「水仙や 寒き都の ここかしこ」
という蕪村の俳句にあるように
今いたるところで、
小さいながらも凛とした姿に
接することができます。
しかし原産は地中海、
シルクロードを通って
やって来たのでしょう。
中国では、
仙人は天にいるのを天仙、
地にいるのを地仙、
水にいるのを水仙と、
綺麗な花と良い香りが
まるで仙人のようだということで
この名前が付いたようです。
ちょうど、昨日から
「御七日御修法」という法要が
始まりました。
8日は御所から御衣が届き
これから21座、1週間の祈祷が
勤められます。
その時にお供えされる花が
梅の小枝と水仙です。
とてもシンプルです。
仏さまの花は時花(じけ)といって
その時々の花をお供えする。
ということのようです。
祈祷が勤められる
灌頂院の中は「壁白」(かべしろ)という
麻で出来た白い布で区切られ、
両界曼荼羅が掛けられ、
その前の大檀の四方にも
それぞれの仏さまの机の両脇
梅と水仙の花が供えられます。
お燈明の灯りに照らし出される
曼荼羅はとても立体的に見えて
平面的な絵が浮き上がって見える
際立って仏の存在を感じさせる
そのような曼荼羅の本来の姿が
拝めるのです。
水仙も英語ではNarcissus
ギリシャ神話に出てくる美少年
ナルシサスは泉に映る
自分の姿に見とれて
花になってしまったのが水仙
という話も伝わっています。
それで、花はやや下を見るように
咲いている、ということのようです。
地中海で生まれた水仙が
シルクロードを通り、
平安時代には日本に伝わった
何も特別な花でなく、
時期になると道端や土手に
雑草のごとく生え出てくる
そのような花ですが、
天皇陛下の御衣を祈願する
お勤めにも使われる
なんともその飾らない清楚な姿が
美しいのでしょう。
1週間で21座というのですが、
開白と結願は1座になりますので
これから、運座(うんざ)・加座(かざ)
といって一日4座のお勤めになります。
これからが大変と思いますが、
水仙のように清楚な心と姿でご精進を
念じています。