本蔵院 律良日記

熊本県にあるお寺“真言宗 本蔵院 律良のブログ”日々感じるままに活動のご報告や独り言などを書いた日記を公開しています。

手技神技

2016-01-21 20:48:08 | 住職の活動日記

京都新聞の別冊

「T&T トマト・テレビ京都」に

毎週連載されている、

「手技神技」

京都に昔から連綿と続く

職人技の世界が紹介されています。

 

一つ納得がいったことがあります。

昔、東寺の御影堂にいたころ

堂内に荘厳されている

仏具を修理したことがあります。

そのとき、

「この大壇は堅地仕上げの

ろいろ磨きです。」と

仏具屋さんに説明を受けました。

何気なく、

とても立派な修理ぐらいにしか

思ってなかったのです。

 

ところが先週でしたか、

「菊山蝋色漆芸」という

会社が紹介されていました。

 

この時初めて「ろいろ」ということが

「蝋色」と書くのだということを

知りました。

 

東寺・御影堂の大壇は

修理の時に分かったのですが

江戸時代に制作されたもので、

何せ大きい!!

京都の職人さん宅は

個人住宅でこの大きな大壇が入る

その職人さん探しから

始まったそうです。

 

出来上がった「大壇」は

表面は鏡のようにピカピカ、

ちょとやそっとの、

仏具を落としたくらいでは

傷がつかないということです。

その頃は、週に一度は乾拭きで

磨き上げていくと

顔が映るくらいに輝いていました。

 

「手技神技」の記事では

その方法が丁寧に書いてあります。

粗目の「駿河炭」で、表面の

刷毛目やほこりを取り去る。

次に、チシャノキの炭で

これは、よりきめの細かい炭で、

最初の研ぎあとを消し、

この炭が「蝋色炭」といわれ、

ここから、この仕事をする方を

「蝋色師」というよです。

それから、古い真綿に漆を

染み込ませて拭きながら

余分な漆をふき取り、

ムロの中で乾燥させ、

さらに、

食用油と角粉(つのこ)を混ぜ、

角粉は鹿の角を蒸し焼きにした粉、

これでもって手の平や指で

強く押し当てて磨いていく。

この工程を三回ほど繰り返すと

漆の表面が光沢を出し

鏡のようになっていくということです。

 

この記事を読みながら、

小さいものならいざ知らず、

東寺の大壇のような大きなものを

よくぞあそこまで磨き上げられたと

驚くばかりです。

御影堂の大壇は約1m80cmほど

の大きさです。

これを手と指で磨いていく

注文を受けたはいいけど

気の遠くなるような作業

大変だったろうと思います。

 

弘法大師のお袈裟の箱は

「研ぎ出し蒔絵」

というような手法のようです。

これも同じように、

金銀を塗したものを

漆で塗り、それを研ぐように

絵を浮かび上がらせていく、

また、

「舎利輦」(しゃりれん)という

仏舎利を運ぶ輿があるのですが

その当時は紫檀が手に入らなくて

漆でもって紫檀の感じを出した

そういうものも残っているようです。

 

蝋色という技術、

指先の感覚だけで磨いていく

このような神技

是非ぜひ残していってほしいものです。

 

ここの菊山さん、

「後継者が出れば技を伝えたい」

それまでは自分が頑張らなくては

毎週、一輪車で20キロ走り

さらにマウンテンバイクで30キロ

日々体を鍛えておられるそうです。

御年69歳 

 

頭が下がります。  

 

 

 

 

 

 

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