hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

有吉玉青『美しき一日の終り』を読む

2012年07月03日 | 読書2
有吉玉青著『美しき一日(いちじつ)の終り』2012年4月講談社発行、を読んだ。

父が家に連れてきた少年、秋雨(しゅうう)は、美妙(びみょう)の7才下の異母弟だった。愛人の子秋雨は、母から物置小屋で寝起きするなどの辛い扱いを受けたが、勉強はでき、自分の立場をわきまえて何ごとにもじれったいほど慎み深かった。姉への思慕を抱いたまま2度の結婚も失敗に終わる。やがて、起業した出版社もたたみ、病いを得る。

姉の美妙は、父の代で危なくなった食品会社も婿養子の夫が立て直し、生涯豊かな生活を送る。弟に対する思いを秘めつつも娘にも恵まれて幸せな家庭を築き、老いても美しい。

互いへの思いを心に秘めて55年。美妙が70歳、秋雨が63歳になった今、取り壊しの決まった生家で会い、ともに暮らした日々を語る。生涯のすべてを一日に込めて。

初出:「小説現代」2010年9月号・・・2011年11月号

有吉玉青(ありよし・たまお)
作家。1963年生まれ。作家、大阪芸術大学文芸学科教授。
早稲田大学卒業後、東京大学大学院在学中の1989年に、母との思い出を描いた『身がわりー母・有吉佐和子との日日』を上梓し、翌年、坪田譲治文学賞受賞。
多くの小説を書き、多彩な趣味も持ち、エッセイも幅広く執筆している。



私の評価としては、★★(二つ星:読めば)(最大は五つ星)

静かで古典的な小説だ。秘めた思いをときどき思い出すのではなく、何十年も引きずるなど考えにくい。純愛には障壁が必要だが、恋愛を妨げる壁は、今や近親か、難病しか無いのか。
お見合いなど晴れの日ごとに季節や思いを託した着物が選ばれ、その描写があるが、貧乏人の男の私には単なる贅沢にすぎないとしか思えない。
女4代の歴史として、日米安保、ベトナム戦争や、当時の風俗が出てくるが、50才足らずの著者には無理ないのだが、いかにも調べ物で、実感が伴ってない。若いころの歴史は哀しみを漂わせて語らねばならないのだが。


登場人物
藤村美妙 主人公、現在70才、足が少々悪い
隆哉 美妙の夫、婿養子、食品会社3代目社長
   幹治 美妙の父、食品会社2代目社長
   歌子 美妙の母、没落した旧家の出
   秋雨 美妙の異母弟、現在63才
沢登京香 美妙の娘
   恵介 京香の夫
   里桜 京香の娘、美妙の孫


コメント
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