本蔵院 律良日記

熊本県にあるお寺“真言宗 本蔵院 律良のブログ”日々感じるままに活動のご報告や独り言などを書いた日記を公開しています。

出家と家出 乞食と乞食

2014-04-19 21:40:33 | 住職の活動日記

 出家 ( しゅっけ )

 家出 ( いえで )

 乞食 ( こつじき )

 乞食 ( こじき )

似たような字ですが ( 同じ字ですが )

発音によっては意味全く違ったものになります。

 

 普通、家庭が面白くなくなって

家を出ることを 「 家出 」 といいます。

 ところが、お釈迦さまも一見、

同じようなんですが、 …

お釈迦さまは一国のプリンスで、

普通の人からしてみれば憧れの存在だったのです。

地位もお金もプリンセスもそして子供までいて

なに不自由ない生活でした。

けど、それらをすべて捨てて、

一介の乞食 ( こつじき ) となって、

人間としての本当の要求を求められた。

 

 働かない、ということでは

乞食 ( こじき ) も 乞食 ( こつじき ) も

変わりません。

 あるとき、お釈迦さまが托鉢に出ておられた時のことです。

お百姓さんに食を乞われると、

 「 ただ人からもらうだけではなく、

   あんたも働いて稼いだらどうか 」

と、お百姓さんが言って返すのです。

すると、お釈迦さまは

 「 私は心の畑を耕している 」

という、話が残っています。

 

 何気なく生きていますが、

心のどこかには、

 「 これでいいのか ? 」

という、何か本当のことを知りたい

という、願いを抱えているものです。

そのうち、そのうち

といっている間に、時間出来たころには

頭の方も、物忘れもひどくなり、

根気も続かなくなり、

身体も次々と不調をきたし、

気がついたころには、

お迎えが  … ということにもなりかねません。

 

 お釈迦さまも、個人の問題にとどまらず

人類的課題を、

人間、何のために生まれて、という

その問題がどうしても解決しなければ

という、人類の課題を背負っていかれたのが

お釈迦さまの出家だと思います。

 

 以前に、三浦先生からお電話いただいたとき

「 大変、忙しくて、ばたばたとしています 」

と答えたら、

「 えらい ! のんきな話やね ! 」

と、痛烈な一言を頂いたことがあります。

普通は、忙しい、といえば、

それは大変で、でもよかったね !

といわれるのですが、

そこを見逃さなくて、

「 坊主として、第一番に考えなければ

 いけないのは、人生の目的だろう !

 忙しさにかまけて、自分自身を忘れるな ! 」

という、言葉が隠れているのです。

 

 同じ 「 食 」 を頂くのも、

人類の課題を一番に考えるため

働くことを二の次にしてください

というのが 「 乞食 」 ( こつじき )

ということなのです。

坊さんが頭を丸めるのも、

そういうことで、働かないから

一切の地位も権威も落とします

ということで、髷を落とし丸坊主したということです。

坊さんになることを落飾といいますね。

 

 昔のはなしで、

「 乞食 ( こじき ) は三日やったらやめられん 」

ということがって、

怠けだして、人からいただくことが当たり前になると

ほんとうの自分を見失うものです。

それを 「 乞食 」 ( こじき ) というのでしょう。

 

 だから、インドでは道を求める人 ( こつじき )

に対しては、差し上げた方がお礼を言うという

ということを聞いたことがあります。

 お経の中で、お釈迦さまは

供養は受けられるけれど、

有り難うとは言われないで、

「 黙然として、聴許す 」

と書いてあります。

供養を許すと、

だから、ありがとう、といってしまえば

「 乞食 」 ( こじき ) になってしまうのです。

 

 ということを知ってでしょうか、

日本のお坊さんのなかにも、

お礼を言わない、方がいらっしゃるようです

が、  …  

しかし、三浦先生は

「 ご本尊様に代わってお礼を言うのが

 住職の務めだ !! 」

とも言われてました。

 

 いずれにせよ、人間として、

生まれたことの意義、人生の意味、

人間としての本当の要求、

いのちの意味を考え続けなければ、

まずは、お坊さんとしての資格がないのでは

とも      思うのですが、

お坊さんになる動機も、それぞれあって

私を含め、結構、不純なものも持っていますので

ま~  …

なっている以上は

その動機を磨き純粋にしていく

努力を惜しんではならないと思います。

 

 

 

 

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