう。この戦争の終わりの始めかもしれない。
 プーチンが持っている残りのカードはほとんどない。あとは戦術核兵器だろう。もしプーチンが、この悪魔の兵器を使っても、ロシアは勝てない。米国やNATO諸国は核兵器で報復するのではなく、最新通常兵器を大量に供給し、ウクライナとロシアとの戦争に決着をつけるだろう。ロシアの通常兵器がほんとうにお粗末なことを、この戦争後に、世界は知ったのだ。
 プーチンが夢想した「一流国家ロシア」はこれから長い間、出現しない。この戦争でロシアはますます科学技術や経済力などの点で三流国家に転落していくだろう。それでもプーチンはこの戦争をやめない。
 フィンランドのニーニスト大統領は10月10日にこう話した。「プーチン大統領が何らかの敗北を認めることができるとは、とうてい思えないと伝えた。彼にその能力があるのか。それが問題だ。わたしは、彼には敗北を受け入れる能力はないと思う」
 ニーニスト大統領の発言が事実なら、プーチン大統領の末路は悲惨となろう。ドイツの独裁者ヒトラーが、第二次世界大戦でのドイツの敗北とほぼ同時に総統官邸で自殺したのと同じ運命をたどるにちがいない。
 私は思う。歴史はわれわれに「独裁者は必ず転落する」と明白に示しているのに、後世の独裁者は同じ轍を踏む。ルーマニアの独裁者ニコラエ・チャウシェスクやイタリアの独裁者ベニート・ムッソリーニが、怒り狂った国民の前に引きずり出されて、悲惨な最後を遂げたのに、独裁は繰り返され、独裁者は悲惨な最期を遂げる。
 はたして、3期目のトップを目指し独裁を強める習近平・国家主席や北朝鮮の金正恩・総書記は、現在繰り広げられている歴史から学んでいるのだろうか。もし学んでいなければ、彼らの将来もまた暗い。